「……チリッ、チリチリッ、チリッ……」
花や草の焼ける音だけが響く……
大爆発の影響によって辺りは一時炎上するが、徐々に鎮火が進み落ち着きを取り戻してゆく。
そして、合わせるように黒煙や土埃も少しずつ収まり出し、次第に視界が開けてくる。
「やっと収まってきたか……」
その言葉が言えるということは、何やら俺は無事のようだ。
しかも身体には傷一つない様子で、いつの間にか五感や身体の感覚も戻っていた。
黒煙や土埃がほぼ収まると、漸く辺りを見渡せるようになる。
爆裂甲虫は俺を道連れにと考えて自爆したようで、既に原型を留めてはいない。
僅かに残った身体の一部を黒箱へ収納して、俺はその場から立ち去った。
「それにしても、どうして俺は無傷なんだ?」
疑問ではあるが察しはつく。
それはニカナによるものであり、あの大爆発の瞬間に男性の声が聞こえた気がした。
流石のニカナでも勝手に守護はしないと踏んだのだが、どうやら違ったようで寧ろ僥倖である。
「ニカナの張ってくれた、この結界のおかげで助かったのか……ありがとう、ニカナ……」
俺の周囲には青色透明の結界が張られている。
風魔法では間に合わないと思っていたのだが、どうやらニカナが結界を張ってくれていた模様。
因みに結界の名称は「幽世」と命名。
しかし、流石に今回だけは焦った。
もしニカナが結界を張らずにいたら、きっとタダでは済まなかっただろう。
それほどまでに激しい爆発であったのだ。
「……うしっ!」
気を取り直したあと、毒沼地帯へ向けて再び歩き出す。
「……!! あっ、そうだ! 今のうちに確認しておこう!」
歩きながらも今のうちに所持品の確認をと閃いたため、早速だが確認を始めることに。
先ずはアイテムポーチだ。
空間拡張の魔法が付与されたポーチで、見た目よりも多くの収納が可能である。
但し、安物なのであまり多くの物は入れられないが。
次はこの腕魔時計だ。
僅かな魔力で動く時計で生活必需品である。
これも安物だが、意外に丈夫で長持ちなのが嬉しい誤算。
続いては鋼鉄製ナイフだ。
通常の鉄製ナイフよりも丈夫で壊れにくい。
無けなしのお金で購入した逸品である。
最後はやはり、この『ニカナ』だ。
虹色に輝く謎の宝石? でコレを身に付けているだけで自信が湧いてきたり、あり得ないほどの力とチカラを発揮することができる不思議な石。
因みに、そのニカナは御守袋の中へ大切に仕舞ってあり、他にも茶色のクマさん毛布とお金を少しだけ所持してはいるが、それらはアイテムポーチの中に入れてあるのだ。
以上が俺の所持品となるが、少なすぎて涙が出そう……
「こ、ココが……」
暫く歩いたが爆裂甲虫以降、魔物の気配はほぼ感じない。
理由は恐らく、ココの近くにはいたくないからだろう。
そう、漸く辿り着いたのだ。この、驚ろ驚ろしい毒沼地帯へ……
「この雰囲気は……なんとも言えない嫌な感じがする……」
流石にこの驚ろ驚ろしい雰囲気の中で平静ではいられず、背中からは冷や汗が流れた。
嫌な感じがするのもきっとそれが原因だろう。
しかし、それでも俺の意志は揺るぐことはない。
「ふぅ……よし、行くか……」
緊張感を漂わせながらも、沼地の中へと歩を進めるのであった……
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