乙女ゲー転生、私が主役!? ……いやそれ、何かの間違いです!

まんどう
まんどう

キャットファイトフォー

公開日時: 2021年3月13日(土) 12:00
文字数:3,796

「ああら? あれって確か、私の目的の相手ね?」


「はっ! もう一匹居やがんな? 何だってん……おいおいおい、ありゃあ公女殿下様じゃあねえのかよ??」


「はぁ!? ベルタエルに陣を仕込んでんじゃなかったの??」


「のはずなんだがなあ?」


 サイモン達がぶつかり派手な光の柱を出現させてた頃、森の終端まで来ていたロドミナとハルロネの視線は、開けた所にて待ち受ける二つの部隊と、その先頭に立つ二人を捉えていた。


「もう見えているんでしょう? 出てきてはどうかしら?」


「………………」


 ジュリエッタってか乙女様は堂々してしてらっしゃいますが、メイリアは少々顔が引きつってるね。バモン連れ去っていった相手かも知れないってやつかな?


「おいおい、お姫様よぉ? 何でこっちに居るんだ? ベルタエルの方で仮陣地築いてるんじゃなかったのか?」


 出てくるなりジュリエッタに噛みつくロドミナ。見た目はベリーショートなピンクヘア。ボーイッシュと言えなくもない。割と出るとこ出てるから、絶対少年には見えんが。


「良くご存知ですね。それもまぁ、最速で進めるのは敵が攻めて来るのが前提。国境付近での戦闘が無いと分かっているなら、私一人欠けた所で掛かる時間が増えるだけの事


「なぁんで戦闘が無いって言い切れるのぉ?」


 会話に混じってきたハルロネは、金髪に所々ピンクの染を施した、カーリーロングヘア。ちょっとタレ目でぷっくり唇。こっちも女らしい身体つきです。


「メアラ先生が出てきたから」


「あ? メアラだぁ?」「はぁ? メアラが何よ?」


「鬼将軍と右腕を相手に、戦闘を避けて兵を削るなんて迂遠な行動を取らせてるから、と言った方が正しいかしらね?」


「ああ、そういう事かよ」


「それが何……ってええ? 今ので分かったのぉ?」


「盛大な囮だって見ぬかれたってこったよな?」


 ジュリエッタはそれに答えず笑みを深める。


「所で……うちの国民を連れ去ったのはどっち? それともここには居ない?」


「ああ? おいおい、連れ去ったとは人聞きが悪ぃなぁ? 喜んで協力してくれる、共和国民をさぁ?」


「くすくす、そうねぇ。二人共大事な私達の仲間よぉ?」


 その言葉にメイリアは二人をギッと睨み、ジュリエッタは目を細めて……、


「ああ、貴女の方ね」


 と、ロドミナを見つめて深い深い笑みを見せた。……っつーかバルバル様の件があるから、そんな芝居打たなくてもロドミナがやったって知ってるじゃん?


(『こういうのは雰囲気が大事なのよ?』)


 さいでっか。……喪女さんじゃないからバルバラ様よってツッコミが無いのね。


「ちっ……下っ手くそな芝居しやがって。私のスパイ活動がバレた時に既に当たりつけてたんだろうが? それをなぁに今気付きました! みたいな顔して言ってやがんだ? ああ!?」


「あらあら、バレてしまったわ」


「むっかつく……」


「ほんと、うっざい……」


「………………」


「で、メイリア? どちらとやりたい?」


「おいおい! てめえで勝手に決めつけんなよ! 続編じゃモブの分際でよぉ!?」


「わ、私は……」


「あんたも黙ってな! 選ぶまでもなく私が相手してあ……ごぶっ!?」


 ドムッ!


 重々しい破裂音の様な音が辺りに響き、ハルロネが遠くに吹っ飛んでいった。ジュリエッタが目にも止まらぬ速さで飛び出し、ハルロネの鳩尾に一撃をお見舞いしたからだ。っつか、生きてる?


(『死んでは居ないと思うけど、上手く手加減できた自信はないわね。まぁ敵国の将だし、あれで逝ったならそれはそれで儲けものってとこでしょ』)


 割に考え方が怖いな、乙女様。


「ちっ! うぉい! ハルロネぇ!」


 返事がない。ただのしかば


「っだあああああ!! てめえ! ぶっころしてやる!」


 ……たまには普通に言わせてくれても良いと思うの。


(『無理なんじゃない?』)


「ちぃっ! おい! ハルロネ! 約束忘れてねえだろうな!」


「ああぁ!? ……ああ、そうだったわね。私の相手はメイリアって娘だったわ」


「 !? 」


「ああ、そうだ。よしよし。って事で公女殿下様よぉ? ……相手してもらうぜぇっとぉ!」


「……え? あっ、きゃあっっ!」


 ジュリエッタと闘うと口にしておきながら、メイリアに向かって強襲を掛ける!


「そんな見え見えの攻撃を通すと思って?」


「いんやぁ?」


 メイリアへの射線を遮られ、速度をゆるめたロドミナがニタリと笑う。


「 ? ……メイリア後ろ!」


「えっ!? あっ!」


 ジュリエッタとロドミナがやりあうのに紛れて、メイリアのすぐ後ろからハルロネが迫っていた!


「あはっ! さっきの一撃の恨みはこの娘で晴らしておくわぁ!」


 メイリアに迫るハルロネ! どうする!? 乙女様!


「メイリア! 右半身後ろ転身からの左胴薙!」


「はいっ!」


「何したって無だぶぇっ!?」


 乙女様の叫んだタイミングで両手をそれぞれぐっと握りしめ、2つのハンマーの様にハルロネに叩きつけた! まさか反撃が仮にあっても直撃するとまでは思ってなかったハルロネは、胸と土手っ腹に二つの拳を叩きつけられる形となり、またもや吹っ飛んでいく。……ピンボールですかね?


「チィィィ! おおい! 大丈夫かよ!」


「げぇっほえほ……あああああったま来た! メイリア! あんたはぶっ殺す!」


「ああ、生きてんな。良し。………………公女殿下様よぉ仕切り直しだ。今度こそ殺し合い、始めようぜ?」


「ええ、そうね」


 こうしてようやく4人はそれぞれの部隊の下に戻る。


「ねぇ? ロドミナ……今回組まなくて良いの?」


「あの野郎、ご丁寧に私の懐柔した奴等を潰してやがんだよ。相乗効果は期待できねえ」


「もう、面倒ねぇ」


「だから内応潰された恨みで私はあっち、難いあいつを相手にあんたはあっち。ひひっ」


「おっけぇ? 分かりやすいわねぇ。あはっ!」


 ひひひ、あははとねっとりとした笑い声を上げる二人。


「もうお話は済んだかしらぁ?」


「ああ!? 何時でも良いぜぇ!」


「では……参ります!」


 4人の魔力が昂ぶる中、真っ先に飛び出したのはハルロネだった。


「メイリアぁ! 魔法の反射を待ってるんだろうけど、こっちは魔法無しであんたを磨り潰してやるわぁ! 魔法による先手の痛みはこの際我慢してあげるぅ! だから大人しく潰されな……」


 ドゴオオオオオンッッ!!


「うおわっ! ……な、なんだぁ??」


「わぁ、派手ねぇ」


 メイリアの部隊からはまばゆい光が洪水の如く溢れ出て、それがハルロネの部隊を嘗め尽くすかの様に撫でていった。後に残ったのは生死不明の大量の兵が横たわっているのみとなっていた。


「な、なにが……」


「魔法を反射させない一番有効な方法は?」


「ああ!? そんなもん! 魔法兵を用いなければ良いだけだろうが!」


「その対策は?」


「ああ?? てめえらがどう動くかなんざ知る……か、あ? ……全部魔法兵の部隊、か?」


「正解」


 魔法兵はコストが高い。しかしながら攻撃力も全ユニット中最高。レジストも基本できない。反射させてもらえないなら減衰される事もない。ならいっそ全部魔法兵にしてしまえ、というのがコンセプトだった。


「ちっぃいい! てめぇら私に続けぇ!」


「「「「「おおおおおおお!!」」」」」


「私を前に勝手なことができると……!? あの娘は何処に?」


 ロドミナが自部隊に合流した辺りで、乙女様はロドミナの姿を見失ってしまった。おそらく姿を変えて、他の兵に紛れてしまったのだろう。


(『ああ、しまった。忘れてたわ。あの娘は逃がすわけにはいかないのに……』)

「全部隊、敵残存兵力に向かって突撃!」


「「「「「おおおおおおお!!」」」」」


 ロドミナの部隊はハルロネの部隊に向かって突き進み、ジュリエッタの部隊は魔法での攻撃やら騎兵の突撃やらで追撃する。魔法を撃ち切ったメイリアの部隊は次弾が打てず、成り行きを見守る以外にない。戦場の様相は混沌と化しつつあった。


「おい! ハルロネ! どこだ!」


「うっ、ぐ……」


「ああ、ここに居たか。おい、起きろ!」


「うあ……あっ!? ………………?」


「早く繋げ。暫く気を失ってたからやべえぞお前」


「あぁぁぁあぁ、ああっっ!」


 突然ハルロネの全身が赤く光り、レアム共和国の兵にも僅かながら赤く光り始める。


「行けるか?」


「ええ、ちょっとキツイけど、大丈夫……でも、ああああんの小娘ぇぇ! ぶち殺してやるわぁあああ!」


「おいおいハルロネよぉ、この状況見えてんのかぁ……? (ボソッ)」


「(ビクッ!)……ごめんなさい。引くわ」


「よしよし素直だなぁ。公女殿下様ぁ! 今回の所は私達の負けのようだぁ! 素直に認めよう! だがなぁ! 次はこうはいかないぜぇ!? 『全帰還水晶』発動!」


 キィィィィィイイイイインンッッ!


 眩しさも落ち着き、乙女様達が目を開けれるようになった時には、レアム共和国の誰一人として残っては居なかった。


「……あれが兵器の実力ね。今回侵入してきた全員が持ってると思って良いわね」


「……でも一人分しか使われませんでした」


「収穫が無かった訳ではないわ。今まではどれ位の人数を呼び戻せるのか不明だったもの」


 それが少なくとも2部隊分は可能であると分かった。結構な人数呼び戻せると分かっただけでも、乙女様はそんな事を考えていたのだった。



 ………

 ……

 …



 喪女さんを送り返したら、棺桶の中だったりするんだぜ?


(分けわかんない事聞かないで? もしかして『兵器』の話? ってか、もしあっちに送り返されたら、今頃骨壷よ)


 それもそうか。喪女骨壺。喪骨壷女。妖怪もこつばばぁ!


(ノーコンの分の壺も用意しなきゃ)


 あ!? 今のナシ!


(覆水盆に帰らず)


 のー!?

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