精歴1704年、ガンラギマアン帝国アズアズジャンピング朝288年〈アサスタンティング城〉
「きやああああっ !!」
眠りを忘れた白亜の城に、深夜の愛嬌とは相容れない金切り声が響いた。
「だっ、誰か!誰かーっ!」
半分開いたドアにすがり付くようにして、シルバーのメイド服の若いメイドが過呼吸気味に叫んでいた。しかし、辺りに人のいる気配は無かった。
腰が抜けていたメイドは廊下を這って進みながら尚も叫んだ。
「誰か‥‥助けて‥‥」
なんとかメイドが階段近くにまでたどり着いた頃、階段を誰かが上ってくる気配があった。
「レロンバク卿のケヱス見た?」「見た見た!」「奥方の喪が明けたとたんにってどーよ」「なんか必死感出まくり」「それなー」
外聞を気にする必要のないキャラキャラとした女同士の会話が聞こえてきた。異性と別れて廊下の影に入ったとたんに始まるいつもの“アレ”である。
しかし今のメイドにはそんな内容よりも、自分以外に誰かがいたという事実だけで頭がいっぱいになった。
「誰かーっ!助けて !!」
出来る限りで叫んだ。
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