「ねぇ、これからどこへ向かう予定なの?」
セリーヌからの唐突な問い掛けに動揺するが、確かに当てもなく歩くわけにもいかず、本音を言えば行きたくはないが素直に答えた。
「え、えっと……ぼ、冒険者ギルド……かな……」
「えっ!? そうなの!? 丁度さ、私も向かうところだったの! じゃあ、このまま一緒に行こ?」
「あ、あぁ、そうだな……うん、そうしよう!」
「えへへっ、同じことを考えてたなんて……なんだか嬉しいなぁ」
(あぁ、セリーヌの笑顔を見ると癒されるなぁ……)
セリーヌとの何気無い会話に僅かだが幸せを感じた気がする。
でも今の俺達は恋人ではなく、ごく普通の幼馴染でただの冒険者仲間という関係なので、俺が幸せを感じるのはおかしな話なのもしれない。
(まぁ、セリーヌと5年も恋人でいられた時点で充分おかしな話なんだけどな……)
そんなことを考える間にセリーヌから質問が。
「ねぇ、その右肩に乗せてるのって……」
「あぁ、モモのこと? ピンクモンキーのメスでモモっていうんだ。可愛いだろ?」
「えぇ! 物凄く可愛いわ! モモちゃん、こっちにおいで?」
「キキッ!」
セリーヌが右腕を曲げながら差し出すと、モモは躊躇なく差し出された腕から肩へと登る。
(!? モモがセリーヌの元へ向かった!?)
その光景を目の当たりにして思わず吃驚。
何故なら、ピンクモンキーは人の感情や欲望にとても敏感であり、邪な考えを持つ者には一切近寄らないからである。
つまり、セリーヌは邪な考えなど一切持っていないという結論に至るわけだ。
(やっぱり、あの瞬間に見たセリーヌの表情は見間違いなのか……? いや、まだ分からない……でも、モモがあんなに懐くほどだし……)
昨夜の件で人からの目を異常なほど気にするようになり、どうしても疑わずにはいられない。
だがそれでも心から信じたい気持ちが上回り、セリーヌを疑っていたことに対して恥じる。
「セリーヌ……勝手に疑っていて、ごめん……」
「えっ? 何が? 私、何か疑われていたの?」
「えっ!?」
(えっ!? 何故、疑っていたことを……もしかして、思っていたことを口に出してた!?)
どうやら無意識に呟いていたようで、それを思うと急に心苦しくなってしまい、昨夜の件も含めて疑っていたことを正直に告白することに……
「なるほど、そういうわけなのね……そっか、それなら仕方ないかも……」
「ゔっ!?」
(ゔっ!? 胸が痛い……あの明るいセリーヌが、俺なんかのためにこれほど落ち込むなんて……)
セリーヌの落ち込む姿を見た瞬間、俺の胸は張り裂けそうなほどの痛みを感じた。
しかしそれと同時に、ふと1つの疑問が浮かび上がる。
それは「何故、俺と破局する道を選んだのか」という疑問である。
確かに俺は、セリーヌにとって相応しい恋人ではないのかもしれないが、特に喧嘩や浮気をしたわけでもない。なのに、何故……
(あぁ、死ぬほど怖い……でも……)
セリーヌに今、その疑問の答えを聞こうと思う。
たとえその答えにより深く傷つき、立ち直れなくなったとしても……
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