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第2章 夏を思いっきり楽しんで、エンジョイしよーよ

第8話 ゾウと、モツで、口封じ(ケセラ視点)

公開日時: 2023年4月4日(火) 21:39
更新日時: 2023年4月4日(火) 21:42
文字数:2,417

 ここからは第2章です。

 章タイトルのごとく、夏を舞台とした物語となります。


 夏の日差しにも負けず、ミクルたちのコントな物語はどこまで突き進むのでしょうか。

「海にやって来ましたよー!」


 青い空、白い砂浜、さんさんと輝く太陽。

 でもウチら四人以外に人はおらん。

 だけど貸し切りのビーチとかいう場所でもなく、地元の海水浴場だ。


「さあ、ドンとコイなのです!」


 白いおでこに赤いハチマキを巻きながら気合いを入れるミクル。

 その元気があれば何でもできる。


 ……かと言って太陽に負けないような熱い恋を求めに訪れたんじゃない。

 真の目的はパートナーではなく、無機質に鈍く光るこいつらだ。


「おっしゃー、一番で採ったぞー!」

「ケセラさん、早くもですか!?」

「へー、ケセラちゃん、随分と逞しいヤツを掴んだじゃん」

「だろ、お前たち羨ましかろう。悔しかったらウチよりいい相手を……」


「……って、違うやろー!」


 ウチは持っていた透明なビニール袋を砂地にペチンと叩きつけた。


「何で海開き前の海にまで来て、空き缶拾いをせないけんのやー!」

「……それは缶に飽きるまで」

「ジーラ、余程、直売店の砂浜に埋まりたいみたいやな」

「……暴力反対」

「そうやな。ウチもな、力任せにジーラをしいたげるつもりはないけど……」

「……シイタケのエキス?」

「ちゃうわ!」


 この程度の学力しかないジーラがどうやって今の進学校にやって来たん?

 面接で校長に色仕掛けでもしたんか?


 ──ええ、校長、取って置きのプランがあるんですよ。

 Aのズワイガニコース、Bの国産松○牛コース、Cのお食事なしコースのどれにしまふ?


 Cは何の罰ゲームなん?

 折角、野を越え、山を越え、汗水流してお食事に来たのに絶食とか、お坊さんの修行かよ!  


「──はあ……はあ……」

「ケセラさん、そんなに息を切らしてどうかしましたか?」


 あっ、ヤバいわ。

 色々と妄想が過ぎたわ。


「あかんわ。ウチはこの物語ではまともなギャルの設定なのに……」

「……バーサーカー?」

「ウチは狂戦士やないで」

「……と見せかけてヤマンバ?」

「ちゃうわ!」


 ジーラ、冗談もいい加減にせえよ。

 まだウチはピチピチの活きた女子高生(死語)やで。


「違うわよ、ジーラ」


 そこへリンカがウチらの喧嘩を仲裁するかのように一声かける。

 そうやで、友達が足を踏み外したら、それを助けるのが親友としての務めやで。


「ここはモリを構えたまま、空き缶をつけ狙う一風変わったヤマンバなのよ」


 へっ、リンカ、何言ってんの?

 背中のリュックから折りたたみモリを取り出して、斜め四十五度の角度から攻撃のフリなんてイタイからやめて。


「空き缶に狙いを定めながら悪い子はいねがー‼ ってね」

「……華麗に突き刺して、てへぺろ」


 そりゃ、ヤマンバじゃなく、サバイバルに特化したなまはげ星人やろ?


「二人とも可愛い子ぶって、さりげなくウチの悪口を言うの止めよーか?」


 ウチはリンカ共の猛攻を何とか食い止める。

 このままだと海水浴場でとち狂った狂乱者と思われかねない。


「そんなことよりミクルを見なよ。文句の一言も言わずにせっせとゴミを拾ってるやん」

「まあ、ミクルちゃんが考えた企画だからね」


 リンカの話ではミクルは観光客が乏しいという理由でネットにて地元のPR宣伝を兼ね、近いうちに海を利用する観光客に向け、綺麗になった海を満喫してほしいという想いを込めた『ゴミ拾いのボランティア企画』を校長に頼み込んだらしい。

 ここで黙って動かずに、この街の宣伝行為という形で納得させ、校長にきちんと直談判するのも真面目で芯が強いミクルらしい。


「……別名、宴会部長」

「んんっ……?」


 そのジーラの呼びかけに反応したミクルがウチらの方を振り向くけど、何か様子が変や。


「モグモグ……」


 ハムスターの食事中みたく、頬を膨らませながら、美味しそうな顔でうっとりするミクル。

 お嬢さん、隠れてコソコソと何か食ってるやん。


「……通称、モグモグを極めたお嬢」

流石さすが、宴会部長ミクルちゃんね。腹が減っては司会が出来ないからね」

「ミクルを餌付けすな!!」


 ジーラもリンカもミクルの食事風景から目を反らし、明後日の方向を見ながら、しらを通す。


「あんたら知らぬ存ぜずを貫き通す気かい!」

「「ヒュヒュヒュー♪」」


 ウチはそんな二人を怒鳴りつけるが、当の二人は何事もなかったように口笛を吹き始める。


 それにしても馴染み深い。

 小学生の頃から知ってるメロディーやな。

 どこかで聴いたことがあるメロディーやし、有名な曲でも吹いてんのかな?


 ウチは二人のハーモニーな演奏に耳を澄ませて、音色に集中する。


「「ヒュヒュヒュー、ヒュヒュヒュヒュー♪」」


 えっ、待てよ?

 千代ちよ八千代やちよに……?


「君が代かよ!」


 ウチは持っていた空き缶が入ったビニール袋を砂地に投げつける。


「へぇひぇらはん……へぇんか……」

「いや、気持ちは分かるけど意味が分からん宇宙語やから、食べ終わってから話しかけてや」

「ひゃい、モグモグ」


 再び、ミクルが咀嚼そしゃく音を立て始める。

 しばしウチは待つけど、ミクルの口の動きは一向に止まる気配がない。

 ウチの見る限りでは、もう3分が経過してるけど……。 


「一体、何を口にしたら、あんなにも咀嚼に時間がかかるんやろ……」


 ウチの素朴な疑問にリンカとジーラがニタリと笑う。


「関西人が好むもつ煮込みだからね。噛みきれなくて当然ですわ」

「……味が気になるお年頃」

「ならんわ!」


 この二人は関東人の私に臓物をすすめる気か?


「ケセラさん、喧嘩しないで下さい。お二人さんは悪くありません」

「ミクル、あんた……」


 こんな失礼な相手でもフォローするミクルにウチの目頭が熱くなる。


 友達を庇うのは当然の如くか。

 ミクルも成長してきてるんやな……。


「お二人さんは私にほっぺたが落ちるほどの美味しい食べ物があるから試しにどうと聞かれて……」

「それであまりお金はないですよと言ったら、リンカさんたちの電車賃のツケを私が払うことにしてくれたら、無料でいいと……」

「……ミクルちん、後で学校の裏庭に来いや」


 善悪の区別ができんこの子は一回シバかないけんようやな。

 ミクルの企画は食い物一つという口封じで揺れ動くらしいから。


 この食欲魔女めー!!

 ミクルが餌付けされるという彼女の食いしん坊キャラが息づいた内容でした。

 また、関西弁なケセラが実は関東人だったことも、この話で暴露される形となりました。


 しかし、その後にケセラの出生について語られることはなく、最新作の社会人編でもその言動は謎に包まれています。


 女の子には秘密が一杯あるんですよ。

 いつの日か、それを語る日が来るまで気長に待ちましょう。


 ──余談ですが、私はあまり、もつが好きな方ではありません。

 中々噛みきれない癖のある食感もですが、何より味が消えても、そのもつを噛まないといけないというのが、どうも苦手で好んで食べる方ではありません。

 大人数で囲んで食べようと思えば食すのですが、もつ鍋ももつ煮込みもどうも駄目です。


 いつ飲み込んでいいのか、タイミングも掴みづらいし、ガムを飲み込みような感覚にもなり、まるで異世界の食べ物のような不思議な食べ物です。


 よく読者さんが勘違いするのが、作風にこのような料理が登場するから筆者が好物なメニューなんだなと思う点。


 確かに一説はありますが、小説というものはフィクションであり、そのキャラに成りきって好きな食べ物を表現しているのが大半です。


 この物語はフィクションですと、いくらあらすじに表記しても、そのあらすじさえも読まない人もいて、『作者さんは、この食べ物が好きなのですか?』と問われてくる質問の数々。

 この悩みは永遠につきそうにないですね。


 まあ、それだけ読者さんが、物語に感情移入しているということで前向きに捉えていきましょうか。

 創作するのに至って、いちいち悩んでいたらキリがないですからね。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

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