悪役令嬢に転生しても、腐女子だから全然OKです!

「構想3年の悪役令嬢ですわ!」
味噌村 幸太郎
味噌村 幸太郎

和平交渉

公開日時: 2024年12月20日(金) 14:00
文字数:1,471


 剣の帝国”インフィニティ”、私たちの住む魔法の国マジーナとは対照的な国家だ。

 魔法などの力に一切、頼ることはなく。

 己の力だけを信じる人間たちが集まった国。

 

 鋼のような肉体と剣だけで、今までたくさんの国へ侵略してきた。

 近年、その勢力を広げていると聞いていたけど。

 まさか私たちの元まで近づいているとは……。


 

「女王陛下、神聖なる我が国、”兜くんとユリーナ”を汚すものなぞ、許せませぬ!」

「う、うん……そうだね」


 国名が変わったのを忘れていたわ。


「しかし、私たちだけで勝てると思っているのか? カデル」


 いつものアホなアランなら、我先にと剣を抜くと思っていたのに。

 案外、冷静なのね。


「兄上! 野蛮な皇帝なぞに臆されるのかっ!?」

「別に臆してないさ。でも、あの”レオン”皇帝だぞ? お前も噂だけなら知っているだろ」

「うう……」


 本来、このゲーム世界のには、剣の国インフィニティなど存在しなかった。

 まさか隠しルートとか?

 いやいや、そんなはずはない。私はこのゲームを何十回も周回クリアしたんだ。

 見落としたところなんて……。


「だからと言って、アラン様もカデル様も黙って、この国を渡すと言うのですか? 私は嫌です。女王様が企画されたコミケをまだ体験していません!」

「オリヴィア様の言う通りですわ! 私も今回のコミケに売り子として参加しますもの……」


 みんなどんだけ、コミケに命を賭けているのよ。

 まあ気持ちが分からないでもない。

 ここは私が出るとしますか。


「カデルよ。ちょっと一つ、レオン皇帝に手紙を届けてくれまいか?」

「え、手紙ですか?」

「うむ、私にいい案がある……」

「?」


 ~それから、数日後~


 いきなり武力による衝突は避けたかったので、皇帝”レオン・アンドレ”へ使いを出した。

 我が国へお招きし、宮殿内で交渉を試みることにしたのだ。

 女王である私と、皇帝のレオンと二人きりで。


 

 長いテーブルの隅に、一人の男が座った。

 傷だらけの大きな鎧をまとった初老の男。

 銀色の髪は全てオールバックにして、長いヒゲを触っている。

 黙っていても、こちらにまでその存在感が伝わってくる。


「して……ユリ・デ・ビーエル女王陛下よ。今回のお招き、一体どんなお話か?」


 レオン皇帝が口を開いた瞬間、ものすごいプレッシャーで身体が押し潰れそうになった。

 だけど、ここで負けられないのよっ!


「レオン皇帝陛下……此度の会談への参加、誠にありがと……」


 そう言いかけた瞬間、怒鳴り声が上がる。


「たわけっ! そのような話はいらん! さっさと要点だけを言え!」


 くっ、このクッソジジイ!


 会談が始まる前にオリヴィアから聞いた話だが。

 私が出した手紙と一緒に、最新作の百合マンガを同封したが、それを読んだ皇帝は「くだらん」と破り捨てたのだとか。

 分からない……この男の地雷が。


 私が黙り込んでいると、レオン皇帝がテーブルを人差し指で叩き始めた。

 かなりイラついているようだ。

 どうしよう? 百合が地雷なら、BL行っちゃっても良いの?

 危うく、この場で斬り捨てられたりして……。


 その時だった。

 今回の会談は極秘裏に進めているので、城内にいる兵士たちも近寄らないよう、注意していたのに。

 大きな扉が勢いよく開かれた。


「あははっ! こんなところに来ちゃった!」


 と悪びれることもなく、自身の頭をかいてみせる少年。

 金色の美しいショートヘアで、大きな瞳を輝かせている。

 その名は、”ランベルト・ウィリアムズ”。


 このゲーム世界における隠し攻略対象で、元第三王子だ。

 アランとカデルから、年の離れたショタっ子。


「ユリお姉ちゃん、僕も混ぜてよっ! 一緒に遊ぼっ!」

「……」


 何しに来たの、この子。

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