「お、おい!? 光が消えたぞ!?」
スレッグの声を聞いてすぐにモモの様子を窺うと、未だに意識はないがしっかりと呼吸をしており、瀕死の状態からは脱しているように見える。
(もしかして、さっきの桃色に放つ光が関係しているのだろうか……?)
そう勘繰りながら右手でモモの頭を撫でると、急に頭の中に多数の人影がイメージとして流れ込み、それは喚虎に惨殺された56匹のピンクモンキー達の姿であった。
この56匹のピンクモンキー達は亡くなったあとに霊魂となり、唯一の生き残りであるモモを守るために体内へ入り込んだらしく、56匹全てのチカラを振り絞って瀕死のモモを回復させたようだ。
するとその時、モモの身体から桃色透明の靄が浮かび上がり、その靄の中には56匹のピンクモンキー達が映し出されて一言『キキキッキーッ!』と皆声を合わせて俺に伝えると、笑顔のまま天へと昇っていった……
スレッグはあり得ないものを見たと狼狽え出して、一方の俺は己が取った行動が間違いではないと証明されたので、嬉しさのあまりつい笑顔を零してしまう。
そのあと、少し落ち着きを取り戻したスレッグが俺にこう問い掛ける。
「そ、そういえば、さっきの猿達はなんて言ったんだろうな?」
「……さぁ、一体なんでしょうね?」
本当は理解していたが俺への言葉であったために敢えて教えず、はぐらかしながらモモへ治癒魔法を掛ける。
「今度は効いてくれよ? メガヒール!」
魔法を唱えると瀕死の状態から脱してあるので正常に生命力が回復されていき、時間は要するが問題なく快復へと向かうだろう。
ただ、以前にも思ったのだが、もし俺がエクストラヒールを唱えられたなら初めの治療行為で既に回復できたのにと。
何故か治癒魔法に関する閃きはなく、心の中でニカナに問うても何も答えてはくれない。
「はぁ、仕方ないよな……そうだ! スタンピードを乗り切ったらあの人に礼も兼ねて会いに行こう!」
幾つかの魔法を見せてもらえたおかげで今もこうして生きていられることを思い出して、あの人物へ会いに行こうと決心。
まぁ、この脅威から街を守れたらの話だが……
スレッグを放置してそんな考え事をしていると、モモの生命力が快復に至り、あとは戦闘や治療行為により消費した体力の自然回復を待つのみとなる。
治癒魔法では消費した体力や失われた血液までは回復できず、寧ろ体力が足りなければ生命力の回復もまともにできなくなり、最悪は治癒行為中に亡くなることすらあり得るのだ。
そのことを知らずに「なんで治療をやめるんだ!?」と文句を言う輩もいるとかいないとか。
「お、おい! なんで治療をやめるんだ!? ま、まさか、子猿を見殺しにする気か!?」
どうやらここにもいたようだな。
ただこの場合は状況が違い、治療行為をやめた理由は治療が完了したからであって見殺しにするわけではない。
恐らく、あまり状況を見ずに判断してしまっているのだろう。
(もう少し状況を見てから判断してほしいな……うーん、スレッグさんのこういうところはまだ受け入れ難い……)
そう思いながらもスレッグにきちんと説明せねばと考えて、軽い憂鬱と煩わしさを伴いながら説明を始めるのであった……
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