「せ、セリーヌ……さん?」
「何かしら? キュロスくん?」
「い、いや……何も……」
あぁ、これは絶対に怒ってるやつだ。
恋人の頃にはこんなことは無かったのだが、何故かニカナを手にしてから急に人との関わり合いが増えた気がする。
もしや、ニカナにはそういったチカラでも備わっているのか?
しかし、今はこの現状をどうにかせねば。
でも一体、どうやって……?
「どうしたです? 早くスイーツを食べに行こうです!」
ノリノリのムツコ。
約束をしてしまったとは言え、このまま行ってしまうわけにはいかないだろう。
額からは冷や汗がタラリと流れ、顔が強張り引きつり出す。
すると、セリーヌから思わぬ一言が。
「わ、私も行ってあげてもいいけどぉ?」
「えっ!? いいのか!?」
まさかセリーヌの方から歩み寄るとは思わなかったのだ。
これはまさに、嬉しい誤算である。
「じゃ、じゃあ俺も! 俺も行くぜ!」
ミカゲも便乗して行く気の様子。
「……分かった! それじゃあ、みんなで行こう!」
こうして、俺・セリーヌ・ミカゲ・ムツコの計4人でスイーツ店へ向かうことになり、周囲に集まる冒険者達の間を縫って歩き出す。
(報酬を貰って金には困らないし、今日はみんなに奢るとするか……)
そんな呑気なことを考えていたその時、東門の方から切迫感を感じさせる鐘の音が、何度も何度も鳴り出した。
「ーーカンッ! カンッ! カンッ! カンッ! カンッ! ーー」
「この音は一体……!?」
突然の音に驚きよりも不安と緊張が込み上げる。
「メナス・ベル……まさか、もう……!?」
「嘘だろ!? もうなんかよ!?」
「これは……急がないとです!」
(メナス・ベル? もう? 一体、どういうことだ……?)
何やら俺の知らないところで何かが動き出していたようで、セリーヌにそれとなく話を聞いてみることに。
「そっか……この件はDランク以上の人にしか情報が入らないんだったわね……いいわ、私が説明してあげる。これはーー」
セリーヌの話では、約1ヵ月前から南東にある「深緑の森」で異変の兆候が見られたらしく、それ以降は毎日調査を行なっていたそうだ。
その異変の兆候とは、魔物が徐々に鳴りを潜め出した影響による、討伐依頼の達成率減少のことらしい。
しかし、本格的に調査を始めたのは約2週間前のようで、結局は原因が掴めぬまま今回の事態に陥った模様。
「こんなに鐘の音が続くなんて……もしかすると……」
セリーヌが意味深な台詞を途中まで言った直後、職員専用通路の方からあの大声が聞こえてきた。
「お前らぁ! この鐘の音は、我らが街に脅威が差し迫っていることを意味する! 従って、お前らにはその脅威を排除して欲しい! その為にはーー」
この大声の主は勿論、シャカである。
どうやら東門と南門の守備を厚くし、北門と西門は少数で守り切るらしい。
そしてシャカにより、これから人員配置を言い渡されるところだ。
すると、急に不安と緊張が増してきて弱気になってしまう。
(うぅ、どこに配置されるのかな……)
かつてないほどの不安と緊張を抱えつつ、シャカからの指示を待つのであった……
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