乙女ゲー転生、私が主役!? ……いやそれ、何かの間違いです!

まんどう
まんどう

三位一体

公開日時: 2021年3月9日(火) 19:33
文字数:3,750


 引き続き調査するためサイモンは残り、グレイスとアーチボルドが護衛として残る。ちなみにガイアも久しぶりの我が家? って言うのは変だけど、ずっといた場所だけに落ち着くのか、暫くここに残るらしい。


(ベルが何時壊れるかが心配)


 耐久低そうだもんな、あいつ。後は抜けたと言えば、ディレクが現時点で判明していることを皇帝に報告しに離脱した位か。


「では残った我々は少しばかりお茶をして帰ろうじゃないか」


 残った面子の筆頭格であるエリオットが、これからサロンに寄る事を提案する。


「そうですのね。では私達はこれ……」


「ミランダ嬢達も参加してくれるだろう?」


「にぇ………………?(チラッ)」


 ミリーは家格の違いからナチュラルに捌けようとするも、エリオットが名指しでキャッチする! 当然ながらミリーに対応する術はない。そこでヘルプアイが喪女さんへと照射されるのだった! 喪女さんがにっこり笑って返すのを見たミリーは心なしかホッとした表情で……、


「勿論参加しますよ。ね? ミリー」


「そそそ、そうですわよ、ねぇっっ!?」


 喪女さんが当然参加しませんと言ってくれるものと思い込んでいたミリーは、その表情筋の全てを駆使してどういうこと? と言わんばかりにフローラに訴えかける。喪女さん、サムズアップで返し、ミリーの表情が味方は居なかったと絶望の色に染まる! それを見ていたミエは、またなんかやらかそうとしてやがると言いたげにフローラを睨み、エリさんは何か納得したような表情で頷く。


「ちょっとフローラ?」


「ああ、大丈夫大丈夫。メイリアは慣れてるでしょう?」


「慣れてきた、が正しいのよ? でもミリーは……」


「ジュリエッタ様にエリオット様は、多少の事位で怒る様な器の小さい方じゃないわ。ええ誰かと違って。そしてミリーとは授業でも一緒のアメリア様だけだもの。問題無いわよ」


「そうですわよ? ミリー。何も怖くありませんわ」


 何時の間にか寄ってきていたアメリアが、ミリーに寄り添う。


「アメリア」


「それに私も居るしな」


 負けじとミエが逆サイドに寄り添う。


「ミエさん!(パァアア……)」


「あら? 私も混ぜてくれてないかしら?」


 エリは後ろに回った! ……少しばかりミリーの方が背が高いから目立たないけど。


「エリさん!(パァアアア!)」


 ミリーには関係なかった。っつか喪女さん、ミリーさんが全開ですことよ?


(良い事でそろ)


「では移動しようか」



 ………

 ……

 …



 サロンへと移動中、アメリアが誰かを見つけて声を掛ける。


「あら? バルバラ様ではありませんの?」


「……ぇ? どな……ひっ!? あ、アメリア、さん?」


「はい、アメリアですわよ」


(誰?)


 アメリアの知り合いとしか言えないな。


(ふぅん?)


「お、おほほ。あ、あら、皆様ご一緒なのね……ごきげんよう」


「さようなら」


「はい、さような……ってどうして関係無い貴女がしゃしゃり出てきて会話を終わらせるんですのぉっ!?」


「あいえ、何となく?」


 何でさようならって言ったんだぜ?


(いや、「ごきげんよう」と「さようなら」は私の中ではセットになってんのよ)


 ……まぁ「さやうならばごきげんやう」ってのが語源らしいから、間違いではないかもだが。今のだったら、流れで分かんねぇ?


(いや、ゆりゆり系なあの有名作とか、朝ドラでも使われてたから、言わんとしてる事はわかるんだけどね。個人的に「御機嫌よう」って言葉は「ご機嫌よろしくて?」って言葉が短略化したんじゃないかと私は見てる。それなら会話も続くし)


 じゃあ話続けてやれよ、ってまぁそんなんどうでもええやん。


(それもそうね)


「で、切っちゃった私が言うのも何ですが、会話続けたかったんで?」


「はっ!?(つい突っ込んでしまいましたがコレは好都合だったのでは……?)い、いえ。そうですわね。ええっと……」


「さようなら?」


「 !! ええ、そうですわね! さようなら!」


 別れを告げるなり、走るかどうか位の移動速度でそそくさ退散する令嬢さん。


「フローラ様?」


「あ、アメリア様。え? あれ、逃がしちゃいけない人でした?」


「……いいえ? そうではありませんが」


「多分前に何かあった方なんでしょうけど、無理に軋轢増やす必要もないかなぁって」


「ほんと……お人好しですわねぇ」


「いえいえ。本音でぶつかったりだとか、喧嘩とかが苦手なだけですよ……」

(てか、今ピンときたけど、あの人アーチボルド様にちょっかい掛けたりした?)


 教えないんだぜ?


(ビンゴよね、きっと。あの豹変ぶりを知ってる私達にしてみたら、あの怯え様は納得だもの)


 微妙な顔をして逃げる令嬢を見つめる転生者ーずであった。


「さぁサロンに入ろう?」


 少し微妙な空気が漂っていた一行に、努めて明るく振る舞うエリオットであった。


(いや、あれ普通に素だと思うんだけど?)


 今起こった事に興味なっしん、って事?


(だと思う)


 エリオットに促されるままサロンに入ると、相変わらずの別格仕様であった。


(王侯貴族か! って言われたら、そうよ、って答える以外に無いわよね)


 座布団全部持ってってー。


(そこまで!? 事実なのに!)


 エリオットが優雅に寛ぐ姿は、ディレクを差し置いて王子の風格を漂わせている。


<言ーってやろ>


(『貴方達の軽口を伝えるのは無理でしょう? って言うか、あれ、どうするつもりなの?』)


(いや、私もまさかあんなにガチガチに固められるとは思ってなかったから……)


 あれ、とは、エリオットの前に誘導されたというか座らされたというか、とにかくミリーが座っていた。その横をアメリア・ミエが固め、後ろにエリが控えるという妙な構図である。まるでどこぞの三位一体の究極攻撃である。真ん中に据えられているのが、ミリーなので永遠に放て無さそうだが。


(てかそうなると、エリさんは女神の立ち位置だったりするのか? 一人だけ立ってるしな……)


 喪女さんがチラリとエリを見ると、両手をふわっと広げて目を瞑って見せてから、ニコリと笑みを返してくる。


(もしかしなくてもそのつもりだったか)


 ……ノリ良いなぁあの人。


「ミランダ嬢」


「ははひゃいっ!?」


「(クスクス)リラックスして欲しいな? 皆とはそんなに打ち解けているのに、僕には余所余所しいのは何故だい?」


「あああ、あの、その……(チラッ)」


「(………………)」


「シンシアなら、もう君を怖がらせたりしないよ。ね?」


「(コクリ)」


「そそそ、そういういみゅではなきゅ! ……はぅぅ」


(おお、メッチャ噛んだ)


「エリオット様? 私達は愛称で呼び合う仲ですのよ?」


「それはとても良いこと聞いた。アメリア嬢、礼を言うよ。じゃあ、僕もミランダ嬢の事をミリーと呼んでも良いかな?」


「はぇっ!? ……かか、構いません……けど」


「けど?」


「よろしいのですか? その……仲良くして頂いてる方々との家格の差は重々承知しておりますし、身の程をわきまえてもおります。ですので時と場所を選んで仲良くします。そもそも皆さんは女性ですし……」


「ああ、僕が男で、君と一緒にいたら邪推する輩が居ると?」


「エリオット様の名に、傷を付けかねませんわ」


「言いたい連中には言わせておけば良い、だったかな?」


「そうですね」


 喪女さんが即フォロー。


「!?」


「あの時のジュリエッタの毅然とした態度には胸がすく思いだったよ。ああ、僕もあの時そうしていれば良かった、ってね。まぁ実際はそれだけの問題じゃ無かったんだけど。そうそうフローラ嬢の手を切る発言も、過激ではあったけれどね」


 といたずらっぽい表情で喪女さんにウィンクするエリオット。


(うへぇ、役得やんか)


 キモッ。


(おま、ちょいちょい台無しにするのやめない?)


 む・り。


(だよね……)


 この後、エリオットがミリーを質問攻めにして、最終的にミリーの精神アラームが鳴り始めたので、エリ・ミエ・アメリアの三位一体によって強制お開きになるまで御茶会は続くのだった。御茶会の閉会後、喪女さんコピー機によって大量生産された敵国の要注意人物の人相書きが皆に配られた。後で配るものではあるのだが、信頼の置ける人物に先行配布された形か。



 ………

 ……

 …



 喪女さんが居なくなってからのこと、我等が負け犬令嬢バルバラ様がウロウロしていた話である。


「よく考えてみれば、先程の無礼な女はフローレンシア・クロード、たかが男爵家の令嬢ではありませんの。そもそもがあの女のせいで色々ぶち壊しに……いえ、シルバではまるでアメリアに相手にされておりませんでしたし、そもそもアメリアという女を読み違えたのがそもそもの原因ですわ。どこぞの男爵令嬢の目とは違って、こういう時には使えない目ですわね。……であれば、あの場から救ってくれたと素直に感謝すべきなのかしら? ……あら?」


 バルバラがうにゃうにゃと考えがまとまらず、フローラに礼を言うのか恨み言を言うのか迷ってウロウロしているうち、フローラ達が御茶会をしていたサロンの近くまで迷い込んできていた。そして地面に落ちていたイラストに目が留まる。


「コレは……人相書き、ですかしら?」


 それは先程の御茶会で配られていた手配書であった。侯爵家の令嬢としては地面に落ちているものを拾うのは気が引けたものの、描かれているイラストが気になってついつい手に取ってしまう。


「この絵に似てる方……確か見たことありましたわね?」


 ご都合主義万歳である。


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