「……報告確認の結果は問題なしね。因みに昇級の査定外になってしまうけど、何か質問はあるかしら?」
「いえ、特にありません」
「そう……では、これが報酬になるわ」
「!? おぉ……」
目の前に出された報酬は今までに見たことがないほどの大金であり、思わず声が出てしまった。
「あ、ありがとうございます!」
「ふふっ、なんで私に礼を言うのよ」
嬉しさのあまりついエリザに礼を述べると、エリザは拒むことなく笑顔を見せる。
その笑顔に釣られ、俺まで笑顔に。
「ジィーッ!」
誰かは分からないが、急に1人の視線が強まる。
その視線の主は気になるが、今はこの時間を優先したい。
しかしそうもいかず、背後から俺を呼ぶ声がまた聞こえてきた。
「キュロス? もう終わったのでしょう? 早くこちらに来なさいよ」
この声はセリーヌの声だ。
そして先程の強い視線の主もきっと……
「そ、それじゃあエリザさん、これで失礼します……」
「え、えぇ、お疲れ様……」
良い雰囲気から一変して微妙な雰囲気となり、互いに恥ずかしさと気不味さを感じながら俺はその場から離れた。
「た、ただいま……」
「おかえりなさい。遅かったわね? それより、いつの間にエリザと仲良くなったの?」
「うっ、ま、まぁ、色々とありまして……」
「ふーん、色々とねぇ……」
「……」
(こ、これはかなりマズいな……凄く疑いの目を向けられているぞ……)
セリーヌの顔色を窺っていると、視界の端にニヤニヤとするミカゲの余裕顔が映る。
(な、殴りてぇ……!)
恐らく、俺とエリザが良い雰囲気になったので好機と捉えたのだろう。
しかし、そうは問屋が卸さない。
先ずはセリーヌの機嫌を取るために、モモと2人で行く予定のスイーツ店に誘ってみようかと。
嗚呼、どうか上手くいきますように……
「せ、セリーヌ……も、もし良かったら、俺とすす、スイーツでも食べに行かないか?」
「えっ? 急にどうしたの? ……あっ、もしかして、なんか企んでない?」
「うっ……な、何も企んでは……」
「……はぁ、ご機嫌取りを狙ったわけね?」
「はい……」
ダメだ、全て見透かされている。
このままではミカゲに隙を与えてしまうことになるが、このあとの策は無い。
スイーツ作戦が失敗に終わり、次の策をこれから考えようとしたその時、ムツコがひょっこりと姿を現して口を開く。
「私さんは行きたいです! 一緒に連れて行って下さいです!」
まさかムツコが食いつくとは思わず、一瞬だけ悩むがすぐに返答。
「いいですよ? 一緒に行きましょう!」
折角、女性が行きたいと言ったのだから、連れて行かなければ男ではないだろう。
それに例の銀魔狼のことも知りたいし。
「でも、俺なんかと一緒でいいんですか?」
「はいです! キュロス様とのデート、楽しみです!」
「えっ!? これってデートになるの!?」
「えっ? ならないです? 2人きりで出掛けるならデートになるですよ?」
「た、確かに……」
あっさりと受け入れてしまったが、確かに間違いではない。
だがその瞬間、セリーヌから殺気にも似た気配を感じ、背筋に悪寒が走るのであった……
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