宮倉麻衣…東の京から来た中学三年生。
メインホールは三階まで吹き抜けになっていた。
周囲をぐるりと見下ろすように配された窓はなんと居住区域で、居住者から中は見えてもモールを訪れたお客からは見えない。
二階は居住区、三階はレストラン、四階〜十五階までのフロアは数多のショップが入り、最上階はオーナー区域でその下三階分もやはり居住区。
その下十六〜二十六階層には会社や病院、郵便局や出張銀行、一般オフィス。
三十階建て複合施設で屋上にはヘリポートまであり、一〜二階は外側が水族館になっており、内側がなんとプールになっていて、海で泳いでる気分が味わえる。
二階の居住区から直接利用でき、外側からは繋がって見えるが、実は内側ではしっかり区切られているそうで二階が居住者専用、ビジターは有料で一階部分だけ利用出来るようになってるそうだ。
因みにこの複合ビルには執事カフェ、巫女さんカフェなどのコンセプトカフェも充実しており、会社として上層階に入っている事務所の俳優やタレントの卵が修行を兼ねてアルバイトしており、メインエントランスにあるステージでは新人のライブやデビューイベントなども行われる昼街のシンボルタワー・シャングリラ__このビルは二十四時間営業で夜も一晩中開いている。
「うわー……ホントに凄い」
初めてこのタワーを訪れた私・宮倉麻衣は三十階のタワーを見上げ感嘆の声をあげる。
真夏の暑いアスファルト上だというのに目の前の巨大水槽には色とりどりの魚が悠々と泳ぎ回り、その魚の群れの向こうに水着を着た人の姿がちらちら覗く。
なんて不思議かつ都会のアスファルトとミスマッチな光景__と思いきやすれ違う人たちは誰も注視していない。
皆当たり前になっているのだろう__この“昼の街”に住んでいる人達は。
ここは西の京国と東の京国の真ん中に座する中立地帯、中桜区である。
完全にドームに覆われ、太陽光は漏れなく電気に還元され、天候も季節も人工的に管理され過ごしやすく作られた街である。東はどこまでも未来都市なのに対し、西は古き佳き時代を演出したこの国で、唯一外ヅラを気にせずに遊べるこの区は実に国の三分の一。
現在の桜国はこの三つに別れ、堅牢な壁と関所が設けられ、出入りは厳密に管理されていた。
朝と昼に働いてる人は夜に眠るものだしその逆も然り、夜に働いてる人は朝から昼にかけて眠る。
この国では、朝と昼に働いてる人は朝街に、夜働いてる人は夜街に住む。
互いに静かな眠りを妨げないために。
そして、両街の間には巨大な昼街が存在して病院から繁華街まで、何でも揃う。皆、互いの街を干渉せず遊びたい時は昼街へ集う。
どの街にも平等に朝日は昇り、日は落ちる。
夜街とは、眠る為の街、夜に働いている人の為の居住区域。
登録者以外は出入禁止で、夜の間昼街の娯楽や医療を支えてる人たちの為の街。
朝街とは、昼間働いて家に帰る人の街。独身者でも可能だが殆どがファミリー層。皆、ここから昼街に働きに出る。
そして各街には街長がおり、その下に警邏隊がいた。
政治家が全ていなくなった後、桜国の西の京と東の京は別々の発展を遂げた。
そして大陸の真ん中に桜都と呼ばれる中立地帯ができた。
東の王榛羽が司どるのは最先端技術に囲まれたビルや研究所が乱立した技術革新の国。
西王 夜朱鷺が司るのは西の京、文字通り平安の世を再現し西王を帝とし、牛車で貴族が姫の元に通うのが普通の場所ー…
驚くことなかれ、これは例のバイオハザードにより壊滅した京の復興を兼ねてのことである。
「中途半端にテーマパーク化するより国ごとしてしまえ」
という王の号令の下、西京は外側だけながらも平安の暮らしを守り、平安貴族が牛車で移動する様などが観光客にも見られる。
平安貴族の和やかな会議も中継され、蹴鞠や祭事なども積極的に公開され貴族は見せても良い部分だけを見せ暮らしていた。
ついでに言えば内側には昔ながらの道具に見せかけた冷暖房完備の部屋に薄着で住んでいる。
そこら辺については別に秘されてはいない、隠すから探られるのであってわざわざ隠さなければどうということはないのだ。
そうやって住み分けされた世界は存外に住みやすく、桜国内のどこに生まれてもどこに住まうかは十六になったら自分で選べるし、見学や遊びに行ったりは子供の時から割と自由に行ける。
私・宮倉麻衣も高校受験にあたりこのまま東の京で進学するか、中桜にするか決めかねて、夏休みを利用してここ中桜に足を踏み入れたわけだが__昼街はとにかくエンタメに特化していた。
ここシャングリラ・タワーもそうだが昼街全てがテーマパークのようだ。
まあ西も別の意味で国全部がテーマパークみたいなものだが、あちらは主に修学旅行で行く場所という認識である。
外国から来る観光客は別として。
短長も不明なのですが、なんか長編になってて直せません。明確な規定はないので良いですかね……?
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