俺を勇者にしてください

勇者になれると思って異世界に行ったら勘違いだった
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第五話 『なんで?」

公開日時: 2020年11月21日(土) 22:34
更新日時: 2020年11月25日(水) 20:20
文字数:1,384

「弘和。実はの、ここに来ただけでは勇者にはならんのじゃ」


 雷に打たれたかのような衝撃が弘和を襲う。「そんなまさか」そう言うことしかできない。ここに来れば勇者になれるものとばかり思っていたのだから。

「じゃあどうすればいい?」


 なにか、何かあるはずだと、弘和心の中でおもいながら必死に願ゲインに問いかける。


 ゲインの話しによると。まず、ゲインが管理する世界、レジェンドラへと行けとのこと。そしてそこで、適性判断のようなモノを受け、勇者に相応しいかどうかるらしい、のだが。


「まあ正直、今ここで視れんこともないがの」などと、言葉と雰囲気のギャップがありすぎてどうも調子が狂う。しかし、当然というか、当たり前というか「是非!今視てくれ」と即答してくるあたり、弘和の脳筋ぶりに拍車がかかってきているきがする。

 じんはハア、と溜息つきつつ「やめろ、カズ」と言って弘和を止める。「何故だ?」というような顔で神を睨みつけてくる。


 弘和にしてみれば、納得できる物ではない。どうして目の前に張本人がいるのに視られない。などと、神に文句を言っている。

 じんからすれば、かみであるゲインにこれ以上手を貸していただくわけにはいかない。レジェンドラへの案内役は自分がすると、名乗り出たのだ。

「カズ、お前も少しは自分で行動しろ。勇者になろうって人間が、そんな事でどうする」


 確かに、これから勇者になろうというのに、未だ冒険のひとつもしていない。ならせめて勇者への道のりを自分の足で征くのも悪くはないと、弘和は頭の中で考えを整理する。そして、弘和の中で何かが決まったのか「よし」と声を上げて神によろしく頼む、と手を出してきた。


「なんだよ、その手は」


 スッと差し出された手に戸惑うが、答えはかんたんだった。

「何言ってんだ、握手に決まっているだろう。これから仲間になるんだからな。当然だろ」


「あ、ああ」と、深読みしすぎた自分がバカらしくなったのか、なんとか平然を装い握手を交わす。

「それで、どうやってそのレジェンドラに行くんだ?」


 異世界へ行くのだから普通なはずがない。思いもしないような方法があるに違いないと、弘和は期待で胸がいっぱいだった。のだが。

 弘和の背後から「ガチャッ」と音が聞こえ振り返ると、先程自分たちが入ってきたドアが開いている。ドアの向こうには見たこともない光景が広がっていた。


「さあ、行くぞカズ。」そう弘和へ神が促してきた。

「そうじゃない、そうじゃないんだよ。タツ!」


 血の涙を流しそうなほど弘和が猛抗議をしてくる。弘和にとっては、当たり前にはなるが人生初異世界なのだ。誰であれ、移動の手段ともなればそれは妄想が膨らむというものだろう。

 ある時は瞬間移動、またある時は飛行生物に乗る。等々などなど、それはもう興奮しないわけがないのだ。


 だというのに、移動方法が、ドア?ドア!?ここは異世界だろう。だったらアイデンティティを大切にしろと、これではどこ○もドアではないか。

 じんに対して、というか異世界人に対して、容赦なく自分の異世界とはこうあるべき、といった持論を延々と話す弘和。この話だけで1時間は経過していた。ゲインも疲れたのか、「はよ、行かんか」と言って手をパンと叩くと、突然弘和と神の姿が消えた。


「やれやれ、全く騒がしい奴だわい。しかし、本当に視なくても良かったんじゃろうか。神も苦労が絶えんのう」

「ま、がんばるんじゃぞ」

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