「君たちもこちらに来てください」ノノパン・ノノープス一士が声をかけた。
応接セットが組まれたリビング中央に全員が集められた。
「君たちは一緒にエラグラス様の寝室に入ったんだね」ノノパンはソファでくっつくように座った二人の少女に話しかけた。
「すいません」イエローのドレスの少女が俯いて言った。
「私たち、まさか、エラグラス様がこんな所に居るなんて思わなくて」グリーンのドレスの少女がつかえながら答えた。
「その事を責めたりはしないよ」ノノパンは二人の前にしゃがんで言った。二人の膝には侍女がそれぞれの部屋から持ってきた膝掛けが掛けられていた。「先ずは君たちの名前を教えてもらおうか」官服の内ポケットから取り出したモリワスンの手帳にペン先を乗せた。
少女二人の肩が小さく震えた。俯いたイエローの子の手がグリーンの子の膝に伸びた。グリーンの子はそれを握った。
「私はヒメネス・ローリングスといいます」茶色い髪を真ん中で分けたおでこときちんと整えられた眉の下に、怯えながらもしっかりとした、髪と同じ色の瞳があった。
「ローリングス 」彼女の名を聞いてノノパンは何かを思い浮かべたようだった。
「彼女はローリングス商会のお嬢様ですわ」ベレニケ・アナスタテミルが言った。
女の方に顔を少しだけ向けたノノパンは、すぐにヒメネス・ローリングスに向き直った。
「父の名前は、ガンホール・ローリングスです。私は、ローリングスの三女です‥‥」父親の名前を口にしたとき僅かに眉間が強ばった。隣の少女と繋いだ手に少しだけ力が入った。「私の後ろにいるのは、ジラスです」振り返らずに彼女は言った。後ろに髪を束ねたメイドが手を太ももに添えてお辞儀をした。顔を上げるときに合った目にノノパンは睨まれた。
「金で爵位を買った一族か」
ノノパンの頭の上から声がした。ノノパンは目の前の少女の肩が震えたのを見た。後ろを振り返ると、ガマシル・イッターが冷めた目を、おそらく社交界に入ったばかりの年齢の少女に向けていた。
「帝国の国境を維持する為にいくらの資金がつぎ込まれているかご存知ですの士長?」
今度はノノパンの横から声がした。
「世界中に販路を持つ彼女のご実家から、毎年どれだけの金貨がこのパレス・アポパイナポーに持ち込まれているか 」女は、栄光ある帝国の輝かしい首都シティ・アズアズフライにある特別区の名前を言った。
「実際に戦っているのは人なのだ。それらは金の鎧など着てはいない」
「それはそうでしょうとも。それでは戦場でいささか目立ち過ぎますもの」ベレニケの妖艶な唇が横に広がり始めた。
「貴様 」ガマシルがベレニケの方へ一歩踏み出した。(いけない )ノノパンは立ち上がろうとして手を床についた 。
バシッ!
と、音がした。
「ううううう 」
ベレニケ・アナスタテミルが側頭部を押さえてソファで屈んでいた。
「え?」
あっけに取られたノノパンの黒茶の前髪が一筋垂れた。
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