『貴女はもう少しまわりの迷惑を考えた方が良いのでは?』
言われた彼女はすぐさまに彼の頬をひっぱたいた。
青年を追ってキラメク・6・ジャンピングは青年の通う大学までやって来た。彼女は一刻も早く会いたくて皇室専用機の飛行船で大学の敷地に着陸した。青年はその事を咎めたのだった。もちろん青年は、彼女が何者であるか知ってはいた。
彼女は青年が不敬罪で捕らわれたりしてしまわないうちに、真っ先に行動した。そのあと、青年のケエスへとゆっくり手を伸ばしてそっと握った。とたんに青年の体に電流がはしったような感覚が起きた。《ワン・ダイレクションⅣ》の生体同期半導体が作動したのだった。
世界で初めて生体同期の小型化と量産に成功したモデル、それが《ワン・ダイレクション》シリーズであった。
『ぺニスケエスを再再発明した』
ワクワク・ロナ・サンシャイン博士が青色の長い髪をなびかせて、ピンクの唇からその言葉が全世界に高らかに発せられたのは三十八年前、アズアズジャンピング朝250年の節目の年の夏だった。
とにもかくにも青年は姫の手に落ちた。《ワン・ダイレクションⅣ》に新たに搭載さた相性診断機能の感度が振り切れていた。ワン・ダイレクションシリーズへの半導体を供給していた企業、アナスタテミル・テクノロジーも想定外の事だったと言った事は、婚約発表の特集記事のエピソードのひとつに加わっていた。
そんなこんなで二人は結ばれた。
若い二人に帝国中が夢中になった。二人の結婚を帝国民がその年中祝った。精歴1667年、アズアズジャンピング朝251年の事だった。
次の年には子供が産まれた。三つ子と分かった時、《ワン・ダイレクション》は入手困難、アナスタテミル社の資産価値は三十倍になっていた。
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