「ほらな? だから言っただろ? 大変なことになるってよ!」
俺の隣に来て呟く男とはミカゲのことであり、そういえば勝負後にそのような話をされた気が。
すると、突然ミカゲが質問を。
「お前さぁ、セリーヌのどこに惚れたんだ?」
「えっ!? な、なんだよいきなり……うーん、急にどこと言われても……」
俺が返答に困っていると、続けてミカゲが話し出す。
「なんだよお前、言えねぇのかよ! 俺なんて沢山でもすぐに言えるぜ? 例えばーー」
空色の長く艶やかな髪、くっきり二重で芯のある黒色の瞳、鴇色で潤いのある唇、筋肉と脂肪のバランスが絶妙な体躯、Cカップという丁度良い大きさで張りのある胸部、安産型なのに引き締まった臀部、レイピアを振るうときの力強くも華麗な動作、弱者を決して見捨てはしない優しく綺麗な心、不正を嫌いながらも試すような嘘を吐く謎な言動やそれに伴う行動、それから……
「分かった! 分かったから!」
他にも色々と話したがっていたが、流石にこれ以上は勘弁してくれと話を中断。
ただ、共感できる箇所が多々あったので、そこに気づいたことには拍手を送ろうと思う。
まぁ、実際には拍手などしないが。
「んっだよ! まだ言い足りねぇってのによ!」
拗ねたミカゲは不機嫌になり、そっぽを向く。
機嫌直しのため、ミカゲに話し掛けようとした瞬間、顔に何かが張り付き、急に目の前が真っ暗になった。
「おわっ、なんだ!? 闇属性魔法か!?」
吃驚した俺は、慌てて張り付いた何かを両手で剥がしに掛かる。だが……
「ギギッ!」
「ん? この鳴き声は……モモ!?」
俺の顔に覆い被さるように張り付いたのはピンクモンキーのモモであった。
しかし何故かモモは怒っており、鳴き声を荒らげている。
「あら、モモちゃん怒ってるじゃない?」
そう言いながら近づいてくるセリーヌ。
何か知っているのだろうか? 取り敢えず聞いてみるか。
「あぁ、でも何故怒ってるんだろうな?」
「えっ、うそ!? 理由が分からないの!?」
「!? せ、セリーヌは理由が分かるのか!?」
「はぁ……呆れた……」
「??」
モモが怒った理由だけではなく、セリーヌが呆れた理由すら分からず悩み始める。
しかし、正直言うとこのテの感情には疎く、セリーヌからは鈍感キュロスと言われたことがあるほどだ。
(……ダメだ、やっぱり分からない……)
悩みに悩むなか、モモが怒りながら話し掛けてくる。
「ギギッギギッ!」
「おいてくな? ……!! そうか、そういうわけか! モモ、置いて行ってごめん!」
「ギッ!」
何やらモモは、俺に置いて行かれたことに腹を立てているようで、謝りはしたが許してもらえず。
どうすれば許してもらえるかを考え始めると、モモからある提案が。
「ギギッ、ギッギギッ!」
「もも、たべたい? ……ん? モモは桃が食べたいのか?」
「ギッ!」
「そうか……じゃあ、報告確認が終わったら桃を食べに行くか!」
「キッ!」
(あぁ、良かった……どうにかモモの機嫌を直せたようだな……ん?)
モモの機嫌を直せ安堵していると、セリーヌや集まる冒険者達が目を丸くして俺を見ていることに気づく。
(……!! あ、しまった……)
この時、自分が仕出かしていたことに漸く気付いたのであった……
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