「こ、これは……!?」
ムツコの元へ駆けつけた瞬間に目の当たりにした光景は、夥しい数の魔物の屍とそれを上回る数の魔物達、そしてその中心には満身創痍のうえ呪縛によって動けずにいる10人の冒険者達の姿。
「マズい! 早く助けないと! 来い、炎馬!」
左手を左方に向けて魔法を唱えた直後、左側から火炎で象られた駿馬が出現し、全身を轟轟と燃え滾らせながら駆け出すと、重力を感じさせない軽快な動きで魔物達へ突撃していく。
魔物達は突如現れた炎馬に次々と燃やされていき、炎が炎を飲み込んで大炎と化していた。
「うわっ、熱っ!? これは助けに行くのも命懸けだ……」
炎は超高温となり、迂闊に触れると俺でもタダでは済まなそうだ。
だが逆に言えば、魔物達も炎を避けなければならず、10人の冒険者達に近づくことが困難になったとも言える。
「なななっ、なんですこれは!? 物凄い炎です! 一体全体、どうなってるですか!?」
(……ん? この声はムツコさんか! よかった、無事でいてくれて……)
この声はムツコに間違いない。喋り方が独特だからすぐに分かる。
それに居場所も概ね把握したので、あとはそこまでの道を探るだけだ。
「炎馬が消える前にムツコさんの元まで着きたいところだな……さて、どうするか……」
辺りを見渡しながら炎の先へ行く術を考え始めた。
燃え盛る炎によって辺り一面は赤一色の状態。
その炎の内側にはムツコ達が、そして外側には魔物の群れがと分かれているのが見て取れる。
「これって、先に魔物達を倒した方がいいのか? 無理に炎を越えるよりその方が楽な気がする……よしっ、そうしよう!」
そう思い立ったあとの行動は早く、炎から距離を取り、大きく迂回しながら魔物達の方へ向かい出す。
その方が次に来るであろう呪縛の咆哮も防ぐことができる。それを含めての行動だ。
「……あれ? そういえば、さっきムツコさんって普通に喋ってたよな? じゃあ、その前に見たあの姿は一体……?」
確かムツコは、満身創痍のうえに呪縛の咆哮を受けて動けずにいたハズ。
首を傾げながらその時に見た光景を思い出していると、魔物の群の先端を目で捉えた。
もう少し近づけば魔物達をまとめて倒せる地点まで辿り着ける。即座にそう直感した。
「ムツコさんの件は後回しにして、今は魔物達を倒さなきゃ! 来い、雷豹!
駆けながら左手を前に突き出すと、掌の先に雷電が発生し、その雷電は徐々に猛豹の姿へと象られていく。
そして目的地まで到達した瞬間に雷電の発生量を一気に高め、完全に雷豹を出現させると、まるで生きているかのように右後ろ脚で頭を掻き始めた。
「なんて暢気な……まぁ、いいか……」
その後、俺から漂う気の変化を感じ取ったのか、雷豹は突如立ち上がり、魔物達の方へ向けて臨戦態勢を取り始める。
それを見て「行け!」と俺が命じた直後、迅雷の如く駆け出し、魔物達に猛襲を掛けた。
「おぉ、魔物が次々に倒れていく……ん? 炎馬の気配が消えた? そうか、時間切れか……」
『グルルルル……ガァァァァァーッ!!』
「……!! 来たか!」
炎馬は消え、雷豹が暴れ回るなか、魔物達は俺の存在に気づき、怒声を上げながら俺へ向けて一斉に押し寄せてくるのであった……
読み終わったら、ポイントを付けましょう!