「……で、何で俺たち大食堂に連れてこられたの?」
私たちは息を整えた後、私がピースに訊ねると「とりあえずこっち」とまだ私たちの手を掴んだまま引っ張って行った。
そして連れて行かれた先には、テーブルに座ったニックとフェルトの姿があった。
ニックは不満そうな顔をしており、フェルトは私たちを見て軽く手を上げて来た。
「やぁ、クリスにシンリ。君たちも巻き込まれたんだね」
「巻き込まれた?」
私が首を傾げると、ピースは私たちにとりあえず椅子に座る様に言って来たのでとりあえず椅子に座った。
「これで5人揃ったね。それで申し訳ないんだけど、皆のポイントと僕のポイント交換してくれない?」
「ポイント? 何で?」
シンリが当然の質問をするとピースは早口で説明して来て、直ぐに理解する事が出来ずにいるとフェルトが代わりに教えてくれた。
「ピースは今日限定の豪華5人前定食を食べたいんだよ。その為には、5人分のポイントが必須なんだってさ。ちなみにピースが5人分払うから、俺たちには5人いると言う証明でポイントが欲しいだとよ」
「なるほど。でも、それって不正とかじゃないのか?」
「さぁな。その辺の事は俺にも分からん」
そう言うってフェルトは、肩をすくめて答えた。
するとピースが前のめりに話し出した。
「その辺は大丈夫。5人分のポイントがあればいいんだってさ。ちょっとしたイベント的なもので、そこまで厳密には見ないらしい」
「それなりたってるのか?」
「そんな細かい所はいいんだよ。僕は、今日しか食べられない限定の定食を食べたいんだ。協力してくれた皆にも分けるし、ポイントも交換だから支払う事はないから安心してよ」
ピースはいつも以上に流ちょうに話す姿に、私は少し驚いていた。
やっぱり食べ物に関する事だと少し早口になるんだね、ピースは。
それだけ、それが好きって事なんだよね。
「皆、頼むよ! この通り、僕にポイント分けてくれないか?」
「たっく、そんな事ならわざわざ連れて来る必要ないだろ」
ニックはそっぽを向きながらそう言うと、ピースは少し反省した様子で「ごめん」と言った。
「僕はただポイントだけくれって言うのは嫌でさ、分けてくれるならそのお礼として一緒に食べて欲しかったんだよ、今日の限定定食を」
「……はぁ~全くお前は、食べ物に関する事だとすぐに突っ走る癖、少しは改善しろよ」
そう言った直後、ピースへニックからポイントが分けられた。
「ニック! ありがとう! うん、僕頑張って改善していくよ!」
ピースの眩しい程の笑顔に、ニックは一度だけ視線を向けるがそのまま直ぐに視線を外した。
「急に連れてこられた時は驚いたけど、そう言う事なら別に俺はいいよ。とりあえず、次からは事前に話してくれると嬉しいよ」
その後に、私もピースへポイントを送った。
「僕もクリスの意見と同じ。次からは急に引っ張ってどこかに連れて行かないでくれよ。途中で転びそうになって怖かったんだからな」
シンリもそう言いながらピースへとポイントを送った。
「クリス、シンリ、ありがとう! それとさっきはごめんよ。2人の事を考えてなかったよ。次からは気を付けるよ」
ピースの言葉にシンリは「そうしてくれ」と返した。
私も「頼むよ」とピースに返した。
私たちの言葉にピースは頷いて返事をした。
「おいおい、俺を忘れないでくれよピース。まぁ、俺はニックに捕まったんだけどね」
おちゃらけた様に話すフェルトに、隣に座っていたニックがフェルトの足元を軽く蹴る。
その瞬間、フェルトが「いたっ」と言ってニックの方を見た。
「いらない事言わなくていいんだよ」
「怒られちゃった。あ~別に嫌って訳じゃないから、そこは勘違いしないでよピース」
そう言ってフェルトは、ピースにポイントを送った。
「ありがとう、フェルト!」
「いいって、いいって」
「それじゃ、皆には僕から貰った分のポイントを返すね」
その直後、ピースから私たちへと渡した分のポイントが帰って来た。
「それよりピース、行かなくていいのかい? 早く行かないと無くなったりしないのかい?」
「大丈夫。もう後は僕が死ぬ気でもぎ取って来るから。皆はここで待ってて!」
フェルトの問いかけにピースは物凄い気迫で向かって行った。
それをフェルトは手を振って「気を付けてな~」と言って見送った。
「いや~にしてもピースに急に掴まれて、走り出された時は驚いたよ」
「確かにな。あれは俺も驚いたよ」
「何、2人はそんな感じで連れてこられたんだ」
「そうなんだよ。帰ろうとした時に、急に目の前にピースが立ち塞がって来て、ちょっと怖かったんだよ」
シンリの話をフェルトは笑いながら聞いていた。
「で、何でニックはあんな不機嫌なの?」
「あ~それな。ニックはな、ピースに急に背後から捕まえられて担がれて来たんだよ。しかも、それをかなりの大勢に見られたんだよ。想像するだけで、ちょっと面白いだろ?」
「フェルト、その話をするんじゃねぇ!」
「いいじゃないかよ。もう、皆に見られたんだし、そんなに恥ずかしがることじゃねぇよ」
「恥ずかしいわけないだろうが! あんな姿、みっともないしピースは話を聞かないしで、散々な目に遭ってんだよ」
ニックはそう言って再びそっぽを向いた。
その態度にフェルトは軽くため息をついて、首を横に振った。
まぁ、その気持ちは分からなくないかな。
もし自分だったらと思うと、恥ずかしくてこの場にいれないな……もしかしたら、ニックもそうなのかな? それを隠すために不機嫌な態度とって周りからの目をけん制してるのかも。
そんな事を思いながら私はニックを見ていると、ニックが私の視線に気付きこちらを見て来た。
「何だよ、そんなにじっと見て来て。何か言いたい事でもあるのか?」
「あ、いや~何て言うか、その態度は照れ隠し的な事なのかな~って思って。ほら、周りから笑われない様にとか、自分が恥ずかしがってないよ~って言うアピール的な……」
「なっ! ち、ちげぇよ! んなわけ、あるか! 変な事言うなクリス!」
その時ニックの耳は真っ赤になっていた。
そのままニックは思いっきり私から視線を外してそっぽを向いた。
すると、フェルトから何故かよくやった的なハンドサインを送られた。
その後私たちは、ピースが帰って来るまで軽く雑談をしていると、とある話題になった。
「なぁ、2人は卒業したらやりたい事とか決まってたりするのか?」
フェルトの突然の問いかけに、私は固まってしまった。
「卒業してからか~そうだな、僕は情報収集を活かした職をやりたいかな」
「へぇ~例えばどんなのだ?」
「例えば? う~ん、そこまで決まってないし、まだ全然分からないよ。明確には決まってないんだよね。でも、自分の事は分かっているつもりだから、長所を活かした職に就きたいかなって感じ」
シンリの迷いのない返しに、フェルトは「なるほどね~」と返すと、ニックの方を向いて同じ質問をした。
するとニックは直ぐには答えなかったが、フェルトがしつこく同じ質問を言って来るので、ニックは諦めてため息を小さくついてから答えた。
「俺は、王国軍に入ろうと思ってる。それか魔法とかの研究者だ。色んな事に触れられるし、身に付けた力も活かせそうだからな」
「ニックが王国軍とは意外だったな」
「そう言うお前は、どうするんだよ」
「ん? 俺か? 俺はニックと同じで、王国軍に入るぞ」
「……えっ!?」
その答えに、今日一番の疑問の声が私たちから出た。
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