「ここに居られる方々だけなのですね」
「はい、そうですわ。イッター士長様」ソファに腰掛けたベレニケ・アナスタテミルが、子供の質問に答えるように微笑みながら言った。「ここを第八皇女様が臨時のゲストハウス代わりに使っていたのを知っているのは」
「いささか不敬にあたりますな。ミス・アナスタテミル様」ガマシル・イッターがベレニケ・アナスタテミルを見下ろした。「それと私のことはガマシルで構いません。様も不要です」
「失礼をしましたわ」女は男の言葉に素直に頭を下げた。「わたくしのこともベレニケと」顔をあげ、組んだ足を変えながら言った。
ガマシルはベレニケが見せた絶対領域に目を奪われそうになったが、何とか踏みとどまっていた。「ふふふ」女は手をお腹に添えながら微かに笑った。やれやれという風にベレニケの後ろに控えていた執事が嘆息した。
その様子を四人の少女と一人の青年、二人の侍女がリビングの壁際で見ていた。
「もう一人います。エラグラス様の侍女のロリエッタが」
「そうでしたわ。さすがは改役隊の方」氷のような眼差しを向けてくる帝都守備部の男に歯を見せて微笑み「彼女はわたくしの部屋で休ませております」と言った。
「適切な対処ありがとうございます」
「いえ。彼女が犯人に襲われていなくて良かったですわ」
「‥‥それに関しては後で我々が聞いてみます」
「もちろんそうですわ」
このやり取りを、壁際の少女たちは何だかはらはらしながら見ていた。
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