「アズサ。少しは胸元隠したら?純情な男子どもにはちょっと過激すぎるよ」
「これが1番楽なんだよ。大体今年の夏は暑すぎ。ちゃんとクーラー効いてんのこれ!?」
「そんな格好じゃ、またヨッシーに怒られるよ?」
「言わしときゃいいんだって、あんなヤツ。こんな三流高校で風紀もクソもあったもんか」
「うわッ、言うねぇ」
8月。
夏休みが明けて、もう1週間が経った。
今年の夏は猛暑っていうかほぼサウナ状態で、勉強なんて起こる気にもなれなかった。
そもそも高校に入ったのも仕方なしっていうか、兄貴がうるさくってさ?
「そうそう。そういえば今日転校生が来るんだってさ」
「転校生?」
「噂によると超イケメンらしいよ?アメリカから帰国してきたんだって」
「アメリカ!?」
「噂によるとね?先生が言ってたんだよ」
「へええ」
アメリカから帰国した…って、どういう状況なんだろう。
こんな田舎の三流高校にわざわざ転校?
絶対ヤバいヤツでしょ。
「どうする?好みのタイプだったら」
「私の好みは30代のイケおじだから」
「イケおじ!?30って言ったら10個も上じゃん」
「それがいいんだよ」
「どこらへんが??芸能人で言ったら誰?」
「…んー、誰だろう。あんまりテレビ見ないしなぁ」
「役所広司とかどうよ」
「上すぎ。あのCM知らない?ドコモの新CMで出てる人」
「えー、誰かいたっけ…」
「思い出した!吉田鋼太郎だ」
「同じくらいじゃん…」
「そう?ちょっとコメディチックっていうか、面白い人が好きなんだよね」
「ようはイケメンってことでしょ?」
「イケメンはイケメンでも、種類があるでしょ」
「現実の30代はねぇ…。大体、本当にハイスペックのイケおじだったら、すでに結婚してるって」
「それね。まあ別にバツイチでも問題ないけどね」
「その思考はヤバいよ。あんたまだ17なんだからさ」
もう“17”の間違いでしょ。
高校生活も、もう2年目を迎えていた。
時間が経つのはあっという間だ。
振り返れば、入学式がつい先日のことだったように思う。
小学中学と大都会で過ごしてきて、高校で県外にやってきた。
東京の進学校の受験を受けるつもりだった。
元々は。
親父には大反対を喰らったよ。
一流の高校に行きなさいって、四六時中やかましくて。
家族が嫌いになって、東京を出た。
どこか遠いところに行きたいと思ってた。
ま、結果九州に来たわけだけど、おかげで何もないっていうか、大都会の空気が、ほんの少し恋しいっていうかさ?
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