カセットテープのような恋をして…

-笑わない王子×泣き虫僕っ子-
翔(カケル)
翔(カケル)

B-48

公開日時: 2022年6月13日(月) 12:38
文字数:1,239

 大先生が涙を流した瞬間…紡もそれを見逃してはいなかったようで、子どもたちと共に駆けつけてきたんだ…。


「だ、大先生?!大丈夫?!…り、凌空?何があったの…?」


 俺はなんと答えていいのか、周りにいる子どもたちには刺激が強すぎる気がした…。

 まだこの子達には…こんな苦しい現実…知らない方がいい…そう考えてしまって、どうしよう、俺はまた言葉が見つからなくなった…。


「…紡?大丈夫よ?ちょっと思い出し泣き!」


 と必死に涙を拭って…笑ってみせる大先生…俺、まずいこと…言っちゃったのかもしれない…。


 そんな事を思っていたけれど…大先生は「…ご飯を食べたら…2人で面談室に来てもらえるかしら…?」と俺らに投げかけてきたんだ…。


 子どもたちのいない所でゆっくり話がしたい…そんな風に感じ取れて…


「…大先生…分かったよ…?…そうだ!丁度ご飯も出来たし、みんなで食べよ?凌空も運ぶの手伝ってくれる??」


 紡も精一杯、明るく周りに振る舞っていて俺もその言葉と共に、出来る限り子どもたちに悟られないように振舞ってみたんだ…。


 ◇ ◇


 ―昼ご飯


「わぁ〜〜〜〜いっ!!むぐご飯っ!☆」

「どれから食べようかなぁあぁ!!!☆」


 食堂には小さい子から思春期を迎えている男の子や女の子、年齢層幅広く集まって紡のご飯に手をつけていく…。


「……いつ食っても…紡のご飯はうまいよ」とちょっとツンとした中学生ぐらいの男の子に


「…紡ぅ!!!私の旦那さんになって〜っ!」なんて言う深結みたいな高校生ぐらいの女の子もいて…


 さっきまでのしんみりとしていた空気がいつの間にか、笑いの絶えない食卓に変わっていたんだ…。


 ある女の子が「凌空さんと紡の関係は?」なんて聞いてきて、ちょっと俺はドキッとした。


「…大学の大切な先輩だよ?」


 恋人だよ?と公には言えない。それでも大切なをつけて紡は、俺をみんなに紹介してくれたんだ…。


「…イケメンすぎんだろ…」

「なんかドラマとかに出てきそうだしね~♪」

「サインとかないんですか?♪」


 なんて子供たちが言うもんで…聞けば聞くほど、とにかく身体がむず痒がったのに…


「…凌空先輩は、歌が凄く上手なんだ!」


「ち、ちょっ!紡…!」


 紡の悪気も無い一言に…

「へぇっ!!!♪聴いてみたいなぁ~☆」

「私も私もー!!!」

 と女の子たちは返してくれたんだが…


 逆にある男の子たちが…

「…顔と歌は別じゃねぇの?」

「フンっ、どーせ顔だけだろう?」


 ほう…言ってくれるじゃねぇか… 俺は子ども相手に熱くなってしまったったんだ…はぁ、ほんっと大人げない…。


「…なら…なんか歌ってやろうか?」


 俺はどーせ顔だけと言った男の子にリクエストくれないか?と声をかけてみたんだ。


「…そうだな…じゃあ、コブクロの…Million Films…が聴いてみたい…///」


(…へぇ、いい曲聴くじゃんか…!)


 俺は、その場で立ち上がり一緒に食事を摂っていた大先生に「大先生?いいですか?」と確認し「もちろんよ?♪」と返答を貰って…


 ラストのサビ前から…みんなの前で披露してあげたんだ…。

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