「なっ、なんでそのことを知っているんだ!? いっ、一体どこでその情報を……!?」
突然俺からの反撃を受けた門兵Aは、動揺を見せたうえに慌て出したので、透かさず追い討ちを掛ける。
「そんなことよりも、誰に金を貰ってこんな下らないことを依頼されたんですか!?」
「うがっ!? そ、そそ、それは……」
的確な追い討ちを受けた門兵Aは、更に動揺して目も泳ぎ出す始末。
それを好機と捉えて更に問い詰める……はずがその時、ある人物が姿を現した。
そのある人物を見た直後、全身が凍るように冷たくなり、同時に両足が震え出す。
「あら? 奇遇ね、こんな所で会うなんて。ふふっ、残念だけど門限はとうに過ぎてるわ。また明日いらっしゃい」
そのある人物とはギルド職員であるエリザのことであり、エリザの高慢で高飛車な態度を目にした瞬間、黒幕だと悟り、そして疑問を抱く。
きっとエリザが根回しをしたに違いない、でも一体何故? その疑問も含めて抗議しようとしたが恐怖から声が出ず、終いにはエリザからこの一言を浴びる。
「あなたのような無能は、私達を楽しませるだけに生きていれば良いのよ?」
思いもよらぬ言葉に動揺させられて震えが強まるが、それでもなけなしの勇気を振り絞り口を開く。
「な、何故……何故、そんな酷い言葉を……?」
「あら? だって事実でしょ? 貴方が無能で落ちこぼれのFランク冒険者だということ」
「い、いえ……はい……」
「ふんっ、漸く理解したの? 本当に物分かりが悪いんだから。これだから無能は困るわ」
「……す、すみません……」
「はぁ……本当に無能ね」
「……」
「無能」その言葉を連呼されて、怒りよりも惨めさを覚え、そして、心が折れた。
それは、今までの人生で充分身に染みていたから……
俺の状態を把握したのか、エリザと門兵Aは高笑いをしながら闇に消え、門兵BとCは無言で持ち場へ戻り、一方の俺は俯き無言のまま西門から立ち去った。
「ニカナでも心の傷は癒せない」その証明が成された瞬間である。
結局、心が折れてしまった俺は野宿をすることになり、街の外壁に身を寄せた。
そのあとは外壁にもたれ掛かりながら座り、特にすることもないのでそのまま寝ることにした……が、寝る前に様々なことを悩み出す。
(何故、俺にあんな姑息な意地悪を? 何故、俺にあんな凍える視線を? 何故、俺にあんな酷い言葉を? 何故……何故、俺ばかりがこんな目に……)
悩みに悩んだ挙句、声を殺しながら泣いた。
俺の惨めな姿を目の当たりにしたモモは、心配そうに俺の懐まで来て抱きついてくる。
その健気な行動に、自然とモモをギュッと抱き締めていた。
「……モモ、そろそろ寝ようか……」
「……」
モモを抱き締めてからどれほどの刻が経ったのだろうか。
既にモモは寝てしまったようで、俺からの言葉に返答はなく、辺りで鳴く虫達の音だけが耳に響いていた。
そして寝る直前、アイテムポーチから毛布を取り出しながら呟く。
「モモ……ごめんな……」
そう呟くとモモを抱いたまま、寒空の下で夜を明かすのであった……
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