「あなたが飛んだ先に続いている「未来」を、見たくはないですか?」
「——未来?」
「ええ。その世界は、あなたが望んでいる未来ではないかもしれません。しかし確かなことは、その「世界」がこの世界の全てではないということです。先ほども申し上げたように、世界は無数の可能性に満ちています。あなたが生まれていない世界もある。同時に、あなたがまだ“生きている”世界も」
「何が言いたいんだ」
「世界は常に動いている。たった一つの選択が、一つの「運命」を決めるわけではないのです。“現世はまだ無数の未来へと通じている”。そう言った方がいいでしょうか?あなたにはまだそこに辿り着けるだけの時間がある。「距離」がある。どうですか?行ってみようとは思いませんか?」
俺にはわからなかった。
亡霊の言っていること。
世界の「未来」。
俺は昔から、日本の未来のために戦うことを教えられてきた。
今日もそうだ。
なんのために戦ってきたか。
なんのために武器を持ったか。
その答えが常にハッキリとはわからずに、国のために国のためにと精進してきた。
妹を亡くした時もそうだ。
ざーーーーーと大雨が降るような音がした。
止めどもなく「ヒューヒュー」と音をたてながら、斜め後ろの方へ落とされて行く焼夷弾を見た。
燃え盛る町の野を走った。
灰色に染まる空の下を。
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