「お疲れ様でした!」
講堂の舞台袖に司が入ってきて、二人に声をかける。笑美が問う。
「どうやった?」
「いやいや、今回も最高でしたよ!」
「ほうか……それは良かった」
「ふむ……」
因島が座り込む。司が驚く。
「ど、どうかした?」
「……」
因島の体が小刻みで震えている。司が慌てる。
「ぐ、具合でも悪いの?」
「……でござる」
「え?」
俯いていた因島が顔を上げる。
「夢が叶ったでござる!」
「ゆ、夢⁉」
「そうでござる!」
「ど、どういう夢?」
「講堂でござるよ!」
「全然分からないよ!」
「『涼宮ハ〇ヒ』も『け〇おん』も講堂でライブを行っていたでござる!」
「あ、ああ……」
司が分かったような分からなかったような曖昧な返事をする。
「ウチら楽器弾いてへんけど」
笑美が笑う。
「こういうのは気分の問題でござる!」
「そうかい」
「そうでござる!」
「夢が叶ってよかったな」
「ありがとうでござる!」
因島が笑美に向かって頭を下げる。
「お礼を言う相手を間違えてるで……」
笑美は手を左右に振る。
「え?」
「お礼はそういうシーンを作ってくれた方々やろ?」
「あ、ああ……」
「つまり……」
「「京アニは神!」」
「ふふっ……」
「ははっ……」
笑美と因島が顔を見合わせて笑う。司がそれを見てムッとする。
「なんだか随分と楽しそうですね!」
「お、なんや、ヤキモチかいな~」
「ち、違いますよ!」
「お、怒んなや……」
「あ、すみません……」
司が慌てて頭を下げる。因島が首を傾げる。
「なにか、余計なことをしてしまったでござるか?」
「い、いや、因島くんは全然問題ないよ!」
「そ、そうでござるか……」
「でも……」
「うん?」
「因島くん稽古のときに言ってたじゃん……」
「え? なにか言っていたでござるか?」
「いや、高校生活の思い出としてコミケに参加したいから、その活動の為にセトワラの方にはあまり顔が出せなくなりそうだって……」
「ああ……そういえばそう言ってたでござるな……」
「あ、あの……?」
「色々と考えたのでござるが……」
「う、うん……」
「……今後もセトワラには積極的に顔を出したいと思っているでござる」
「え⁉ い、いいの?」
「拙者は今日の舞台で確信したでござる……」
「な、なにを?」
「こうして舞台に上がることによって、ライブやステージに上がる声優さんたちの気持ちが少し分かるようになったでござる」
「は、はあ……」
「これは今後のオタク活動……『オタ活』にきっと活きてくるでござる!」
「い、活きるかな~?」
司が小声で首を傾げる。
「ふふっ、まわりまわって笑顔が増える、結構なことやな」
笑美が笑いながら頷く。
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