「──っぶねェ!!」
「誰だよチクショウ!!」
揃いも揃ってラークの顔を見る。
その精悍で凛々しい幼女の顔は青ざめていた。
「魔力の流れから特定したのか? ……そんな芸当できるとしたらオマエしかいねェよな?」
「いかにも」
知り合いか? 相手は四〇代くらいの男性だ。生き別れの父親かなにかだろうか。
「おい! パパ活して金作ってたのか!?」
ジョニーの推察はもっともなものだが、同時にラークを知っている者の台詞でもない。
「ちげーよ!! なんでおれが男相手に股開かなきゃならねェんだ!!」
男はニヤリと笑い、砂ホコリの先にいるラークを見据える。
「久しぶりだな、ラーク。風のうわさじゃクビになったって聞いたが」
「……情報の足はおれより早ェーな! そのとおり! おかげでこのザマだ!! 飯すらまともに食えねェ日々過ごしていたんだ!!」
「その割には随分魔力の抑制が効いている。子どもになったのが幸いしているのか?」
「知らねェよ!! ジョニー! ミク連れてどっか逃げろ!!」
「……あ、ああ」
凄まじい剣幕にジョニーも震えた。本当にあの幼女なのだろうか。
「逃がすと思うか?」
瞬発し爆発した男をラークは無理やり止める。足の速度を速めて、魔力を腕に集め、男を殴ることで一応静止できた。
「……ははッ、そうさ。あのころのおれとはちょっと違うぞ」
「なにが変わったんだ? 常に業界の最底辺を這いずり回るゴキブリが」
「そのゴキブリ消しに来ているオマエはゴキブリもどきだろ?」
「相変わらず口は達者だな。ヤツらに奉仕してお友だちごっこさせてもらっているのか?」
「さァな!!」
今度は能力の詳細がわかっている。ならば負けないはずだ。
ラークは地面を蹴り、瞬間に男との間合いを詰める。
男は反応できているが、防御まではとれていない。
ラークはありったけの魔力を腕に注入し、男を殴ろうとする。
だが。
「いまのオマエは身長一五〇センチ程度の子どもだぞ?」
腕がそもそも届かない。いや、感覚がつかめていない。この身体のサイズに頭がついていけていないのだ。
手痛い反撃を喰らいそうになり、ラークは慌てて予測し始める。
だが、時既に遅かった。
「そして中身は男だ。男の顔を殴っても心は傷まんな?」
ろくな防御もできず、ラークの鼻はへし折れたかのごとく血を噴射する。
「……いてェなチクショウ」
「さて、バラさせてもらおうか」
後方へステップを踏み逃げる。魔力を固めた波動が飛んできたのだ。
だが、明らかに動きが鈍くなっている。魔力が保たない。
「ねェんなら追加するだけだ!!」
ラークは無造作に魔力を感じ取って、それを吸収していく。
吸収している魔力を一部波動にして、ついでに攻撃をする。
しかし、それが届かない。最前のごとく、砂のように溶けていくだけだ。
「ほう、天才的だな。随分使いこなしているじゃないか」
「使いこなさなきゃ死ぬだけだ! ゲームと違ってリセット効かねェからな!!」
やはり直接攻撃するしかなさそうだ。
ラークは闇雲に突撃していき、しかし相手の魔力の流れをしっかり読む。
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