帝 国 の ゆ ら め き

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プロローグ

公開日時: 2024年2月20日(火) 06:00
更新日時: 2024年4月20日(土) 15:32
文字数:266




『光が美しくあるためには、なにを燃えあがらせているかを識っていなければならない』  サン=テグジュベリ







「おう゛、が、が、ぐぁ    

 飛び出さんばかりに開かれた両目の端から涙が滲み出て、Oの字に開いた唇が唾で汚された。手を前に差し出したが宙をかいだだけで相手には届かなかった。そしてとうとう蒼い瞳がぐるんと上に隠れて白目になると、薄紫のドレスに着飾った彼女は大理石の床に倒れた。男は女の首に手をやり脈を確めた後、速やかに部屋を出ていった。誰にも見られずに廊下を進み、階段を降りて行った。そのうちに宴もたけなわの舞踏会場である大廊下の上の回廊に出た。回廊の突き当たりの階段を降りて、そのまま城から出ていった。零時の鐘がちょうど打たれだしていた。



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