「え?」
と二人ともが頭の中でだけ声を出していた。ひゅっと息を吸い込むだけで精一杯だった。二人は抱き合って、互いが倒れてしまわないやうに支えあった。
ドアの向かいの壁際に、四柱式ベッドがあった。
「あ、ええ 」
「ど、ど、ど 」
どちらも喘ぐくらいしか声を出せなかった。
どうにも眼に飛び込んできた光景が理解できないでいた。
二人とも実際にはそれが何であるのかは判っていた。入り口からベッドまでの距離は少女達の足でもせいぜい十歩程度。間にあるのはローテーブルと脱ぎ散らかさられたドレスや下着くらいだった。
それでもふたりが今視ているモノを解る事が出来ないでいるのは、余りにも日常から外れてしまっているからだった。少なくとも彼女達の十六年間では一度も起きていない事だった。
ベッドからは真っ白い日本の女の足が垂れていた。足の付け根の金髪と、その向こうに見える彼女達にもあり彼女達よりは発育が進みきった双房が、一目で女であることを彼女達に判らせていた。
二人は引き摺られているでもしているように、ずず、ずずと抱きつきあった格好で四柱式ベッドへと近付いていった。
「‥‥‥‥」
とても白く美しいとふたりは感じた。失禁で濡れた金色の陰毛の輝きさえ清らかなものに思えたほどに。長く見事な金髪がベッドの上にひろがっていた。その真ん中に端正な造作の美しい顔があった。高貴な御方は、死んでもなお、美しいのだとふたりは想った。だから、尚更に、その口が咥えている物が、ふたりには何だか憎らしく想えた。死体の口には、ガラスのケヱスが捩じ込まれていた。
ベッドの柱にリボンで留められた白いレースのカーテンが、まるで遺影を飾る喪章のように垂れていた。
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