怪獣は観測されていた。
いつか地球に落ち、未曾有の被害をもたらすと言われていた。
地球から月への距離と同じほどの距離、大きさは約50m、球体であり、翼が顔を隠すように覆っている。人知を超えた速さで現れたのか、何か観測できない理由があったのか、怪獣が現れてから報道されるまでの間は数日の時間を要した。
報道後、地球は夜でも明るくなった。
シェルターや地下施設の建造、報道、だが。
今日。スマートフォンやテレビの画面は一つだけの情報を流した。
落下。
ユーラシア大陸の上空1万mで静止。燃える体表を気にすることなく、ゆっくりと翼を広げた。
その先から、まるで太陽光を遮断する翼膜のようなものが伸びた。
その間に放たれたミサイルはあまり効果を成さない。体表を焦がすことはできても、すぐに体の組織が入れ替わってしまう。
地表を覆う外側、1万mの更に上空から核兵器を投下。
怪獣は翼膜を伸ばすのを止め、核兵器へ集中させた。するとどういうわけか重力に逆らい、指示に逆らい、地球の外へと飛んで行った。
「カルエコキ……ズジウツ……」
そんな鳴き声を発すると、地球は翼膜によって暗黒に包まれた。
太陽の光は消え、街灯の光を頼りに人々は空を見上げるが、何も見えない。
そうしている内にひどい眠気に襲われた。
「イコテッカカ……」
その鳴き声を最後に人々は眠りについた。
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