俺は女神様の転生玩具

酒倉ゆづる
酒倉ゆづる

序章

第1話 ヒマつぶし

公開日時: 2021年2月8日(月) 12:00
文字数:2,010

転生__

  それは神が管理する魂の循環。


  死を迎えた生命から魂は神の住まう世界「天界」へと向かう。

  神の導きにより、記憶を削除され、どこかの世界の新しい命にその魂が吹き込まれる。

  この一連を「転生」とする。


  魂はあらゆる生命に宿り、人や動物はもちろん、虫や微生物、植物なども例外ではない。

  そのため魂というものは数え切れないほど存在しているのだ。

  ただ、生き物たちはそれぞれが生きる術を身につけてきたため、死ぬことが少なくなった。そのおかげで転生に来る魂の数は少し減ったが、多いことには変わりがない。


  神々は毎日、転生の仕事で忙しいのである。


  _ある神を除いて。






  見渡す限り続く雲海に、不自然に浮かぶ6畳。

  日もなく影もなく、明るい。

  風もなく音もなく、心地よい。

  まるで現実味の無いそこは「死者の世界」を連想させる。

  意識も身体の感覚も宙に浮いているかのようにふわふわとしているのに、何故か落ち着く。



「私も転生してみたいのですぅ!!」



  急に声を張り上げる女の子。

  瞬間、意識が引き戻され、夢心地が覚めた。しかし、状況は何ひとつ理解できず、ただ唖然とする。

  床は畳でそれ以外は…雲?薄桃の長髪の子と……大型テレビにゲーム機、本棚には漫画、小説……なんだここ。

  こんな場所にいるこの子は一体……



「あ、単刀直入過ぎましたね。私はツェル・フェリアス。神様なのですよ、そこな少年!」



  自慢するかのようにその子は自己紹介をしてきた。

  はい?神様?お前の頭の中ファンタジーか? と、言いたいところではあるが、ここは明らかに自分が知る世界ではない。

  もしここが天国であるなら神がいてもおかしくないが…



「本当に、神様なのか……?」


「はい、神ですよ?証拠にほら!私、神々しいでしょう!!」


「いや、全く。」


「あぐっ……」



  唐突に言うものだから、つい本音で即答してしまった。

  寝癖なのか先がはねている髪の毛、どこだか知らない高校のジャージを着ている。そんな姿に神々しさなど微塵も感じられない。

  が、一応は信じておこう。

  否定の一言がかなり精神的に響いたのか、その子は変な声を漏らして硬直している。

  神様らしいその子は深呼吸をして、再度こちらに顔を向けた。



「もうこの際、神様と信じてもらはなくても良いのです。私は…転生がしてみたいのですぅ!!」


「…さっきも言ってたけど、どういうことなんだ?『転生』ってあれか?小説とかでよく使われる…」


「そうなのです。よく知ってるですね少年!生まれ変わりなのです!!」



  こちらに向けられた金色の瞳からは溢れ出す程の期待を感じられる。そんな目を向けられても困るだけなのだが。

  神様が自ら望んで生まれ変わる…こんなことあるのだろうか。



「分かったけど、ツェル何とかさん」


「フェリアスなのです。フェリでいいのですよ。」


「じゃあ、フェリさん。なんで俺はここにいるんだ?神様だったら転生体験くらい1人でできるんじゃないか?」


「……」



  万能だからこその神様。その神様がわざわざ特別でもなんでもない自分を呼び出す理由があるのだろうか。そもそも万能なら、1人でなんでも解決できてしまうのではないか。

  頭の中の疑問が吐きでてしまう。

  フェリアスはその言葉に頭を抱えて黙り込んだ。



「…仕方ないのです。少し面倒ですが説明するのです。こほん…私がひまにひましていた時のこと…あなたは死んで、転生するのを待っているところを私が拾ったのです。もちろん、私が転生するためにです。仕事を装うため、というのもあるのですが…あ、記憶は消去してあるので死んだことなんて見に覚えないと思うのです。下界に私だけで行けなくもないのですが、そうすればお父様にバレてあの長い説教をされるのです…それを避けるために私はあなたという器を用意することにしたのです。選んだ理由は特にないのですよ。適当です。ちょうど、その世界は『人間の内に精霊が宿る』世界だったので少年は人間、私は精霊として転生すれば、私はあなたを盾にお父様の目を欺けるのです。なんと私は賢いのでしょう!我ながら恐ろしいのです。これで憧れの異世界転生というものができるのです。と、言うわけなのです。」


「………」



  長い。長すぎる。説明しろとは言ったものの一気に喋られては頭の整理が追いつかない。というか、説明の最初あたりで俺が死んだとか言っていなかったか?

  理解するための説明のはずが押し寄せる情報量のせいでより難解になってしまった。



「要約すると、私が転生するために少年を転生の器にしようという話なのです。」


「……」



  少年は口を開けたまま呆ける。

  対してフェリアスは一呼吸挟んだ後、少年に指先を向けた。



「さぁ、行くのです少年!私の異世界転生のために!」


「ちょ!待てっ…!」



  少年の言葉とは裏腹に視界が遠のいて行く。フェリアスや見えていた景色は、すぐに小さくなって見えなくなった。

  まだ聞きたいことがあるのに、まだ納得出来ていないことがあるのに…まだ……

  そこでプツンと意識が途切れた。


オレ女神様アイツ転生玩具ヒマつぶし』の序章を読んでいただき、

ありがとうございます。

どうでしたでしょうか。まだ、文章力・経験がともに全然無いですが見守っていただけると嬉しいです。

感想やおかしい点の指摘でも、コメントしていただけると私は初めてラブレター貰ったぐらい喜びます。

どうか、これから『俺は女神様の転生玩具』

略して『俺ヒマ』をよろしくお願いします。

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