「……フフッ……」
セリーヌは尚も怪し気な微笑みを見せる。
俺も含め、その場にいる全員がセリーヌの言葉を待つことに。
すると、先程までの笑顔から一変、真顔となったセリーヌが口を開く。
「……そうです。私が受けた依頼です」
『!?』
その発言によりギルド内は皆騒然。
エリザに至っては自慢げに「ほら見たことか!」と言いたげな表情を見せる。
「せ、セリーヌ? 何故、そんな嘘を……?」
「キュロス、ごめんね?」
謝るセリーヌの表情は、何か吹っ切れたかのように明るかった。
「ほらね? これであなたが嘘を付いていたことが証明されたわよ? それで? 何か弁解はあるのかしら?」
「い、いや、はい……これは、確かに俺が……」
「はぁ、本当に見苦しいわね? これだから無能は……はぁ」
『……本当だよな……無能のくせに……見苦しいわよね……』
エリザの言葉を皮切りに、その場にいる冒険者達も好き勝手に喋り出す。
そうしたなか、その場で喋らないのはセリーヌただ1人。
(ど、どうすれば良いんだ? この状況を打開する方法は……?)
戦闘時とは違い、打開策は全く閃かず。
しかし、それでも俺は諦めずに方法を考え続けていると、傍観するセリーヌからまさかの言葉が。
「……嘘です。私はその様な依頼は受けていません」
『!?』
セリーヌの発言に皆唖然とする。勿論、俺やエリザもである。
その唖然とする最中、尚もセリーヌは発言を続けた。
「そもそも極秘任務の依頼なんですよね? それなら、私が知るわけがないじゃないですか?」
そのもっともな発言に、エリザは狼狽えながらもセリーヌへ問う。
「な、何を言ってるの……? 何故、そんな冗談を……?」
エリザからの問いに対して、セリーヌは謎の返答を。
「皆の唖然とする姿が見たくて? なんてね。まぁ、冗談抜きにキュロスを試したかったのよ」
「この無能を……試す……?」
「そう、あなた達が無能と見下し蔑むキュロスが、本当は誰よりも凄い人だってことを証明するためにね?」
『??』
エリザだけではなく、俺や他の冒険者達も誰一人として理解できずにいた。
「ふふっ、それでは試してみませんか? 今のキュロスの実力を」
「!? えぇ、いいわよ? この無能の実力とやらを見せてもらおうじゃない?」
セリーヌと張り合うエリザの発言により、これから俺は己の実力を示すこととなった。
(これは……チャンスなのか? でも、セリーヌは一体何故……?)
セリーヌの行動を全く理解できないまま、どのように実力を示すかを考え始める……とその時、1人の冒険者が名乗りを上げた。
「この俺様が、無能で落ちこぼれなお前を試してやるぜ!」
その男は「トサック」というCランク冒険者らしく、以前から俺の存在を疎ましく感じていたようだ。
因みに渾名は「トサカ」とのこと。
「それじゃあ外で試してやる! ついてきな!」
「……は、はい……」
(……ま、マズい……緊張してきた……)
緊張しながらも無言で頷き、トサックの後を付いていく。
そして緊張を抑えるように、ニカナの入る御守袋をギュッと握り締めるのであった……
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