視界が真っ白になって、果てのない水平線の向こうがいつの間にか小さくなっていた。
操縦桿を握る手が震えていた。
地上から飛び立った時には感じなかった感覚が、身体中に駆け巡っていた。
まるで何もかもが消えていくような感覚だった。
ゴーグルの向こう側に途切れていく空が、——少しずつ溶けて、沈んでいくような。
そうだ。
昔に見たことがある。
…あれは確か、子供の頃の記憶だ。
何も考えてなかったあの頃、無我夢中に足を動かした街の向こうで、空を穿つようなサイレンが聞こえた。
夕暮れ時の空が赤く燃え上がり、木の柱の先に伸びていく電線が、麦の実る田んぼの向こうへと続いていた。
不思議と息切れはしなかった。
自分の家がどこにあるのかも忘れて、夢中で走った。
山、坂道、川のほとり、汽車のシルエット。
一体どこまで行けばいいのか、わからなかった。
それくらい無心だった。
バタバタと土を蹴る足の音が、耳鳴りのように響いていた。
線路の向こう側に海が見えて、街が沈んでいた。
それをどう言えばいいんだろうか。
海の中に浸かった地面が、世界の全てを覆っている。
——そんな、印象の…
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