「教授、何ですか、その古い手紙?」
「ああ、明治時代の挿絵画家と歴史家の間でやりとりされた手紙だよ。長年、この件を調べてきて、ようやく子孫の家に残されていた事が判ったんだよ」
「へっ?」
「『みずら』って有るだろ? ほら、日本神話関係の絵や弥生時代の想像図で、男がやってる、あの独特の髪型……」
「ああ、あれですか……」
「実は、『みずら』と云う髪型は古事記や日本書紀には名前だけは度々出て来るが、どんな髪型だったのかの解釈は、江戸時代まで一定してなかったんだよ」
「へっ……? ああ、そう言われてみれば、変な髪型ですよね……」
「で、今の日本人がイメージする『みずら』のイメージそのままの絵を最初に描いたのが、この挿絵画家だったらしいんだが……ん? おい……何だ、こりゃ?」
「えっ? 何か変な事が書かれてたんですか?」
「『すいません、耳を写実的に描くのが面倒くさかったので、耳が隠れるような髪型にしました』だとさ……」
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