とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

令嬢が男子寮へ男装し転入するもハプニング連続で早くも正体がバレる⁉︎
光逆榮
光逆榮

第139話 ピースからの貰い物

公開日時: 2022年4月26日(火) 06:00
文字数:3,715

「ん? クリス?」

「ガウェン、どうして部屋に?」

「その質問おかしいだろ、ここは俺の部屋でもあるんだから当然だろ」

「それは分かってたんだけど、ガウェンの事だから鍛冶部屋にでもいるもんだとてっきり決め込んでて」


 その答えに、ガウェンは「なるほど」と納得した表情で答えた。


「それでアルジュは居る?」

「アルジュなら居ないぞ。今日は朝から出かけて行ったぞ」

「そっか……」

「何か用事でもあったのか?」

「まぁそうだけど。凄く重要って訳でもないから、大丈夫。ちなみに、どこ行くとか聞いてる?」

「そこまでは知らないが、外出する様な事は言っていたな」


 外出か、さすがにそこまで追って聞くようなことじゃないし、諦めようかな。

 その時私はふと、ガウェンにもあの事を聞いてみようと思い口に出した。


「そう言えばガウェンって、彼女とかいるの?」

「何だ急に?」

「いや、いるのかな~って」


 私の問いかけに少し呆れた様な表情をするガウェンであったが、その後「いないぞ」と答えてくれた。

 答えてくれたガウェンに私は、ありがとうと伝えると同時に、変な事を聞いて申し訳ないと謝るとガウェンは全く気にしてないのか「別にいいよ」と返してくれた。


「クリス、もしそう言う事が聞きたいなら別の奴を当たった方がいいぞ」

「別の奴?」

「フェルトとか、ヒビキ先輩とかだよ。あの人たちならそう言う事は、自分から話したがる感じがするだろ」


 少しガウェンの偏見もあったが、確かにガウェンの言う通りだと私は思った。

 そう言われて見ればそうだな、毎週外出しているフェルトとか、よく女の人といるヒビキ先輩に聞くのが早いか……でもな~……

 私は少し前の誘拐事件の一件があったので、少し話すのが厄介だなと思っていた。

 ヒビキに関しては、警戒されて近付くなとか門前払いされるんじゃないかと思い、フェルトについては偽者とあの時遭遇して以来、何だか話し掛けづらいと勝手に思い込んでいた為だ。

 私が少し考え込んでいると、ガウェンが「何かその人たちだと問題があるのか?」と問いかけて来た。


「いや、その~問題があるって言うか、思いつかなかったな~って」

「そうか」

「朝早くにごめんよ。貴重な意見をありがとう、ガウェン。これから行ってみるよ」


 そう言って私は205号室を後にした。

 私は廊下を歩きながら考え事をしていた。

 ヒビキ先輩の所はやっぱり難しい気がするな~断れる風景が目に浮かぶし。

 と言うか、私を見ただけで威嚇してきそうなイメージがあるんだよな、あの人。

 それにあの人には私が女性だと言う事がバレてるんだよな、忘れかけてたけど。

 ヒビキは私の事を面倒事を持ち込む奴だと言う認識にされていると思っており、これは勝手に思っている訳ではなくあの誘拐事件の帰りにヒビキ本人から、そう言う認定を受けていた為である。


 向こうがあえて避けている様な事を言って来てるのだから、私の方からわざわざ近付いてバレている秘密を誰かに漏らされるような事はしたくないからヒビキ先輩は除外だな。

 その為、今私はフェルトの部屋である206号室へと向かっていた。

 確か同室だったのは、ガイルだったよな。

 またさっき見たく訪ねた人じゃない人が出て来るって可能性もあるから、先走らない様にしないと。

 私は自分にそう言い聞かせて、206号室前に到着し扉をノックした。

 だが、部屋の中から何も反応がなかった。

 私は再度扉をノックするも、2度目も全く反応がなく首を傾げていると、そこに朝食帰りのピースが通りかかり声を掛けて来た。


「そこの2人なら、もう寮にはいないよ」

「え? あ、ピース。何か知ってるの?」


 ピースは私の問いかけに軽く頷き、朝食を食べている時にフェルトが出かけて行く所を見て、その後にガイルがヒビキと一緒に出かけて行く所を見たのだと教えてくれた。


「何か2人に用事だったの?」

「いや、フェルトちょっと聞きたい事があっただけだけど。いないなら仕方ないかな」

「それじゃ、そんあクリスに僕からプレゼントをあげよう」

「?」


 そう言ってピースはポケットから1枚のチケットを取り出して、私に差し出してきた。

 私はそれを受け取り、書かれていた内容を読んだ。


「期間限定シュークリームボックスプレゼント券?」

「うん。期限が今日までなんだけど、僕は今日別の店に行かないといけなくて使え切れない券なんだ。最悪無駄に捨てる所だったけど、良かったら使ってよクリス」


 シュークリームか、まだ食べた事なかったな。

 以前ピースからもおすすめされた店の物だし、ここはありがたく貰っておこうかな。


「ありがとう、ピース」

「うんうん。余り物みたいで申し訳ないけど、本当に美味しいから食べに行って元気だしてね」

「うん。ありがとうピース」


 そして私はそこでピースとは別れた。

 さてと、聞きたい事を聞ける人もいないしどうしたもんかな。

 私はそんな事を考えつつ、先程ピースに貰った券を見て気分展開に食べに行ってみようかなと思い、一度着替える為に部屋に戻った。

 部屋に戻るとシンは既におらず、私は男性用の私服に素早く着替えて鏡で身だしなみを整えてから部屋を出て外出権を購入する為、学院の購買部へと向かった。

 シュークリームか、ちょっと楽しみだな~

 私は少し浮かれた気持ちでニヤニヤしつつ、寮から学院までの道を歩いていると誰かに声を掛けられ、足を止める。


「おーい! クリス!」

「? あれは、ダンデ? と、隣にいるのはベックス!?」


 私は広い芝生の方で、まさかの組み合わせの2人に驚いていた。

 そして私は少しだけ2人の方へと近付き声を掛けた。


「どう言う組み合わせなんだよ?」

「そう言う反応になるよね」

「そうか?」


 ベックスは私の反応は予想通りと言うが、逆にダンデはそうとは思っていない事を口に出した。

 2人の服装は運動する様に動きやすい服装であった事から、何かをするのだろうとは思っていたが、そこにベックスが居るのが不思議で仕方なかった。

 いつも体調が悪そうにしているベックスが、体を鍛える様な事をしているダンデと一緒にいる事自体が予想外過ぎたからだ。

 あの感じだと、一緒に何かやる感じだよね? 大丈夫なのかな、ベックスは?

 私は少し不安視していると、そこに寮長であるダイモンがやって来て私は目を疑った。

 えっ!? ダイモン寮長!? な、何で?

 まさか過ぎる組み合わせの実現に、私は動揺していた。


「ん? あいつは確か、クリスって言ったか」

「そうです、ダイモン寮長。ちょうど通りかかったんで、声を掛けたんです」

「そうなのか。おーい、お前も混ざって行くか、特訓?」

「特訓? あ、いえ。俺は予定があるんで遠慮しておきます」


 私はすぐさまダイモンからの誘いを断ると、ダイモンは「そうか」と言ってダンデたちの方を向いて熱く何かを語り始めた。

 特訓ね……ベックス、大丈夫なのかな?


「彼が心配か?」

「っ! あっ、ワイズ副寮長」


 そこに突然私に声を掛けて来たのは、ワイズであった。

 ワイズは私が物凄く驚いた表情をしたいたのを見て「驚かせてすまい」と謝って来たので、私は大丈夫ですと返した。


「彼、いやベックスを特訓に誘ったのは我輩なんだよ」

「え、ワイズ副寮長がですか?」


 ワイズは頷き、ベックスの大運動会での活躍を話し出し彼の力はまだ不完全で、ベックス自身も使い方が分かっていないものであったがその力はダイモンと類似しているものだと語る。

 そこでワイズはベックス本人に、ダイモンと一緒に特訓をしないかと提案したそうだ。

 だが、ベックスは最初は断ったらしいがその後もワイズが誘い続けた結果、ベックスが折れて参加し始める事になったらしい。

 最初はついて行けなかった特訓であったが、途中からダンデも自主参加し始めて、ようやく体がダイモンの特訓に慣れて来ているとワイズは答えた。


「さすがにダイモンだけで特訓をやらせると、どこまでもやり続けるから我輩がそのブレーキ役をしているんだ」

「なるほど。そう言う訳だったんですね」

「あぁ。それよりも、どこか出かけるんじゃないのか?」

「そうでした。まさかの組み合わせで驚いてしまいまして」

「知っている人から見たらそうだろ。でも心配するな、無茶な事はさせない。足を止めさせて悪かったな」

「いえ。それでは俺はこれで失礼します」


 私はワイズに軽く礼をして、その場を後にした。

 そして学院へと到着し、廊下を歩き購買部へ向かっていると十字路で人にぶつかりそうになってしまう。

 相手も私とぶつかりそうになるも、避けてぶつかる事はなかった。

 その時私はポケットからピースから貰った券を落としてしまうが、私はその事には気付かなかった。


「すいません!」


 と私が直ぐに謝ると、相手も少しぼーとしていたと謝って来たのだった。


「いや、申し訳ない。ん?」


 すると相手が、私が落とした券を拾い上げる。

 それを見て私は初めて券を落とした事に気付く。


「あっ、それは俺の」

「これは、期間限定シュークリームボックスプレゼント券! これをどこで!?」

「え? えー!?」


 私はそう聞かれた事にも驚いたが、一番はぶつかりそうになった人でもあり、そう聞いて来た人物に驚いてしまった。

 その人物は、イルダ寮の副寮長であり目元を隠すように鷲の仮面が特徴的であるマルロスであったのだ。

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