「先ずはこっちをどうにかしなきゃな……もしかして、説得できるか……? よしっ、一応やってみよう!」
元々は温厚で人に懐いていたと仮定すれば説得が可能やも知れないと推察し、警戒されぬようゆっくりと近づき一応は説得を試みた。
「なぁ、なんでこんな人に仇なすようなことをするんだ? 本当はこんなことはしたくないんじゃないのか?」
「……」
ジープドッグからの反応は無い。
なんとなくだが予想は付いており、それはヘルハウンド達と同様に操り人形かの如く自己の無さと虚ろな気配を漂わせているからであって、言うなれば心が空っぽの状態なのだ。
そのことを考えるとやはり憐れに思ってしまい、どうしても非情にはなれずに躊躇して判断を鈍らせる。
するとその討伐に躊躇した隙を狙ったのか、突然ジープドッグは駆け出して俺に突撃を仕掛けてきた。
「はぁ、やっぱりやらなきゃダメなのか……くそっ、どうせやるなら正面から受けて立ってやる!」
隙を狙ったとはいえ、迫力はあれど移動速度はそこまで速くはないので身構えるには充分であり、ジープドッグによる突撃を正面から受け止めるために両手を前方へ向けながら左足を後方へ下げるようにして身構えた。
「さぁ来い、受け止めてやる! ぐっ、うぉぉぉーっ!! やっぱり凄い力だ……でも!」
後方へ12mは足を引きずられただろうか。
だがそれでも受け止めに成功して、一方の突撃に失敗したジープドッグは明らかに疲弊して呼吸が荒くなっており、その疲弊した隙を突いて「すまん!」と声を上げながら奴の眉間に左ストレートを叩き込む。
「ギャウンッ!?」
悲痛な鳴き声を上げながらジープドッグは門外へと吹き飛んでいき、地面を6mほど跳ね転がってからアオテンの状態で倒れた。
ジープドッグの耐久力を加味したうえでスプラッターと化さぬよう3割ほどの力に抑えたおかげか、打撃箇所を破裂させずに倒せたようで「あぁ、よかったぁ……」とホッとしながら門外へ出ることに。
「すっ、凄い、まるで戦争だ……いや、本当に戦争なんだよな、これって……」
門外へ出ると、本来なら辺り一面に草原が広がっているはずが今は荒地と化しており、周辺では怒号や悲鳴が絶えず響いている。
更には血の匂いや今までに嗅いだことのない何かが焼けた匂いまで漂う始末。
だがそんな混沌とした状況でも不思議と狼狽えたりはせず、冷静に魔力探知を行ないながら支援の優先箇所を探っていく。
「……えっと、魔物の数は1500ってところか……冒険者側は……250くらいかな……ん? 一際強い魔力が1つだけある……これは、魔物だ……行くか? ……いや、先ずはあっちから反時計回りで支援していこう!」
互いに持つ戦力の差は明白なうえに、アヌビシオ級の魔力を左方にて1箇所発見するが、効率を考えると右方から左方へ回るように支援すべきだと判断。
現に右方にある若い冒険者達のみで構成された布陣は崩されつつあり、その隙を縫って3匹のグラスウルフ達が布陣を突破して北門へ向かい出しているのだ。
「まぁ、流石に若い人達だけじゃ無理があるよな……さて、行くか!」
そう呟いたあと、若者達を支援するためにグラスウルフ討伐へと駆け出すのであった……
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