「さぁ、行くわよ! 纏雷!」
魔法を唱えた直後にイズナは落雷に打たれ、全身に雷電を纏う。
その姿はまるで、雷との一体化である。
『出たぁーっ! 纏雷だわ! やっちまえーっ!』
野次馬達が騒ぎ出す。
それほどまでに信頼性の高い魔法なのだろう。
だが、それよりも今は気掛かりなことが。
「なっ!? そ、その魔法は!?」
纏雷を見た瞬間、驚きから油断をしてしまう。
そしてその一瞬の油断をイズナは見逃さず、早急に攻撃を仕掛けてきた。
「よしっ、チャンス!」
そう声を上げると、再びイズナは一瞬でその場から消えて俺の背後へ回り込む。
しかし、油断しつつも瞬時にそれを読んで振り返る。
だが更にイズナは一瞬で消えて、その後も各所に現れては消えてを繰り返す。
すると次第には姿が完全に見えなくなり、唯一見えるのは雷の残像のみ。
「……なるほど、確かに速い……でも!」
常人の瞳では全く捉えられないイズナの姿も、ニカナを持つ俺の瞳ならば捉えられる。
そのことを理解して迎撃することに。
「さぁ、これで終わりよ!」
雷電を纏いながらの高速移動中、双剣にも雷電を纏わせて死角からの十字斬り……
「……ココだ!」
動きを先読みして、イズナのいるだろう死角へ向けて優しく掌底を打つ。
「なんでーー」
何かを言い放つ前に掌底が胸部に直撃すると、イズナは後方へと吹き飛んだ。
(しまった、女性の胸に……A……いや、Bか?)
「ジィーッ……」
俺の思考を読んだかの如く、セリーヌが俺を睨みつける。
すると、その視線に気づいた俺は気付かぬフリを。
「……ん? なっ!?」
目覚めたトサックが丁度こちらへ歩いており、そのトサックにイズナが背面で突撃する形となった。
「どわっ!?」
「きゃっ!?」
トサックはイズナとの衝突後に再度吹き飛び地面を転がり、一方でイズナは衝突後その場に倒れて地に伏せる。
「おぉぉ……い、いてぇぇ……」
トサックは仰向けとなり悶絶。
「うぅぅ……もう、無理だわ……」
イズナは胸と背中のダメージによって、地に伏せたまま苦しみ戦意喪失。
『!?』
一連の流れを目の当たりにしたエリザや野次馬達……もとい観衆は、無言で驚き唖然とする。
「……」
(イズナまでこんなにあっさりと……一体、どうやってこんなチカラを……?)
セリーヌは何かを考え込んでいるようだが、それが何かは分からない。
そして、イズナが唱えたあの魔法も……
「ふぅ……思わず油断したけど、なんとかなったな……でも、どうやって纏雷を……?」
纏雷を目にした瞬間にイメージが流れ込み、その感覚はニカナの魔法を閃く時と同一の感覚であった。
「……まぁ、いいか……あとで聞いてみれば……」
そう呟いたあとに再びエリザの方を見ると、ポカンと口を開いて唖然としたままの姿が。
(これで、少しでも俺を認めてくれたら……)
ほんの淡い期待を持つと、突然地面から黒色の鎖が出現しては身体中に巻きついてきた。
「な、なんだ!? これは……影? ということは、まさか……」
急な事態に驚き動揺していると、観衆の中から声が聞こえてくる。
「まぁ、こんなもんだろ?」
その言葉と共に、一人の男が姿を現した……
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