乙女ゲー転生、私が主役!? ……いやそれ、何かの間違いです!

まんどう
まんどう

謎の公爵家令嬢

公開日時: 2021年3月9日(火) 18:32
文字数:3,499


そして日付変わって次の日! ……ではなく数日後。ジュリエッタが不調だったとかで伸びたのだ。

例の如く、大したことじゃない諸々は割愛!


(割愛しないで!?)


そしてちょっと大きなこととは、本来今日は学院が休みである! にもかかわらず、ジュリエッタ嬢に呼び出しを喰らいました!


「今日は……私」


心なしか、フンスと胸を張る公爵家のご令嬢、ジュリエッタ。そして魔法担当クライン先生。


「今日は休みだったはずなのであるが、都合上、今日が良いと叩き起こされたのである。(じっとり)たたきおこされたのである」


「うっ……すみません」


「はぁー……。まぁ光魔法の方はお願いするのである。私では教えられぬ故な」


「う……ん」


実際にはクライン先生の出自は公爵家であるので、その関係で光魔法も使える。のだが一応そのことは公にしていないので、使えないことになっている。


「よろしくお願い致します」


「んじゃ、はじめ……よう。光魔法は……中にあるのを……ぎゅっ……として、えいやっ……て出すの」


ドヤ顔でふんぞり返るジュリエッタ嬢。尊い。


「「………………」」


あ、これあかんやつや。伝えられへんやつや。何も伝わんねぇ。絶望の表情を浮かべる他二名。


「……?」


伝わらない? って感じで小首を傾げる様子はそれだけで絵になるな……。


「……(ポフン)」


思いついたと言わんばかりに掌に拳を載せる。いいか? 叩いたんじゃないぞ? 載せたんだ。音的にもな。

で、ジュリエッタ様は何をしたかと言うと、


「へ? あ……ひあぁあっひゃあああああ!?!?」


 ビッカアアアアアアアアアアアアアアア!!!


「うおわっ! ジュリエッタ嬢! 加減! 加減を!! フォアアアアア……!!」


そしてフローラ達は光の中へ消え去った!


(消えてねえよ!? なんだその一度位しか出てこなかった成功率も低く使いどころのないMPの無駄の、忘れられた呪文のようなセリフは!? っつか、それちょっと前に私が使ったネタじゃねえか!)


チッ、居たのか。


(だからー。なんでー。舌打ちー)


どうなったんよそれで。


(もう少し興味持って……。えっとね、ジュリエッタ様が私に触れた瞬間、何かが流れ込んできてね? さわさわ〜、さわさわ〜って感じで。それが収まると、引っ張り出されるかのように光魔法がどーんて)


垂れ流しになったのか。


(言い方考えて!? なんか漏らしたみたいじゃないの!?)


色々緩いから。ちなよく考えて選んだんだが?


(何が緩いの!? そしてよく考えてコレかぁ!?)


ちなみにあの呪文、割と出続けてたし、使いどころによっては効率のいい呪文だったし、腐ったものには効きやすかったそうだから、他の二人はともかくお前さんは消えててもおかしくないな。


(へー、そうなんだーって腐ってねえよ!?)


「うぐぐ、ジュリ、エッタ嬢……。如何に光魔法に傷付ける心配が無いとはいえ、無遠慮に全力を出させるのは如何なものかと思うのである」


「……?」


「何故と言われてもな……。あれほどの魔法を無理やり使わされたら普通は疲弊して寝込んでしま……っておらぬな? どういうことだ?」


「やっぱり……勇者。許容量、がすごい」


「勇者!? コレが……であるか?」


(先生……色々至らぬ理由には心当たりが沢山ありますが、コレ呼ばわりは無いと思うであります)


いや、正しい見立てだな。


「コレ、ちがう。……勇者、ね」


「あ、ああ……すまないである」


(立ち直りが早いわー。立ち消えてくれれば良かったのにー……)


ジュリエッタが少し混乱していたクライン先生をなだめると、ようやく本題にはいる。


「フローラ嬢が仮に勇者だとして……」


「仮、じゃない、勇者……」


「……であるなら、4大家の役割はどうなるのであるか?」


「……どう?」


「4家は勇者の代用品であったのではないか?」


「違う。役割が、別」


(そうねー。3公爵1皇家は4家で一つの魔法、広域浄化魔法サンクチュアリ、そしてもう一つ対魔王用弱化魔法セイクリッドカノンの2種類を保持してるものね。私の存在で対魔王用が不要になったとしても、サンクチュアリを使える必要性は消えない。……けどジュリエッタが知ってる描写は無かったはずなんだけどなぁ)


「……なぜジュリエッタ嬢がそれを知ってるかは置いとくとして、であるならば我等は何をすれば良い?」


「……魔石?」


「ああ、魔石集めであるな。他の候補者はこうまで光魔法を発現させらなかったのであるから、フローラ嬢の証にこそ注ぎ込めばいい、という話であるな。他には?」


「………………」


ジュリエッタは少し考え込むと、フローラの方を向き直り、


「魔王、会う。おーけー?」


「は? え? おーけーでは、無いです、よ?」


「……何故?」


「どうやって会うおつもりですか!?」


「……淵?」


「飛び込むつもりですか!? そもそも繭には触れた瞬間吐き出されるんですよね!?」


「……ぉ〜ぅ」


(何その、あっちゃー忘れてた! みたいな反応!)


なんかこの人、面白いな。過剰に美麗で精巧な人形のような令嬢かと思ってたけど、ことごとく何かがずれてる。


(それな)


「大体にしてジュリエッタ嬢……お父上がお許しになるはずなかろうが!」


「……駄目?」


「駄目である! 私が言ったから駄目なんじゃなくて、お父上もお許しにならん!」


「……ちぇー」


本気でがっかりした!?


(え? この人なんなの!?)


喪女さんに言われりゃおしまいだなぁ。


(っさいよ)

「そもそも、なぜ魔王に会いたいのですか?」


「……あれは……敵? ……なのか、どうか」


「言うまでもないことであるな」


「どうして?」


「どうして? ……それはコレまでも」


「こちらの、言い分……しか、知らない」


「……しかしあれは魔王だ。かつてこの世に爪痕を残した破壊の化身である」


「今も、そう?」


「……そうであろうよ」


「……(ぷくー)」


(あ、むくれた。……なんつーカワユス! レアショット!!)

「私が連れて行かれたのもたまたまでしたから、連れて行け、と言われて連れていけるものでも御座いません」


フローラがそう言うと、クラインがよく言ってくれた! とばかりにうんうん頷いた。


「……(ポフン)では、フローラ……これから、うちに……来る」


「……はい?」


「ずっと、一緒に……いれば、いつか……来る?」


「「はぁぁぁあ!?」」



………

……



この後中々折れないジュリエッタに手を焼いたものの、最終的にはお父様の意向を聞きなさい! という言葉に終止して丸め込んだ。ジュリエッタ嬢の目が座っていたのはデフォルトだと思いたい、そう都合の良いことを考える風呂オラさんでした。


(マジで思ってんだよ、やめろよお前……)


「では……」


「では失礼します……」


「うむ。くれぐれも短慮を起こすのではないのである」


「………………(フイッ)」


((視線逸しやがった……!))


「おう、おわったのか? って何だジュリエッタ。妙に不機嫌だな」


(分かるんですか!? アーチボルド様!)


すげーな。


「………………」


「ああ、はいはい、サロンだろ? 予約してあるよ」


(え? この流れはまたなんですか??)


だなだなだーな。


(何のネタかわからんけど腹立つ!)


サロンに着くと、いつものようにアーチボルドは走り込みに行く……と思いきや、今日はサロンに残った。


「………………」


(ジュリエッタ様の無言の催促が凄い! カワイイ!)


「え、ええっと、コレがお手伝い頂いた皆様にお持ちしてるお菓子で御座います。お口汚しと存じますが、よろしければどうぞ」


キラキラと目を輝かせたジュリエッタが差し出されたお菓子を一口……。


「 !! 」


パァアアアア!


光魔法でも漏れてんじゃね? って位輝く笑顔を見せるジュリエッタ。なんて生き物だろうか?


(うっわぁ……女神の微笑みってやつだわねぇ……)


もくもく……ぴたっ……カクンッ


( !? え? 何? ……寝落ち?)


……もくもく


(え? 再起動!?)


もくもく……ぴたっ……カクンッ


(またか!?)


……クワッ!


「あ、やべえ!」


「え? え? アーチボルド様??」


「………………(ギロッ!)」


「俺のせいじゃねえよ!?」


慌てるアーチボルドに彼を急に睨んだジュリエッタ。かと思うと、


ズダダダダダダダダダダ!


ジュリエッタは全力疾走でサロンから飛び出していった!


(嘘ぉ!?)


「あー! チクショ! そうきたか! セバス! フローラを頼む!」


「畏まりまして御座います」


(ビクッ! 何時の間に……)


この場のカオスの状況を置き去りにして、アーチボルドもまた全力疾走でジュリエッタを追いかけていったのだった。

風呂オラさん? 普通にセバスと呼ばれた老紳士な執事に送り届けられましたよ? 老紳士に発情しながら。


(素敵だなとは思ったけど発情なんてしてないよ!?)


それを世間では……いや、言うまい。


(ちょー!?)


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