チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね
北きつね

第四話 転移

公開日時: 2020年9月1日(火) 07:00
文字数:3,233


「マ、マ、マスター」


「マママスターって、俺は、ロルフのママじゃないぞ?」


「わかっています!そんなことを行っているのではありません!」


「わかっているよ。それで、この魔核は魔力に還元できるのか?」


「マスター。それは、どこから?」


「ん?マジックポーチからだけど?」


「だから!そういうことを言っているのでは無いのは、わかっていますよね?わかっていて、からかっているのですよね?マスターは鬼畜ですか?そうですか?鬼畜なのですね」


「悪かったよ。ロルフ。そんなにいじけないで、実際、どうやって入手したのかわからない。渡されたマジックポーチに入っていただけだからな」


「ふぅ・・・。それで、そのマジックポートは誰から?」


「父さんになるのかな?母さんかもしれないけど、俺とマヤの両親だと言えばいいのかな?」


多分、父さんだろうとは思っている、あんな手紙を残すのは、父さんくらいだろう。


「そうですか・・・。その魔核は、神殿の為に作られた物だと思います」


「え?」


「10年ほど前に、神殿の外層部で怪我をした女の子に適合して、マヤ様は女の子を助けることにしました。そのさいに転移ミスが発生してしまいました。そのときに一緒に転移してしまった魔晶石です」


「・・・?魔晶石?魔核ではないのか?」


「明確な違いがあるわけでは有りませんが、大きさや純度から、魔晶石で間違いはありません」


「そうなのか?それで、使えるのか?」


「施設の魔力には使えますが、マヤ様への充填には不適合です」


「そうか・・・。全部、ロルフに渡すから好きにしてくれ」


マジックポーチの中から、魔核を取り出そうとしたら、ロルフ猫型精霊に止められた。

ロルフ猫型精霊が貰っても吸収させられないらしい。


「どうしたらいい?」


「先程のパネルに吸収させてください。それで、魔力として還元されます」


「わかった」


パネルのある場所まで戻った。

パネルの表示方法を変えたほうが良いと言われて、ロルフ猫型精霊に言われたとおりに操作をおこなった。


パネルに、所有者と管理者以外からのアクセスを禁止する。表示を、神殿全体の操作を可能にするメニュー機能に変更する。

上部には、施設の魔力が表示される。充填の完了予定時間が表示されているが、考えるのも面倒な位の数字になっている。12桁以上の数字なので、考えるのを放棄した。

全体の地図が表示されているのが嬉しい。

施設の増改築ができるようになっているようだ。階層を作ったりもできる。


魔物が出ないダンジョンのような感じだな。

以前の管理者が何を目的にした施設なのか、想像ができた。宿泊施設を兼ねた神殿になっている。


パネルの使い方は、それほど難しくない。マヤが復活してから、二人で考えればいいだろう。


まずは、魔核を吸収させる。取り出した魔核をパネルに押し当てる。ゆっくりと魔核がパネルに吸い込まれていく。


「お?」


「マスター。魔力の充填が6%になりました」


「1個で5%程度か・・・」


多いのか、少ないのかわからないけど、人を殺すよりはいいのだろう。

次々に魔核を吸収させる。


「マスター!待って!」


「え?」


遅かった。

コボルトの魔核がパネルに吸収されてしまった。


「・・・」「・・・」


”魔核に準じた生物の召喚が可能になりました”


「え?」


ロルフ猫型精霊がびっくりしたような声をあげる。


「ん?ロルフは知らなかったのか?」


「はい。魔物の名前が付いた魔核は、吸収出来ないと教えられていました」


「出来たぞ?でも、魔力には還元しなかった」


実際に、魔力の充填率を見ると、86%のままで変わっていない。もしかしたら、端数が変わっているのかもしれないが、パネルの表示は変わっていない。


「そうですね」


「ロルフ。召喚とか言われたけど、どうしたらいい?」


「え?」


「今、”魔核に準じた生物の召喚が可能になりました”とか聞こえたぞ?」


「何も聞こえませんでした」


「そうか・・・。検証は後だな。ひとまず、86%もあれば、暫くは大丈夫だろう」


「はい」


パネルから手を離すと、先程の声が聞こえた。


”施設の活性化を再開します”


パネルには、施設の活性化に必要な時間が表示された。

カウントダウンが始まっている。1秒でカウントダウンしているようなので、表示されている数字が80万程度なので、9-10日間で活性化される。


「ロルフ。魔力が、100%を越えても問題はないのか?」


「問題はありません」


よし、あと10個ほど吸収させよう。

表示は、100%を越えても大丈夫だった。10個のつもりだったが、なんとなく吸収を続けて、165%まで増えている。1%ほど何かで消費したのだろうか?施設の活性化で、使われている可能性もある。これだけ大きな施設なのだから、活性化すれば魔力も消費されてしまうのだろう。

もう少し吸収させておく、活性化されても次に来た時に、また足りなくなっていて、同じように活性化の時間を待つのも無駄に思える。


活性化に魔力が使われるのがわかったので、追加で100%分の魔核を吸収させる。

ゴミのような物も、魔力の足しになると言われたので、二人が寝かされていた場所に移動した。魔法陣が表示されているので、そこに、マジックポーチ内にある必要がないと思われる物を出す。ロルフ猫型精霊が処理をしてくれる。


「さて、地上に戻ろう」


「本当に?行き先が不明の転移門を使うのですか?」


「あぁ神殿ここに居ても、餓死する未来しか見えない」


 なぜか、ロルフ猫型精霊が残念そうな顔をする。


「わかった。1日だけ、1日だけ、ここ神殿で過ごそう。ロルフ。どこかで休める場所はあるのか?」


「!!あります!!マスター!」


嬉しそうに尻尾を振って案内するロルフ猫型精霊の後ろをついていく。尻尾が可愛く揺れている。歩いているのを見れば、普通に猫だな。

案内されたのは、こじんまりした部屋だが、綺麗に掃除がされている。ベッドが一つ用意されているだけの部屋だ。


「ロルフ。ここは?」


「はい、いつマヤ様が戻られてもいいように用意されている部屋です」


「掃除もされているようだが?」


「はい。誰も入っていない時には、時間が停止していますマジックポーチと同じ原理だとお考え下さい」


「わかった」


食事はないが寝られる場所があるだけでもありがたい。


ロルフ猫型精霊は、枕元で丸くなって眠るようだ。”精霊なのに寝るのか”と思ったが、聞いてもしょうがないと思ったので、聞かなかった。


翌朝、寝床を綺麗にしてから、パネルを見る。魔力の消費は10%ほどなので、施設の活性に必要な魔力には問題はないだろう。


「ロルフ。転移門は?」


「本当に使うのですか?」


「あぁそれに、同じ転移門なら戻ってこられるのだろう?」


「はい。問題はありません。一度、使えば魔力が登録されます。登録者と一緒でなければ、来られません。転移門が発動しません」


「それなら問題はないな。ロルフ。行くぞ」


「はい。どこに出るのかわかりませんよ?」


「何度も聞いたが、他に手段がない」


「そうですね。マスター。こっちです」


パネルの部屋に続く通路の途中にある扉を開けて中に入る。


「マスター。扉に魔力を流してください。それで開くはずです」


「わかった」


扉に手を置いて、魔力を流す。

扉がゆっくりと開く。


門とはよく言ったものだ。”門”だけが部屋の中央に置かれている。


「ロルフ。転移門は、他にもあるのか?」


「はい。しかし、この門以外は使えない状況です」


「なぜ、使えないと解る?」


「扉が空きませんでした」


「・・・。そうか、この門だけ残った理由は、わからないよな?」


「はい。不明です」


「それは、後で調べればいいな。それで、使い方は?」


「門の前まで進んで下さい。今なら、施設の魔力がありますので、何もしなくても起動するはずです」


「わかった」


門の前まで進むと、足元に魔法陣が現れる。暫く待っていると、門が光り始める。


「マスター。準備が出来たようです。門の先と繋がりました」


繋がったという言葉から、門の先が見えるかと思ったが、見えなかった。


「いくぞ!」


「はい」


ロルフ猫型精霊は、俺の肩に飛び乗った。そのまま、転移門に足を踏み入れた。


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