パクス・マギア~クビになったアイツ、幼女になったらしい。

ひがしやま
ひがしやま

002-3

公開日時: 2022年3月21日(月) 20:02
文字数:1,230

「──っぶねェ!!」


「誰だよチクショウ!!」


 揃いも揃ってラークの顔を見る。

 その精悍で凛々しい幼女の顔は青ざめていた。


「魔力の流れから特定したのか? ……そんな芸当できるとしたらオマエしかいねェよな?」


「いかにも」


 知り合いか? 相手は四〇代くらいの男性だ。生き別れの父親かなにかだろうか。


「おい! パパ活して金作ってたのか!?」


 ジョニーの推察はもっともなものだが、同時にラークを知っている者の台詞でもない。


「ちげーよ!! なんでおれが男相手に股開かなきゃならねェんだ!!」


 男はニヤリと笑い、砂ホコリの先にいるラークを見据える。


「久しぶりだな、ラーク。風のうわさじゃクビになったって聞いたが」


「……情報の足はおれより早ェーな! そのとおり! おかげでこのザマだ!! 飯すらまともに食えねェ日々過ごしていたんだ!!」


「その割には随分魔力の抑制が効いている。子どもになったのが幸いしているのか?」


「知らねェよ!! ジョニー! ミク連れてどっか逃げろ!!」


「……あ、ああ」


 凄まじい剣幕にジョニーも震えた。本当にあの幼女なのだろうか。


「逃がすと思うか?」


 瞬発し爆発した男をラークは無理やり止める。足の速度を速めて、魔力を腕に集め、男を殴ることで一応静止できた。


「……ははッ、そうさ。あのころのおれとはちょっと違うぞ」


「なにが変わったんだ? 常に業界の最底辺を這いずり回るゴキブリが」


「そのゴキブリ消しに来ているオマエはゴキブリもどきだろ?」


「相変わらず口は達者だな。ヤツらに奉仕してお友だちごっこさせてもらっているのか?」


「さァな!!」


 今度は能力の詳細がわかっている。ならば負けないはずだ。

 ラークは地面を蹴り、瞬間に男との間合いを詰める。

 男は反応できているが、防御まではとれていない。

 ラークはありったけの魔力を腕に注入し、男を殴ろうとする。

 だが。


「いまのオマエは身長一五〇センチ程度の子どもだぞ?」


 腕がそもそも届かない。いや、感覚がつかめていない。この身体のサイズに頭がついていけていないのだ。

 手痛い反撃を喰らいそうになり、ラークは慌てて予測し始める。

 だが、時既に遅かった。


「そして中身は男だ。男の顔を殴っても心は傷まんな?」


 ろくな防御もできず、ラークの鼻はへし折れたかのごとく血を噴射する。


「……いてェなチクショウ」


「さて、バラさせてもらおうか」


 後方へステップを踏み逃げる。魔力を固めた波動が飛んできたのだ。

 だが、明らかに動きが鈍くなっている。魔力が保たない。


「ねェんなら追加するだけだ!!」


 ラークは無造作に魔力を感じ取って、それを吸収していく。

 吸収している魔力を一部波動にして、ついでに攻撃をする。

 しかし、それが届かない。最前のごとく、砂のように溶けていくだけだ。


「ほう、天才的だな。随分使いこなしているじゃないか」


「使いこなさなきゃ死ぬだけだ! ゲームと違ってリセット効かねェからな!!」


 やはり直接攻撃するしかなさそうだ。

 ラークは闇雲に突撃していき、しかし相手の魔力の流れをしっかり読む。


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