「タツ、おーい。何処だ?タツ」
弘和は、一緒に来ていたであろう神を探して彷徨っていた。あたり一面が全て白。どこまでも続く地平線。そのような場所には心当たりがある。
「まさか、ここが○神と○の部屋!?」
「んなわけあるか!」
まさかの即ツッコミに思わず振り返る。するとそこには、今まで姿すら見えなかった神の姿があった。
「タツ、探したんだぞ、今まで何処にいたんだ?」
「カズ、少しは考えろ。なにが、○神と○の部屋だよ。例の建物もなけりゃ、重力だって普通だろうが」
自分が突然知らない場所に来て、意味もなく彷徨ううちに的確な判断ができず、訳の分からない事を言っていた事に気付く。
「じょ、冗談だよ、冗談。ちょっとふざけただけじゃねえか」
「いや、さっきのはマジだったろ」
顔が赤くなり、必死に照れ隠しをしてはみたが、まったく意味がなかった。それにしても、神はこんな場所で何故こうも落ち着いていられるだろう。弘和のように気が動転してもおかしくはないこの状況に。
「タツ、どうしたんだ?何でそんなに冷静でいられるんだ?まさか、ここが・・・」
いつもの神であれば、弘和と同じような反応をしてもおかしくはない。しかし、今の神にそんな感情は一切ない。それどころか、神にはここが何処なのかを知っているような気さえする。
弘和は、そんな神に何を聞いていいのか考えているたすると、「ついて来い、絶対に俺から離れるなよ」とだけ言って弘和の前を歩き出した。
まるで行き先を知っているかのように。
「お、おいタツ。待ってくれよ」
神の跡を追うように後ろをついていく弘和。しかし、さっぱりわからない。どうして神がここの案内をしているのか?周りは白一面なのに、さらには、何処を歩いたらいいのかもわからない状況の中で、神は迷う事も躊躇うこともせずに歩いている。
まるで神には目的地の場所がわかっていのではないか、というきさえする。
あれからどれくらい歩いただろう、1時間以上は歩いているだろう。体力に自信がある弘和だが、さすが疲れてきた。「少し、休もう」と神に問いかけようとした時、ようやく神が「ここだ」と言って足を止めた。
「やっと着いた。で、何処だって?なんにもないじゃないか」
確かに、神が足を止めたその場所の周りには何もない。相変わらず白一色の空間があるだけ。しびれを切らしたのか、弘和は神を問い詰める。
「タツ、どういうことだ?お前が着いてこいと言うから着いてきたのに、結局なにもないじゃねえか!」
弘和の気持ちはわからないわけではない。だが、神が何の意味もなく、こんな所に連れてくるとは到底思えない。そう思わなければやっていられない。
「ここで間違いない、ちゃんとよく見ろ。ここだよ、コ・コ」
「んーー、あ!ドア、ノブ?」神が指を差した先を目を凝らして見る弘和。すると、そこには確かにドアノブがあった。何故ドアノブまで白なのか?と問いただしたい気持ちを抑えつつ、ドアノブの周りを注意深く観察する。
ドアノブがある、ということは、当然のようドアがある。「ドアも白かよ!」抑えきれずにツッコミを入れてしまう。後ろで神がフッと笑う声が聞こえた。本日二度目の赤面である。照れ隠しに咳払いを2〜3回すると「開けていいのか?」と神に問いかける。「ああ」と神は答えた。
「この先にお前の知りたがっていた『答え』があるさ」そう意味あり気に神は言った。
「じゃあ、行ってくる」意を決してドアノブを握る。手に汗が滲む。無理もない、ここまで一切の説明もないままこんな所に連れてこられたのだから。このドアの向こうには何が待っているのか。神の言っていた『答え』とは一体なんなのか。
そんな思いを胸に弘和は・・・・。
・・・・弘和はドアを少し開け、恐る恐る中を確認する。さっきまでの勢いは何処に行ったのか。神は溜息をつき、そう思う。確認したが、中は光に包まれていて何も見えない。
「何も見えねえじゃないか!何が『答え』があるだよ」と、神に文句を言ってくる。あれだけ勿体ぶって煽られた挙句に何もないでは、文句も言いたくなる。
ぎゃあぎゃあとうるさい弘和に嫌気がさしたのか、「いいから、さっさと入れ!」と、人が蹴り入れた。どこか既視感を感じてしまう弘和。
入った瞬間に光は消え、昔ながらの日本のお茶の間とも思える場所で、真ん中にはちゃぶ台と、1人の老人がお茶を飲んでいた。「ほっ?」と、軽く驚いているようだった。突然の事にどしたものかと、反応に困っている弘和に、目の前の老人が「よう来たの」と話しかけてきた。
弘和は余計に混乱していた。それもそうだ。突然会ったこともないじいさんに「よく来た」と言われても、なんのことかさっぱりだ。結局「はあ、どうも」としか言えない状態である。
「ん?おぬし、わしが誰かわかっておらんのか?」と尋ねられ、「は、はい」と答えた。老人は額に手を置き、深い溜息をつく。
そして、何もないはずの方を向き、「これ、タツミチ。まさか、なんの説明もなしにここまで連れてきたのか?」と少し語気を強めに話しかける。
「じいさん、何言ってんだ?そこには何も・・・」そう言いかけた弘和は、その光景に言葉を失う。なんとそこには、さっきまで一緒にいた神の姿があった。神は申し訳なさそうにしながら「まさかあんなにあっさりと入ってくるとは思いませんよ」と答えた。弘和のときとは違ったら態度を見せる。
「もうメンドかったんで、ここで全部説明してもらおうかなと思って、連れてきました」
あまり悪びれる素振りを見せず、神はそう答えた。さすがに弘和も「いや、メンドかったって」と呆れている。ここで、「いるだろ!説明!」と怒り出す弘和。
「普通、いきなりあんなと連れてくか?しかも、自宅のドアから!ていうか、お前あの時、ちょっといなくなったよな?そうだよな?」
「いやあ、それは。お前の反応が面白くて、つい、な。アハハ」
「アハハ、じゃねえよ、俺がどんだけ〆♂♭○×♯」
ここで、今まで弘和が貯めていたストレスが一気に溢れ出した。
老人も「もう意味がわからんのう」と言い、困り顔。そして、「しょうがないのう、わしが説明してやるわい」と言って。弘和に茶を勧める。すると、あれだけ激怒していた弘和がたちまち落ち着きを取り戻し、座った。
神も、「スゲエ」の一言。「本来はお前の役目なんじゃがなあ」と小言を言われていた。そして「さて、どこから話そうかのう」髭に手を置き、老人は考え始めた。
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