(…ふぅ…♪)
歌い終わった時、みんな箸を止めて…じっと俺を見つめてくれていたようで…
男の子たちが
「か、かっけぇええええ!!!!」
「まじか!ま、マジでこの人やばいって!!」
さっきまでの態度とは一変、俺に大きな拍手を送ってくれて…周りのみんなも
「…これ、惚れちゃうって!」
「やばいやばい!!ライブみたい!」
「え?!これ大学で聴けるの?!」
拍手とともに盛り上がってくれて…
小さな子どもたちまで
「りっきゅん!すご〜い!!☆」
「りっきゅん!違うお歌、歌って〜!♪」
(…り、りっきゅん…?!!?///)
「…あはは!多分子どもたち、凌空くんって言いづらくて、りっきゅんになったんだね!」
なんて紡も優しく俺に微笑んでくれた…。
この光景を見た時…とにかく、嬉しかったんだ…俺、やっぱり…歌う事が好きなんだなっ…。
和やかで清々しいお昼ご飯の時間が流れて行ったけれど…
この後…面談室に行くと思うと…やっぱり気持ちは落ち着いたもんじゃなかったんだ…。
◇ ◇
―食後
俺たちは、みんなで食後の片付けをして、美味しいご飯をありがとうと紡にお礼をしたんだ。
「…うへへぇっ…照れるなぁ…また、作りに来るからね?///」
紡の声に子供たちの笑みも、はち切れんばかりだった。
片付けも落ち着き、俺たちは大先生の待つ面談室へ足を運ぶ…ドアを開ける前…俺は、唾をゴクッと飲みこみ…そっと扉を開けたんだ…。
「失礼します…」
「あら!2人とも待ってたわよ!♪…そ、そんな固くならないで…!汗」
大先生は優しく振舞ってくれるけど、紡は大先生の涙の理由を知らなくて…どこか心配そうな顔をしているし…
俺は、言ってはいけなかったのかもしれない真実を大先生に伝えてしまった罪悪感に苛まれていたわけで…
どうも…空気がピリッとしている感じがしたんだ…。
俺と紡は、イスに隣同士で座って…テーブル越しにいる大先生に目を向けた…。
そして大先生は、優しく俺たちを包み込むように…そっと口を開いてくれたんだ…。
「…さっきは泣いてしまってごめんなさいね…?」
「…い、いえっ、俺の方こそ…ごめんなさい…」
「…凌空くんが謝ることじゃないわ?…夏希ちゃんの真実を知れて嬉しかった反面…やっぱり人の死は辛いものよね…」
「…っ…」
「それと…凌空くん?きっと私にまだ伝えたいこと…あったのよね?」
「…っ…!」
「…り、凌空??…なんのこと…?」
紡は、ご飯を作っていたから話の内容を知らない…。
俺はその分、紡がなきゃいけない言葉を紡いだんだ…。
「…大先生のお話を聞いた時に…父さんと母さんの事を考えてみたんです…きっと、2人とも…本当は俺たちのことを紹介したかったんじゃないかな…って…」
「…り、凌空…」
「…大先生…俺たちは、愛し合っている他に…兄弟なんです…」
俺から発せられた真実に、大先生は驚くこともせず…
「そうだったのね…さっきの話からやっと繋がったわね…そして、凌空くんが大輔くんに似ていることも…」
「…はい…俺は八神で、紡が松本…2人の間に生まれた紛れもない兄弟だったんです…」
同性愛にして、兄弟…
こんな現実があってもいいのだろうか…
心のどこかで、俺も紡も引っかかっていた…
それでも大先生は…
「…でも、それでも2人は、今幸せ?」
「…えっ…」「…えっ…」
大先生はニコッとしながら俺たちの顔を見て「…兄弟であったとしても、どんな形であっても…今、2人は幸せ?」
もう一度…同じ質問を投げかけてきたんだ…。
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