「…実は、キミのお父さんから、昨日連絡があってね」
「連絡??」
「堂島君を、三神さんと同じクラスに配属して欲しいと」
「はああ?」
「本当に何も聞かされていないんだね…。これは言っていいのかどうかわからないが」
校長は神妙な面持ちになり、ゴクッと息を呑んだ。
「お父さんの元に、脅迫状が届いたそうで…」
脅迫…状…?
なんの話、それ…
私の親父は元総理大臣で、政界の大物と呼ばれている。
今は“ キングメーカー[※大統領や首相など最高権力者の選出や退陣に裏方で大きな影響力を持つ人物のこと] “と呼ばれる第17-20代の財務大臣に就任していて、家に帰ってくる時間はほとんどない。
母さんとは疎遠状態で、家族のことなんてほったらかしだった。
「三神さんを誘拐する。多分大丈夫だとは思うんだが、自民党が運営するホームページに、誘拐を仄めかすメールが届いたそうだ」
ホームページに…?
なんでそんな回りくどいことを…
親父に敵が多いことは知っていた。
元総理大臣というだけでなく、今や政界の総理大臣を裏から掌握するキングメーカーだ。
まともな人間じゃ、そんな職にはつけない。
私は親父を「父親」だと思ったことはないし、立派な人間だと思ったこともない。
大体、何人の子供がいると思ってんの?
私は親父の隠し子の1人だった。
母さんだって、親父とは20個以上も歳が離れてる。
それだけでも十分やばいっしょ。
人格を否定するわけじゃないが、まともな“家庭”じゃないことは、誰の目からも明らかだった。
「…で?」
「…その、彼は護衛だそうだ。いわゆる、“ボディーガード”というやつで」
「ボディーガード!?」
「これは内々の話にはしてくれないか?周りの生徒が困惑しても困る」
私は?
…絶賛困惑中なんですけど
ボディーガードってなんだよ。
誘拐なんて起こるわけないじゃん。
ホームページでしょ?
まともな誘拐犯だったら、誘拐した後にメッセージを送るでしょ
「とにかく、そういうことだ」
「…はあ」
「恐らく、できるだけ三神さんの近くにいたいんだろう。それで席を…」
なるほど…ね
わかったようなわからないような。
まあ、アイツがなんであんなこと言ってたのかはわかったよ。
…でも
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