なんで誰も使わないの!? 史上最強のアイテム『神の結石』を使って落ちこぼれ冒険者から脱却します!!

るっち
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第114話 天より堕ちる黒い光

公開日時: 2022年10月16日(日) 21:39
文字数:1,348


「ーー邪魔だ! どけ!」


 茫然と立ち尽くす最中、魔物と競り合っている男戦士に後ろから突き飛ばされ、四つん這いに倒れる俺。

 街を、みんなを守らなければならない時に、まさか俺自身が使いものにならないなんて……

 それでも戦わねばと立ち上がろうとするも、身体が全く言うことを聞かず、まるで心と身体が別物のように感じられた。


「……あの二人、信頼し合ってたな……」


 蘇る光景に胸を痛めていると、目の前に来た何者かが口を開く。


「はぁ、やっと見つけたわ……ほらっ、手を貸すから早く立ちなさい」


 差し出された右手を取り、爪先から顔まで覗いていくと、そこには全身血塗れ姿のイズナが。どうやらイズナやその仲間達でも倒せない魔物がいるらしく、誰なら倒せるかと考えた際、真っ先に俺の顔が浮かんだので探し回っていたとのこと。因みに、全身血塗れなのは全て魔物の返り血だと自慢気に語っていた。


「ーーって、そんなことより早く行くわよ! 倒せるのはアナタしかいないんだから!」


 手を握ったまま引っ張られ、そのまま戦場を駆け抜ける俺とイズナ。互いに空いた方の手で魔物達を次々に倒しながら進んでいく。そんな時、不意に見えたイズナの横顔はなんとも嬉しそうな表情をしていた。


「あの、何か良いことでもありました?」


「は、はぁぁぁっ!? なっ、何もないし! ……そ、それよりもっと握りなさいよ! 手が離れちゃうじゃない!」


 イズナの握る手に一層力が入る。何やら俺が余計なことを言ってしまったらしいので、それからは何も言わず、先へ急ぐことだけを考えるようにした……ーー




「ーーよかったぁ……みんな無事みたいね」


 戦場の中心から少し東に行ったところにイズナの言う「みんな」が戦っており、対する魔物は少数のヘルハウンドと1匹のアヌビシオ……と、あれは……ハイドロス!?

 魔物図鑑でしか見たことのない魔物をまた拝めるなんて……しかも、俺と同じ「○○ロス」で終わる名だから不思議と親近感を覚える。だが『ハイドロス』は犬系魔獣で脅威ランクはA……つまり、アヌビシオと同等の強敵だ。そのうえ、厄介なことに奴も漆黒を纏っているようなので、ここは慎重にいく方が無難かもしれなーー


「ーーさぁ、先手必勝よ! やっちゃいなさい!」


「えぇっ!? お、思ってたのと違ーー」


「ーー何をボヤいてるの! ほらっ、さっさと魔法を撃つ!」


「はっ、はいぃぃぃっ!! りょ、了解しましたっ!!」


 イズナの勢いに押され、魔物達に気づかれる前に魔法で一掃する羽目に。はぁ、仕方ない……

 先ずは左拳を突き出し、親指を立てたまま片目で魔物との距離を測る。

 次に適正範囲内に収まるよう魔力調整をしながら脳内で真円を描き、魔物を囲むイメージを保つ。

 最後は親指を下に向け、勢いよく落とすと同時に魔法を撃つ。


「天より堕ちろ! 天墜てんつい!」


 遥か上空から円柱状の黒い光が魔物達へと降り注ぎ、ソレを浴び続けた魔物は余りの重さに耐え切れず、身動きが取れないまま圧死による全滅。その場にあるのは新円に陥没した地面に飛散した血のみ……かと思われたが、飛散した血から漂う桔梗色の靄が集まり、ある1匹の魔物が再生された。

 その魔物とはハイドロスのことで、何故奴が再生されたのかを俺は知っている。


「あれはーー」


「ーー再魂よね!?」


 ……と、イズナに先んじられて肩を落とす……


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