「よかった、はぁ、どうにか、はぁ、間に合った……」
「キキッキッ!」
俺とモモは漸く街の西門まで到着。
駆け通しでどうにか門限前に着けたようだが、この場に到着するまでの道程では色々とあり、それは何もしていないのに魔物から追われたり、夜のために道を間違えて遠回りしたりと慌しかったのだ。
「そうだ、はぁ、時間、はぁ、見なきゃ……よし、はぁ、これなら……」
呼吸を乱しつつ腕魔時計を見ると、門限までに10分もあることを確認できたので、乱れた呼吸を整えるために焦らずゆっくりと呼吸を繰り返す。
「……はぁ、はぁ、はぁ……すぅ……ふぅ……」
ゆっくりと呼吸を整えたあと、西門を通過するために歩を進めていく。
だが門下に近づくと謎の違和感を感じ、その違和感は何かと考えながら先に進む。すると……
「……ん? あれ?」
門下にいる門兵が1人、2人、3人……おかしい、確か門兵は2人しかいないハズ。
(もしかして、西門だけは特別なのか……?)
不思議に思いながらも西門を通過しようとしたその時、1人の門兵が声を掛けてきた。
「おい! お前、キュロスだよな?」
「は、はい……そうですが……?」
(何故、俺の名前を知って……?)
門兵Aは何故か俺のことを知っており、加えて明らかに敵視を向けているようにも見える。
そんなことを思っていると、門兵Aが俺の目の前まで近づいてきてこの一言。
「ふんっ、残念だったな! たった今門限は過ぎたぞ? また明日出直してこい!」
門兵Aの言葉に一瞬唖然としたが、すぐ我に返り言葉を返す。
「ど、どういうことですか? 門限まではあと5分もありますよ?」
俺の言葉に門兵Aは溜め息を吐き「とにかく駄目だ!」と言って聞かず、幾ら抗議しても同じ言葉を繰り返すだけ。
(む、むぅ……こうなったら……)
これでは埒が明かないと判断したので、他の門兵の2人に話を振った。
「ーーお二人はどう思いますか?」
『……』
しかし門兵の2人は顔を背けて完全に無視し、門兵Aはそれを見てニヤニヤと笑う。
それはまるで冒険者ギルドの職員達のように……
「……!!」
その瞬間、ハッと気づく。
コイツは冒険者ギルドからの差し金ではないかと。
その考えに至ると、少しでも情報を得るために再び門兵Aへの抗議を開始。
「……者ギル……ら金……頼を……てい……」
予想は見事に的中。
コイツこと門兵Aは冒険者ギルドから金を貰って依頼を受けていたのだ。
ただ、どのようにしてその事実を知ったのかというと、門兵Aへの抗議中に地獄耳のような聴力を駆使して門兵BとCの会話を盗み聞きしたのである。
「冒険者ギルドの職員から金品を貰う代わりに依頼を引き受けていた」
以上が門兵BとCから盗み聞きした会話内容であり、つまり門兵Aはギルド職員の誰かから賄賂を貰う代わりに俺を街の中へ入れぬよう依頼を引き受けたということになる。
まぁ、盗み聞きした言葉の通りなのだが。
「上手くいってよかった……あとは……」
真相が明らかとなり、これから俺の反撃が始まることを、門兵Aはまだ知らないのであった……
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