「内緒……ですか……分かり……ました……」
解呪の件を秘密にしていることよりもセイナがする内緒の仕草に見惚れてしまい、他のことに意識が向かなくなってしまう。
「キュロスさん、どうされました? 心ここに在らずとなっておりますよ?」
知ってか知らでか見惚れている俺にセイナは声を掛けてきて、ハッと気づいた時にはいつの間にか通常の凛とした姿勢に戻っており、その見事な変わり身に感心しつつも今後の行動予定を尋ねることに。
「そ、そういえば、セイナさんはこれからどうするんですか? もし他の支援に向かうなら、代わりに俺が行きますよ?」
「ほっ、本当ですか!? 実は私がこの西門を引き継ぎ、キュロスさんには北門へ向かっていただくよう兄から指示の変更がございまして……」
「えっ!? 北門に!? 確か北門にはムツコさん以外にもBランカーが数人いたハズ……ま、まさか、北門で何かあったんですか!?」
「……えぇ、まだ堪えてはいるようですが、徐々に押されているとの報告がございまして……そこで兄が早急にキュロスさんを向かわせるようにと指示の変更を……すみません、私は止めたのですが聞く耳を持ってくれなくて……」
申し訳無さそうに話すセイナの表情は、今までに見たことのないほどに悲しげであり、そんな表情を見せるセイナに返せる言葉は一つしかないと考えて、迷わずその言葉を伝えた。
「大丈夫です! 絶対に俺がなんとかしますから! なので、セイナさんはここで安心して待っててください!」
俺の言葉を聞いたセイナの心情は、俺を心配する気持ちと北門が救われるという安堵の気持ちで複雑化しているように思える。
ただ、それでも俺を信頼して「お願いします……」と頭を下げながら願うのだから、何をしてでもそれを叶えてあげたい。
そしてその北門を救うという願いを叶えるべく、これから急いで北門へ向かうことにする。
「皆さん、ココはお願いします! それじゃあ、行ってきますね!」
その場にいるセイナ・スレッグ・門兵DとEの計4人に出立の旨を伝え、北門へ向けて駆け出した。
「キュロスさん、どうかご無事で……」
駆け出してすぐにセイナの声が聞こえたような気もするが、振り返ることなく北門へ向かう。
街中を駆け抜けていると家の中から窓越しに子どもたちが瞳を輝かせながら手を振っており、その子どもたちに左手を挙げて応じているうちにまるで英雄になれた気がして、改めてこの街や人々を守らねばと固く決意する。
「おっ、マリーちゃんだ!」
マリーも窓越しに笑顔で手を振ってくるので左手を挙げて応じると、声は聞き取れないがマリーは何かの言葉を発しては照れていた。
照れるほどの言葉を発したのだろうか? と気になったので考えてみようかと。
「確か『うい』って唇が動いてたよな……一体、なんて言ったんだ……? うーん、分からん……」
駆け抜けながらマリーの発した言葉が何かをずっと考えていたが、結局は分からぬまま北門が見えてきた。
「良かった、まだ堪えてるようだな……って、誰かが吹っ飛んできてる!?」
北門の外から何者かが凄い勢いでこちらへ吹き飛ばされているため、驚きながらもその何者かを受け止めようと身構えるのであった……
読み終わったら、ポイントを付けましょう!