「倉元家」は今日も異世界で

~リビングデッドから始まる、平凡一家のリスタート~
しげし
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第16話 仕事はロマンで選べ

公開日時: 2020年9月9日(水) 02:08
文字数:7,391

ギルド。

というものがある。

本来職業別にある組合のようなものだが、この世界においては『冒険者』なる職が集う集会場を指す。


各国、各町に存在しかつては賑わっていたものだが、戦争に次ぐ戦争でその数は激減。冒険者になって世界を旅する、といった夢見る若者も減り、冒険者で名をはせた親さえも子を冒険者にしようとはしなくなった。


最もその原因となったのは魔王と魔女の出現。

突如として現れた勢力に、世界のあり方が大きく変わったのだ。


魔族とされる勢力は爆発的に拡大。

古の王達は『滅亡』を避けるべく、剣を置いて手を取り合った。かつては敵対していた亜人種間の同盟、加えて魔族とのある取引をもって、一方的な支配は免れている。


魔王、そして魔女の詳細な情報は依然として不明。

また複数体存在しているという話もあるが、確証ある情報は一部のみにぞ知られる事だ。


そんな時代の流れと世界の変化で、『冒険者』は活動域が激減。かつて探索した宝石眠る洞窟も、秘宝が沈む海底も、まだ見ぬ秘境探索さえも。常に危険がつきまとう冒険《アドベンチャー》に、更に魔族が追加されるとリスクしか生まれなくなった。


故に現在点在するギルド、もとい冒険者は血の気が多い。他にやる事もない、スリルを求めて、等といったやや難のありそうなクセ者が集う場に。

残ったと言うべきか、とり残されたと言うべきか。

 

今や『冒険者』は絶滅職《ロストジョブ》。

近い将来ギルドという存在も無くなるかもしれない。


「ギル……ド受……付か。よしよし。割りと字も読めてきたな」


そんな中、時代に逆らう若者一人。

覚えたての『カラ文字』を無駄にせず、早速広場の求人ボードを読み漁る。 

父親のせいで冒険者になれない手前、なかなか率先して手が伸びる職に出会えなかったのだが。


そこで目に入ったのが、このやや年期の入った古めの羊皮紙。

他の募集と違って何年もここに貼ってある、というより剥がすのを忘れられたような感じだ。この世界の住人ならまず目もくれないであろうA4サイズ程のボロ求人。

 

「ん? ここから近いじゃんか。給料も悪くないし」


地図に載っているのは広場から歩いても5分圏内。

そもそも広場はこの町の中心部に位置しているので、ギルドの立地条件はすこぶる良さそうだ。


「なんか良いのあった? うぇっ……なんかボロボロねその紙……ギル……ド?」


勿論結衣も一緒に職探し。

異世界生活も、もう2ヶ月になると結衣も文字は読めるようになってきた。人間案外適応力は高いようで、成績そこそこな武でも文字の理解は割りと早かったと思う。

他にやることがなかったといえばそれまでだけども。


「どーせどの職も馴染みないのばっかだし、何でもいいから見学行ってみよーぜ?」


「そりゃまぁそうだけど……もっと綺麗な奴あるのに何でそれな訳?」


結衣的には働くのが嫌という訳ではなく、武が引き寄せられたその紙の状態に少なからずの不信感が。

誰がどう見たってまともそうではない。


それにただの一言で回答するならばと、武はペシッと羊皮紙を叩く。


「ロマン」


それに対して結衣は、男って……と頭を抱えて項垂れた。


「大体ギルドってあれでしょ? 大衆酒場みたいなとこでしょ? むさ苦しいのは嫌なんだけど。襲われたらどーすんのよ」


「襲われた時に考えよう」


「ロマンより安全性を重視しようか若造」


「つっても結衣のそれ多分厳しいぞ? 僧侶《プリースト》とか心清らかじゃないと無理だろ。誰かを癒す前に自分を癒すべきだな」


結衣が手にしていたのは、僧侶《プリースト》、巫女《みこ》類いの求人。ギルドとは正反対に位置しそうな職業だ。


「何言ってんの? 超清らかなんですけど。のど越し抜群なんですけど」


櫻と遊んでる時の顔は結構ヤバいと思うんだがな……。

清らかな人は、赤子にミルク飲ませるだけでハァハァ言わないし。ブッブが噛みつくのも、本能的な近づけちゃダメ感を察知してるかもしれんし。


「嘆き悲しい事に魔法が使えないからな俺ら。大体の専門職はお払い箱だからそこんとこ忘れんなよ?」


「だよねぇー……」


文字は読めても、魔法は相変わらず。

結衣がヒョイと指を回すも、ため息に勝るものは何もでない。


「てことはある程度やることは絞られちゃう訳だ。ギルドは受付募集みたいだし、場所が特殊なだけでそんな難しい事でもないっしょ」


「受付ねぇ……」


「これ以上自堕落に過ごせば俺達の将来はスライム以下だぞ? 櫻に服とか買いまくりたいんだろ?」

 

「そうだった!! うぅーん……まぁ見学くらいならいっか」


フッ。容易いわ。


と、意気込みレッツらギルド。

人生初職場にウキウキしつつ、歩みを進めた先に待っていたのは、一軒のオンボロ倉庫みたいな場所。

念入りに地図と見比べても間違いなくこの場所であり、右にも左にもそれらしき建物はない。


「ここ!?」


「求人紙に違《たが》わぬボロボロ具合だな……まさか潰れた後とは思わなかった」


「いやいや! 大いに予想できたでしょ!?」


まさに廃墟同然。

小石のひとつでもぶつければ倒壊してしまうかもしれない木造の建物。石造が主のこの町ではかなり珍しい建物だが、景観は見るも無残。これを見せられては木造が流行る筈もない。


植物は自由に生い茂り、壁はおろか屋根にさえ届く猛者もいる。高さからして二階建てのようではあるが、この様子だと内部もかなり悲惨な状態と思われる。幽霊《ゴースト》さえも嫌がりそうな佇まいに二人の顎は重力に逆らえず。

 

 「大昔からタイムスリップでもしてきたのかここ……この世界にしたって劣化がすぎるだろこれ」


「……でも日当たりよさそうよ?」


「そりゃまぁこんだけ穴だらけならな。洗濯物はよく乾くだろうよ」


無論雨なら室内は大惨事でしょうけど。

扉を開けずとも中の様子が、壊れた壁から伺える。

壊れた壁の穴を見ると懐かしの我が家を思い出したり。


そんなボロ屋敷に見とれていると、中からギシギシと足音が聞こえてきた。 どうやら誰かいるらしいが、こちらの話し声が聞こえてか、徐々にキシむ音が迫ってくる。

もしや社会のはみ出し者でも住み着いてるのか!?と思う間に、


ドォーーン!!


「「ギャアアアアアアア!!」」


潔く開けられた扉が惜しみ無く破壊されて、ホコリ舞う建物内からケホケホ言う人影が。  


「エッキシッ!!……んぁぁ、花粉か?」


「絶対ホコリでしょうに……」


クシャミを何回かした後、ズビッと鼻をすするなりそのままのっそりと近づいてきた。やや猫背で何というか覇気というか生気がない。


「……ホームレス?」 


「ここが家ならレスではないんじゃ?」


「それもそうか。よし帰ろう」


「そうね」


ここは働けるような場所ではなかった。二人して身を翻しその場を立ち去ろうとするが、がっしりと謎の人物に頭を掴まれる。


「ななななななな!?」


「ぬぉぉぉぉ……今朝詩織さんにセットして貰ったのにぃぃぃ」


二人の反応をひとしきり堪能すると、頭から離した指でパチンと音を……鳴らそうとして空ぶったのだが、あえて指摘しない大人な二人。


「「…………」」

 

「ん……採用」


「「!?」」


と、なったのが一時間程前の事。


はい。という訳で本日からヤマダの町でギルド受付のお手伝いをする事となりました。

驚く事なかれ全然稼働してましたよこのギルド。

しかも面接なしかつ建物入る前に採用ですよ。えぇ。

今は何してるかって? 受付ですよ。えぇ。

 

「暇だなここ……」


「暇ね……これって仕事なの?」


「仕事ってこんな過酷なの? 皆こんな耐える事やってんの?」


「あ、またスライム沸いてきた」


「「「すらぁ~」」」


予想通りというか、内部も錆び付き蜘蛛の巣は垂れ、屋根、床、壁は穴だらけ。室内なのに木やよく分からん植物が生え、最近見慣れてきたスライムがウロウロしている。


発生源を見たことはなかったが、どうやら地面から沸いてくるものらしい。来たときは二匹だったが今は四匹まで増えた。

赤、青、黄、黒。あと一匹増えればスライム戦隊が誕生できそうだ。


 「ううっ……寒い……」


 「暖炉っぽいのあるのに瓦礫に埋もれてっからな……柱でも引き抜いてくべてやろうか。燃料は腐るほどあるぞ」


あらゆる穴から吹き付ける風の音が何とも虚しい……。

天井仰げば、岩でも降ってきたのかと思わんばかりに穴だらけ。そこから差し込む明かりは不規則に室内を照らし、舞うホコリが悲しい事にキラキラ光って見える。 


「てかギルドってもっとガヤガヤした酒場みたいな感じじゃねぇの? 色んな物語が始まる所じゃねぇの? 想像してたギルドの斜め上すぎて未だに衝撃が隠せないんだけど」


「私も居酒屋みたいなの想像してた。なにこれ人よりスライムの方が多くない? 私を襲う不届き者とそれを助けるお金持ち爽やかイケメン勇者どこよ?」


「ヤメテ。俺の存在感薄めるイベント望まないで」


「水はこれ以上薄まらん。味のしない無色男は黙ってなさいよ」


「ひでぇな。しかし……どこもこんな感じなのかねぇ」


受付とは名ばかりの丸テーブルと、段ボールみたいなガタガタの木の椅子。そこに座るわ武と結衣の二人のみで、見える景色がさっきから全然変わりゃしない。せいぜい地面を這うスライムが右往左往するのを、目で追うくらいのものだ。


唯一あと一人は、壁に取り付けられたボロボロのベンチでスヤスヤ寝ている。どうやら定位置らしいのかリラックスもいいとこだ。


「今日はたまたま暇なんですぅー、とか言うレベルじゃないよなこれって。夢追う所かこんな所来たら夢終わっちまうぞ」


「多分ずっと暇だと思うねこれ。見てよ、私の椅子の脚三本しかない」


結衣が腰かけるのは普通の四脚椅子………の一本無いバージョン。

ちょっと気を抜いて後ろに体重をかけると、保持力皆無で転倒まっしぐらだ。背もたれは最初から無いのか、壊れて無いのかもう分からない。


「俺のなんか絶対何かの空き箱でしょこれ。座高と机の高さおかしいでしょこれ。向こうから見たらカウンターから出てる生首だよ俺」


「まぁそもそも誰に見られるんだよって話よね。アハハハハ……」


立地的には町の中心部に位置しているのに、興廃ぶりが半端ないのである。


すると、結衣の暇と言う発言に対して漸く眠り人がムクッと目を覚ました。そのままボサッと立てた短い青髪の寝癖を直すこともなく


「んんー……まぁ冒険者の絶対数が少ねぇからなぁ…ふぁぁ…」


と、見かけの綺麗さによらずぶっきらぼうな口調で答え、アクビをしながら目を擦って、また眠そうにウトウトし始めた。

これでもギルドマスターというやつだ。


てっきり年配者が鎮座してると思った武だが、予想外に若くしかも女性。服装はこの世界特有の民族衣装風で、とくにマスターらしい格好や風貌という訳でもない。下手すればただの自前の服の可能性さえある。


「絶対数? 冒険者ってあんまりいないんですか?」


「だな。数年後には全員の名前言えるくらいにはなっちゃうかもねぇ」


とは言うものの、特に寂しそうな様子も残念な様子もない。

それが当たり前、というほど冒険者の存在価値が下がり、定着しているらしい。


「だったらこれ人手いらなくないですか? 出費だけしかないですよこれ。雇ってもらってなんですけど人件費勿体ないでしょ」


座って暫く経つが、全然まったくこれっぽっちも人の出入りがないのだ。


 なんだこの仕事めっちゃ辛い。せめて手だけでも動かしたい。


「国家ギルドの決まりで受付に最低二人いるんだ、一度に二人来るとはラッキーだったわぁ」


再びアクビをすると、折角起こした体を再びベンチに寝かせる雇い主。今のところ寝てる時間の方が多い怠惰マスター。ずっと寝ているので、今のところ『アイリス』という名前くらいしか分かっていない。


「国家ギルド!……ってことは公務員みたいなもん?」


「もっと自由組合みたいなもんかと思ってたんだけどな」


「昔は自由だったんだけどねぇ。今や国の許可無しでは看板は掲げられないのよ。見えない首輪がガシッ……とね」


寝転がり目を瞑ったまま、右手で首を絞めるポーズをするアイリス。とはいえ、繋がれた首輪は緩みきっているのか、寝ながら言われるとあまり重要事でもなさそうに思える。


「まっ。身構えずに気楽にそこに座ってくれたらいいさ」


「その為には次回から座布団がいりそう……お尻痛いし……」


結衣は硬い上にチクチクする椅子の適切な座り方を色々模索している。結論的には立った方がマシと思ったらしく、腰を上げてストレッチを始めていた。


「ん? あぁすまない。これいるか?」


と、結衣の発言にこれはウッカリと言った感じで起き上がるマスター。何やらキョロキョロと辺りを見回している。


「あ、座布団あるんですか? ありがとうございます」


「んや。代理がある。ほいっ」


と言って結衣に手渡されたのは、鷲掴まれた赤いスライム。

 

「おっと思わぬ所でスライムの活用法が」


よく見ればアイリスの枕はスライムパープルが活用されている。実はちゃんと五匹いたらしく、これで立派なスライム戦隊だ。


「この世界何かとスライムねじ込んでくるな」


「すらぁ~?」


「この子をふむのは流石にちょっと………」


流石にお尻に敷くのは抵抗あったらしく、地面に放流する結衣。そのまま草の生えた所までプルプルいくと、ムシャムシャ食事を始めた。


「まぁ冬間近だと尻に敷くにはちょっと冷たいわな」


「あ、そこじゃないです」 


結衣の中で、ある程度の物は自分で用意しようと誓った瞬間だった。


「ところで俺ら入るまで誰が受付してたんです? 最低二人ってことはアイリスさんだけだと、あと一人足りないですよね?」


求人紙をみた感じかなり長いこと貼られていた筈。ということは入れ違いで誰かが辞めた、という訳ではなさそう。

今のところアイリスしか確認出来ていないが、他に従業員がいるのかもしれない。


と思って質問したのに返答は


「んー? スライム二匹で代役してた」


「またかっ!?」


人じゃない上にしかも二匹!!

つまりはこの人働いてぬわぁい!! 

もし依頼主来たらどう対処してたんだ……。


「あとこの暇さの割に結構報酬いいんですけど、なんで皆辞めるんです?」


~~~~急募~~~~


◆ギルド受付員募集 

採用人数(2名以上) 

※早い者順に即断採用します 志望理由とか要らないです 

お友達と一緒に可


◆作業内容

座るだけの簡単なお仕事です!!

受付業務 報酬譲渡 マスターのお世話等々 研修有

なんと慣れるまでギルドマスター自ら優しく教えちゃいます!!

さぁ一緒にギルドを盛り上げましょう!!今すぐに!!


◆報酬

日給 金貨二枚

日払い可 週払い可


◆就業時間 

お好きな時間帯 8時間+α

出勤日、お休み相談乗ります。


~~~~~~~~~~


とまぁ、それなりの給料は出るのです。

正直危ない臭いもしたが、他の壷売りの弟子とか、土竜の生態調査補佐(自己責任)、モンド教幹部募集など似たり寄ったりな怪しい仕事しか無かったので、中でもマシかつ聞き覚えのあるギルドをチョイス。


というのが武の中の大体の流れである。


「活気なさすぎて全員辞めてくんだよ。お前らの前の奴なんか楽して稼ぎてぇとか抜かすから雇ってやったのに『暇すぎる!!』って言って辞めていったからな」


「うわぁ……」


分からんでもないなその気持ち……

だって受付業務が全く機能していない。誰も来ないのだから。


というか客がくつろぐような椅子及び机さえ見あたらない。なんだここホントに室内か?


「座るだけの簡単なお仕事です……間違ってはないけど何か違う……」


悩める結衣も募集張り紙を何度も見つめ直している。

ギルドマスターが優しく教えちゃいます!とか書いちゃってるけども、この昼寝虫は全然教える気なし、仮に教えてもらっても役立つ仕事が皆無な気がするのである。

 盛り上げましょう!とか言われても無理ある話だ。


「この依頼受付って魔獣討伐とかのですよね?」


「……んあ? それはまぁ……色々だ。ほれっ」


「っとぉ? なんだ?」


大量に綴られた依頼書をアイリスからポンと投げ渡される。結構分厚いので仕事依頼が全くの皆無、という訳ではないらしい。


「へぇ……こーゆーのはギルドっぽいな」


「私にも見せて見せてー」


ペラペラと捲っていくと、『子守り』、『愛玩魔獣の散歩』、『要塞建設』等々。思ったより討伐系は少なめな印象だ。

もっと治安維持とかの活動が多いと思っていた武だが、どうやらそうではないらしい。


「ふぅん……意外と地味目が多いんですねぇ………ふむふむ」


「愛玩魔獣ってなんだろ? 犬みたいなのいるのかな?」


たまに外でモコモコした何かを散歩させてる人見かけるし、あんなのが愛玩魔獣というのだろうか? と二人は思いいたる。

ひとくくりに魔獣が『敵』という訳ではなさそうだ。


アイリスも気だるげに解説するが


「魔獣の討伐は最近は直接冒険者の方に依頼している事の方が多いな。こんなギルドなんか経由するより安く……こんなギルド……誰がこんなギルドだゴルァァァ!?」


「絶賛情緒不安定ですね!? 完全自爆ですよ今の!!?」


「それで人が来ないときは何してるんですか? 今まさにその状態なんですけど」


周囲を見渡した結衣がアイリスに質問すると、想像以上に簡潔に答えが返ってきた。


「ん? 寝てっけど」


「「…………」」


「ギルド興廃の原因完全にこの人でしょ!? だいぶ序盤で気がついてはいたけども!! 冒険者少ないはボロボロの理由にならん!!」


「せめて掃除とか、綺麗にすると多少印象も変わりますよ?」


負けじと結衣も動かぬアイリスをやる気にさせようとすると、案外素直に起き上がり、何ともボロボロな引き出しをガサゴソ言わせながらシワくちゃの依頼書を取りだしてきた。


「?」


「何してるんですか?」


「なるほどな。よし『ギルド掃除急募』っと……」


こいつめ。床か壁の穴塞ぐ材料にしてくれようか。

動かない為なら動くんだなこのダメマスターめ。


「いやいやいや!! アイリスさんのギルドでしょここ!? 自分でして愛情とか注ぐもんでしょ!!?」


「そうですよ! 私たち協力しますから皆で……」


「分かったよ……そのうちな。ふあぁぁ……」


「あかん。これはもうダメな奴だ」


せめて『明日からな』くらいなら引っ張りだしてでもやらせようと思った武だが、コレはテコでも魔法でも働きそうにない。


「えぇーい分かりましたよ!! これは意地でも働かせてくれようぞ!! 俺は理想の職場を作り上げてみせるからな!!」


「他の所に転職した方が楽な気がする………」


「むにゃ………むへへ」


武&結衣。

無事(?)就職決定!!


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