乙女ゲー転生、私が主役!? ……いやそれ、何かの間違いです!

まんどう
まんどう

戦略ゲーの課金兵器

公開日時: 2021年3月9日(火) 19:07
文字数:3,345


「ねえマル君、プライ商会は軍事関連の消品は取り扱ってないの?」


「ええ!? あ、ありますが! ……フローラさんはやっぱり武門の出だから?」


「違うわよ? 興味はあるってだけ。二人共良いかしら?」


「そう言う事ね……ええ」


「あーそうだな、おう良いぞ」


「?? ……えっとこちらが目録になります」


「どれどれ……。全然分からないね。マル君、この中で取り扱い注意な品ってどれかしら?」


「ああ? なんで取り扱い注意限定なんだ?」


「さっき課金アイテム見つけた時、マル君から全部注意受けたでしょ?」


「ええ、たしかにそうだったわね」


「えっと、まだ売りだしたばかりなんですが、『快癒の雨』というアイテムなんですが……」


「……ビンゴ♪」



 ………

 ……

 …



「なぁ……」


「えぇ……」


「エライコッチャ……」


 マル君から課金アイテムの説明を受けた三人は、そのアイテムの危険性が発覚したからか煤けていた。


<乙女ちゃんもよぉ>


(そうですか……)

「マル君。これ数揃えられるの?」


「難しいですね……。頑張ってはみますが……」


「他の国で競合する商会とかあったりする?」


「他の国ってことなら有り得ると思います」


「相手側より、より多くの商品をかき集めることはできる?」


「それはなんとも……。えっとフローラさん?」


「なぁに?」


「戦争……ですか?」


「可能性の問題ね」


「今しがた説明させて頂いたアイテムは、あまり保存の効かない部類かつ凄く高価なものです。戦争が起こってからでないと無駄になるかもしれません」


「大丈夫よ……多分」

(乙女様)


(『資金援助ね。任せておいて』)


「後でジュリエッタ様から4大家の方に諮ってもらうから。だから全力でかき集めて。できる?」


「4大っ……!? ががががっ、がんばりましゅ!」


「この小動物、出張ってきた家のでかさに噛んだわね」


「ひうう……」


「侍女ベルは黙ってて」


「変な名前つけんな!?」


「侍ベルがよかった?」


「どっかの替え歌に出てきそうな名前になっただと……っ!?」


 指ー等? まくまして、お前の世界の住人はそういうのが多いのか?


(ふろーらもしかしてを言い換えてみたのかそれ? やだ語感がぴったりぃ……じゃなくて、みんなどこか多少はネット文化に毒されてる部分はあると思うわよ。ネット文化が普通に生活に浸食してるっていうか)


 ふぅん……。


(ねぇ? 興味ないんならなんで聞いたし?)


 疑問ではあっても聞いてないし。


(くっ……なんてクソウザイ屁理屈を……っ!)

「まぁこれだけのことが分かっただけでも良しよ。っていうか、その男盗りSLGって負けた国はどうなるの?」


「なんでそんないかがわしい風に言い換え方したのかしら……」


「男横から掻っ攫うのはお前の方じゃんよ」


「盗ってねえっつってんだろうが。……ミエもなんか変な名前にしたほうが良い?」


「やめろ!?」「変な名前つけてる自覚があんのね!?」


「まぁまぁ。続編は始まったばかりだからこれからどうなるかなんて分かんないわ。それにプライ商会が向こうに無いのなら、一方的にアドバンテージ取れるかもしれないし」


「そこはこの黒のおかげだな。重畳重畳」


「え? 黒に略された?」


 ぷふっ。


(おい? なんで笑ったし?)


 あいや、重畳っつーからさ。中世に畳って似合わねーって思ってさ。


(へ? なんで畳?)


 時代劇とかでお偉いお殿さんが一段高い位置に座ってんじゃん。あれ、あの部分だけ畳を重ねてるらしいんだけど、畳って当時は凄ぇ高価だったらしい。それを重ねられる位に目出度い事だなぁ、重畳ってな具合だ。だからベル2号が洋装のまま、畳の上でふんぞり返ってるのが幻視できてな……。


「(ぶふっ!)」


「おいこら、黒。なんで笑った?」


「あいや……。そういえばあんた達って情報生命体憑いてんの?」


「は? 何だそら?」「知らないわ」


「あー、私達の魂? みたいなのをこちらの世界に連れてきた奴等ってのが居てね? 多くは連れてくるだけで力尽きたらしいの。で、私やジュリエッタ様に憑いてるのは元気っていうか、口が悪いっていうか……。んで、そいつがね? 重畳の意味を教えてくれたのよ」


「ああ、そんでか」「そうなの……?」


「ん? その反応、ミエは知ってたの?」


「意味の良く分かん単語があれば調べるし、言葉はあくまで言葉だろう? 別にあたしがここに畳を用意して重ねて座ってるわけじゃねえ」


「んまぁそうなんだけど……。洋装で畳重ねた上にふんぞり返ってる姿を想像しちゃったもんだから」


「「(ぶふっ)」」「 ? 」


「おいこら……」


「あら? 気にしないんじゃなかったのー?」


「だからって、笑われたいと思ってるわけじゃねえんだよ!?」


 おーい、二人が置いてけぼりだぞぉ。


「あ、ごめんねメイリア、それとマル君。私達にしか分からない話して。えっとね、今の話を例えると……」


「無視、すんじゃ、ねえ!」


「あ、侍ベル」


「その名前で固定化!?」


「そろそろご飯の時間だから」


「もふもーふ!(ごはんよー!)」


「きゅー!」


「あはは……カオスだわねぇ。私は慣れてないけど、二人は大丈夫? いつもこんななの?」


「ははは、はいっ! なんとか!」


「あはは……そうですね、大体こうです。だってフローラだもの」


「メイリアー。それどーゆーいみー?」



 ………

 ……

 …



 喪女さん達がどうでもいいネタでカオスってる一方、乙女サイドでは……。


「……という事らしいですわ」


「仮にその話が本当だとし……」


「あら? 嘘だと仰るの?」


「……いや。だとすれば次に起きる戦争は泥沼になるな」


 ジュリエッタのジト目に速攻自分の意見を覆すオレサマ王子! 惚れた弱みか!? タジタジである! ……哀れな。


「ざっと上げても『一瞬で軍を回復する』『瀕死の重傷を負ったものを本国に送り戻す』『定めた敵を本国へ送り返す』などなどって冗談キツイよなー」


「『戦場を豪雨を降らせる』なんて戦局をひっくり返すどころの話じゃないよ? 大災害だよ……。こんな物が一般の商会で取り扱われてる事自体も異常だね……」


 アーチボルドの嘆息に言葉を重ねるエリオット。更に青い顔したサイモンが続く。


「多少の制約があるにしても、ここまでの超常現象を起こす品が何故今になって流れてきたのでしょうか? そしてこれらを踏まえた戦術を組み立てるとなると……一度常識を捨て去り、新たに組み直すべきかもしれません」


「例え我等は戦場に直接赴きはしないにしても、残る身としては考え得る全ての事をやるしかない……のだな」


「思いつく限りの対策を練り、できる事をコツコツやっていくしかありませんわね。成果が見え辛い作業となりますが、頑張りましょう。

 提案なのですが、一度武門の方々にこの様な異常な品が出回っている事を公表し、意見を募ってみては?」


 グレイスも苦悶の表情を浮かべながら唇を噛み、アメリアは次善と思しき策を提案する。


「僭越ながら……。国の有事ともなれば最高武力にも出動を要請すべきではないでしょうか?」


「『暁の破壊神』か……。最近とみに迷惑をよくかけている気がするが、それはあくまで身内での話。詫びを入れに行った時も彼女も笑っていた。しかし武力を頼りにする日が来ることになろうとは……」


 シンシアが珍しく会議に口を挟む。要請を出すとすればディレク皇子の出番だろうか? そして暁の破壊神で彼女なんていうからには、あの人しか居ないよねっ!


「伯爵にはできる限りのフォローをしておくとしよう。他に注意すべき点はあるかい?」


「他国にもこの様な品が流れていないか探りを入れておくべきかと。しかしそのようなイカれた性能の、いわば兵器とも呼べるものをいかにも持ってます、とは言わないでしょうね。できれば囲い込みたいでしょうから。何より問題になるのは、数の少ないこの物資を融通しあう裏取引があった場合、でしょうね」


「そのことにつきましては、ゴルドマン家による情報網を最大限に駆使して全ての国の情報を、裏からでも集めさせますわ」


「あい分かった。では皆の奮闘を期待する」


 ディレク皇子の締めの言葉に、一同が頷きで持って返す。


「それではもし何か動きがありましたら、また招集をかけますわね」

(『結局あの子達の力を借りざるを得ないのよねぇ』)


<乙女ちゃんガンバ〜>


 がんば〜。


(『はいはい……。研究も進めなきゃ……』)


<……あ、そっちは程々に>


 あれ? 本気で身の危険か?


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