「す、凄い……ニカナから凄まじいチカラが全身に流れてきてる……それに、この魔法は……!?」
虹色の輝きを放つニカナにより信じられないほどのチカラを得ることができ、それと同時にある魔法のイメージも頭の中へ流れ込む。
それは今、最も欲していた魔法であり、まだ見ぬ苦しむ人々を救済できる魔法でもあった。
「これで解呪ができるはずだ……頼む、呪縛を消し去ってくれ! 禊祓!」
魔法を唱えた瞬間に全身が虹色に輝き出し、何をしても解けなかった呪縛が溶けるように解けていき、身体も枷が外れたかのように軽くなる。
「よしっ、呪縛が解けて身体も軽くなった! 今すぐ行くから待っててくれ、モモ!」
軽くなった身体を前方に倒れるように傾け、その勢いを利用して一気にモモの元へ駆け出すと、俺を警戒したアヌビシオはモモにトドメを刺すことなく後方へ下がり距離を取った。
恐らく、アヌビシオは突然輝き出した俺を警戒してモモにトドメを刺せず、呪縛を解かれたことを重く見て距離を取ったのだと思われる。
一方の俺は、身体が軽くなったおかげかすぐにモモの元へ到着でき、身体の状態を確認する間もつくらずモモの頸部に左手で触れて治癒魔法を。
「モモ、今すぐ回復するからな! メガヒール!」
魔法を唱えてすぐにモモの頸部は元に戻りホッと一安心したのだが、肝心な生命力の回復がされていない。
それでも顔を強張らせて「回復しろ!」と心の中で叫びながら治癒魔法を続けるが、生命力が回復する兆しすら見られないため、額から嫌な汗が流れ出す。
「そ、そんな……頼むから回復してくれ! ……!? 殺気!? くそっ、このタイミングで!」
突如殺気を感じたので咄嗟にモモを抱いて後ろへ跳ぶと、俺達が元いた場所にアヌビシオが突進しており、それは回復中の隙を狙っての攻撃であった。
今まで冷静に戦況を見ていたはずのアヌビシオは呪縛を解かれてから攻撃的になり、それほどまでに俺を脅威と見做したのだろう。
「モモを抱いたままじゃ戦えない! なら、一体どうすれば……!?」
アヌビシオに目を向けながら戦う術を考えていると、後方からあの門兵の声が耳に入ってきた。
「おい、キュロス! その子猿は俺が守ってやる!」
「!? す、スレッグさん!? 何故あなたがここに……!?」
「馬鹿野郎! 今はそれどころじゃないだろ! いいから早くその子猿を俺に渡せ!」
突然のことに驚いたが、スレッグの言葉に甘えてモモを預けようとしたその時、アヌビシオから「スゥゥゥーッ……」と空気を吸い込む音が聞こえてくる。
「マズい! またあの咆哮がくる!」
そう声を上げつつ、急いでモモをスレッグに預けて即座に魔法を唱えた。
「信じてるぞ! 幽世・倍域!」
通常の幽世は自身を中心に半径1mの満月型結界を張るのだが、今回唱えた魔法は半径2mと通常の倍となっているため、スレッグも結界内に入れることが可能となったのだ。
しかし、果たして結界で呪縛の咆哮を防げるのか? という疑問を持つのは俺だけではないはずで、現にスレッグは不安そうに俺を窺う。
だがそれでも、幽世なら大丈夫だと心から信じている。
何故なら、ニカナが「大丈夫だ、信じろ」そう言っているのだから……
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