とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

令嬢が男子寮へ男装し転入するもハプニング連続で早くも正体がバレる⁉︎
光逆榮
光逆榮

第161話 テンションの上がる部屋

公開日時: 2022年4月29日(金) 18:05
文字数:2,703

「ふ~何とか間に合った……」

「もう汗だくだよ……」

「何でこんな事に……」


 私とメイナとジェイミは、クレイス魔法学院の宿泊するホテルの大きな会場の入口で壁にもたれ掛かりつつ、ステージ上で話すマーガレットの話を聞いていた。

 会場内には今回学院対抗戦に出場する選手であろう生徒たちが集まっており、周囲にはバイキング形式の食事をこのまま行うのか豪華な食事が用意されていた。

 私はマーガレットの話そっちのけで、近くの机に用意された食事に目を奪われていた。

 わ~美味しそうな物ばかりだな~こんな食事久しぶりに見た。

 すると、背後から襟をメイナが掴んで来た。


「何してるのアリス。今は話を聞きなよ、目を付けられたら面倒でしょ。てか、いつの間に学院服から着替えたの?」

「え? あ~マリアと話す時にちょっと着替えようかなって思って……」

「で、学院服どうしたの?」


 迫って来るメイナに私は目線を逸らしながら答えた。


「マ、マリアに渡したかな~……」

「……ふ~ん。渡したね……」


 物凄く疑いの目でメイナは私の方を見ている感じがしたが、私は全くメイナの方を見ずにいるとそこにジェイミが話し掛けて来た。


「あんまり変に目立つなよ2人共」


 と、次の瞬間だった。


「そこの2人! 聞いてますの?」

「あ~あ……私は関係ないぞ」


 ジェイミは近付こうとしたが、そのまま後退し私とメイナから離れて行った。


「ちょっ、ジェイミ!」

「聞こえてますの? アリスさん、メイナさん」

「は、はい。聞いてますマーガレット先輩!」


 メイナは直ぐに姿勢を正し、大声で答えたが私はただじっと遠くから話し掛けて来たマーガレットの方を見ていた。

 するとメイナは肘で軽くつついて来た。


「ちょっと、アリス。何で黙ってるの? とりあえず答えなよ」

「……あっ、そうだね。すいません、マーガレット先輩!」

「はぁ~まぁいいですわ。皆さんも疲れていると思いますから、後は私が用意させてもらった食事をとって十分に英気を養ってくださいまし」


 そう言うと、マーガレットは話を終えて違う部屋へと向かって行った。

 その姿を見て私とメイナは安堵の息をついた。

 するとジェイミが、飲み物を持って戻って来た。


「お疲れさん。良かったね2人共」


 ジェイミの持ってきた飲み物を私とメイナが受取り、軽く飲んだ。


「本当。どうなるかと思ったけど、何事もなくて良かった。いつもなら、ちょっとしたお説教されるけど今日はどうしたのかね?」

「隣の部屋に、学院対抗戦に出場しない生徒たちもいてそっちにも話に行ったんだってさ。さすが、マーガレット先輩ね。ちょっと口うるさい所はあるけど、いい先輩だよ」


 マーガレット先輩か。

 本当に久しぶりに見たな。

 私はジェイミから貰った飲み物を飲みながら、クレイス魔法学院でのマーガレットの事を思い出していた。


 マーガレット・バレル、第3学年でクレイス魔法学院の顔と呼べる生徒である。

 赤い髪で内巻きと外巻きを交互に繰り返していく巻き方がされているのが特徴的で、ザ・お嬢様と言う雰囲気である。

 学院内では模範的な生徒であり、後輩にも甘いだけでなく厳しくも接するので、少し苦手な人はいるも尊敬できる人は多い。

 また一部からは、好きな男子が他の学院にいると言われているが、その真偽を知る人は少ないらしい。

 クレイス魔法学院に居た時は、そんなに直接関わる機会は少なかったが、話した機会はあったので全く面識がないと言う関係性ではない。

 そんな事を私は思い出しつつ、メイナやジェイミと共にマーガレットが用意した食事を食べながら、久しぶりに雑談をして決起集会は終了した。

 その後私たちは、各自用意されたホテルの部屋へと戻った。

 私は自分がどこの部屋だか分からなかったが、メイナの隣の部屋であったのでそのまま自室へと入り、大きくため息をついた。


「はぁ~何とかなった……メイナには疑われたりしたけど、何とかやり過ごしたし大丈夫だろう」


 そのまま私は部屋にあるベットに倒れる様にダイブした。


「明日は学院対抗戦か……たぶんマリアの事だし、クリスになってやり過ごしてくれているだろうな。と言う事は、明日また会場で会えるし、そこでまた入れ替われば問題ないな」


 私はそう考えてベットから起き上がり、部屋に何があるのか色んな所を見回した。

 そして綺麗なバスルームを見つけ、私はテンションが上がった。


「う~~ん最高~! とりあえず今日は、こんな最高な部屋で過ごせるからいいか~明日には全部解決するし、久しぶりにお嬢様を満喫しよ~と!」


 そのまま私は気軽に考えて、バスルームへと入り最高な気分でその日の夜を過ごした。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 次の日、私は部屋に迎えに来たメイナと共に朝食を食べてから、クレイス魔法学院の生徒として学院対抗戦の会場へと向かった。

 そして学院対抗戦の会場に到着すると、そこに大きなコロシアム状の会場があり周囲には数多くの出店が出店していた。


「お~ここが学院対抗戦の会場か。何か、大運動会の時の会場に少し似てるな~」

「大運動会? また変なこと言って、本当に昨日から変だけど大丈夫なの? 後、何か少し口調が男っぽくない?」

「いや~ちょっと昨日本を読んでその影響かな~……それにそこに出て来る場所の名前に似てたからつい……」

「それならいいけど。少しはちゃんとしてよね、アリスも出場選手なんだから」

「あ~そうね」


 そう昨日改めて知ったが、私はクレイス魔法学院内で学院対抗戦に出場する選手に選ばれていたらしい。

 まぁ、さすがに試合前にはマリアと会う時間くらいはあるだろうから、そこで入れ替われば問題ないよね。

 最悪私が出てもいいけど、何も知らない状態で出るより知っているマリアが出た方が疑いも掛けられないし、迷惑もかけないからその方がいいよね。

 その後私たちは会場へと入り、出場選手は一度控室へと案内され開会式が始まるまで、自由時間となった。


 よし、この時間でマリアを探して入れ替わるか。

 私は周囲の目を盗んで、控室から抜け出しマリアを探しに走り出した。

 とりあえず、マリアを探すなら客席の方だよね。

 私は王都メルト魔法学院では、出場選手じゃないしたぶんこの周辺の控室辺りにはいないから、いるなら上の客席か外の選手入口付近だよな。

 ひとまず私は今いる控室辺りから客席に行くには、一度外に出ないといけなかったので選手入口付近を見てから、そのまま客席へと探しに向かう事にした。


「一応入口付近には来たけど、マリアの姿はないな……やっぱり、客席かな?」


 私は少しキョロキョロと周囲を見た後、客席への入口へと向かおうとした時だった。


「あれ? アリス?」


 その呼び掛けに私は足を止め振り返ると、そこに居たのはトウマであった。

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