「お前が……何故……?」
突然仕掛けてきた男の事はよく知っている。
だからこそ何故、俺にこんな事をするのか理由が分からなかった。
「はぁ? 何故だと? それは、お前の事が大嫌いだからだよ!」
そう言い放ったこの男は「ミカゲ」というAランク冒険者であり、俺にとっては数少ない友人の一人でもあるのだ。
ランク差はあれども、俺・セリーヌ・ミカゲの他にあともう一人いるが、その計4人で一緒に依頼を熟したりもする間柄なのだが……
「俺の事が嫌いって……?」
「違う! 大嫌いだ!」
「あ、あぁ、ごめん……」
「そういうところだよ! お前の事が大嫌いな理由は! 他にもーー」
堰を切ったかの様にミカゲは喋り出す。
それは俺を嫌う理由であり、とても耳の痛い内容であり、要は悪い意味での告白であった。
その俺を嫌う理由とは先ず、気弱ですぐに謝り弱音を吐き動揺するところ。
他には、無能とまでは思わないが落ちこぼれてばかりでよく足を引っ張るところ。
更には、嘲笑われ貶されても何一つ反論もせずに只々落ち込むところ。終いには……
「あのセリーヌに今でもずっと好かれ続けている事が1番嫌いなところなんだよ!」
『……えっ!? え、えぇっ!?』
ミカゲからの予想だにしない発言に、俺とセリーヌは同時に驚き動揺する。
「なっ、なんでソレを言っちゃうの!?」
何事にも動揺しないあのセリーヌをこんなにも動揺させるなど、魔宝くじを当てるよりも難しい事なハズだが。
しかし、今の俺はそれどころではない。
何故なら、第三者によりセリーヌからの好意を言い渡された訳なのだから……
「セリーヌ……」
てっきり見捨てられたものだと思い込んでいた為、嬉しさが一気に込み上げ言葉にならず、瞳で語り掛けるしかなかった。
「キュロス……」
セリーヌも同じ気持ちなのか言葉ではなく、瞳で俺に語り掛けてくる。
互いに通じ合う俺とセリーヌは周りの目も気にせず、見つめ合い頬を赤く染め、そして照れ笑う。
すると、この甘い雰囲気を阻むかの様にミカゲが割って入る。
「だ、か、ら、それがダメなんだって! 俺だってセリーヌの事が本気で好きなんだからよ!」
『……はい?』
俺やセリーヌだけではなく、その場にいる全員が目を丸くしながら呆気に取られていた。
まさか、こんな場所でそんな告白をするとは誰も想像すらしないだろう。
それに今も尚、何故か俺は影の鎖に囚われたままなのだから……?
「そ、それより! これからお前を倒すから覚悟しろ!」
(それは、やられ役が喋る台詞なのでは?)
そう思ったが口には出さず、真剣な眼差しでミカゲを見据える。
何故ならミカゲの実力は本物であり、そして今の俺でも勝てるかは分からない相手だからだ。
それでも俺は負けられない、少なくともセリーヌが見ている前では負けたくない!
その感情を剥き出しにしながら、ミカゲからの勝負を受けて立つのであった……
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