「……なぁ、セリーヌ?」
「うん? なに?」
俺の呼び掛けに振り向くセリーヌ。
対面したセリーヌの表情を観察する俺。
(……何か企んでいるのかと思ったけど、特に怪しいところは無い……俺の見間違いか……?)
観察中の俺にセリーヌが問い掛ける。
「えっ、なに? 私の顔に何か付いてる?」
「い、いや、何も付いてないよ……」
「じゃあ、なんで私の顔をジッと見てたの?」
「そ、それは、セリーヌだなぁと思って……」
「プッ、何よそれ? 相変わらず変なんだからぁ」
笑いながら再び前方へ振り向くセリーヌ。
どうにか誤魔化し苦笑いをする俺。
そして前方を見ると、西門の目の前まで来ていたことに気づく。
(うぅ、ダメだ……怖い……)
俺が恐怖心から足を止めるとそれに気づいたセリーヌも足を止め、一言。
「私がいるから大丈夫! ほらっ、手を繋いで行こ!」
そう言うとセリーヌは、俺の左手を手に取り西門の中へと進み出す。
(……セリーヌ……やっぱり格好良いなぁ……)
恐怖心が和らぎ、昔からセリーヌに憧れを抱いていることを思い出した。
「お疲れ様です」
「お、お疲れ様でス!」
「おお、お疲れ様でス!」
セリーヌが2人の門兵達に挨拶するとその門兵達はセリーヌのファンらしく、とても緊張している様子で挨拶を返す。
(セリーヌはAランク冒険者のうえ、ギルドの広告塔でもあるからファンがいるのも当然だよな……)
同時期に冒険者となった俺達だが1ヶ月後には既に差が付き始めていた。
どうにか追いつこうとしたが、差はどんどん広がるばかり……まさしく、雲泥の差というやつだ。
(セリーヌは雲で俺は泥か……今の俺にはピッタリだな……)
落ち込みながらも門兵達にお辞儀をする。
しかし門兵達からの返しはなく、それどころか門兵達は俺に怪訝な目を向けながら陰口を叩く。
「なぁ、セリーヌさんはなんであんな奴と一緒にいるんだ?」
「さぁ? 荷物持ちかなんかだろ?」
「だよな? じゃなきゃあんな落ちこぼれとは一緒にいたくないよな?」
「あぁ、あんな無能と一緒は勘弁だもんな!」
「「あはははっ!」」
笑いながら見下してくる門兵達に俺は俯き気づかぬフリをし、悔しさに耐えるため歯を食いしばり、密かに右手の拳を握り締める。
そして、まさか20歳にも満たない若者にまで見下されるとは思っておらず、悔しさとそれ以上の惨めさに苛まれては更に落ち込んでしまう。
(あぁ、こんなことなら来なければよかった……もう耐えられない……引き返そう……)
来たことに後悔して門外へ引き返そうとしたその時、笑い見下す門兵達に向けてセリーヌが口を開く。
「……は? あんた達にキュロスの何が分かるの? はぁ……キュロスのことを何も分かってないくせに勝手なことを言うな!!」
「「ひぇっっっ!?」」
突如セリーヌに怒鳴られて、唖然とする門兵達。
俺は胸が熱くなり、涙ぐむが流さぬよう頑張って堪えた。
「……セリーヌ……ありがとう……」
興奮するセリーヌに向けて感謝の言葉を述べると、セリーヌは優しく微笑み返答した。
「だって、私が悔しかったんだもん! ……ねぇ、それより早く行こ?」
急ぐセリーヌに手を引っ張られながらも西門を通過し、そして街の中へと共に歩むのであった……
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