「わぁ、綺麗……」
思わず声を漏らすフラム。
アウロの両足を清潔にすることで感染症予防をしただけなのだが、その時の輝きが煌びやかだったのだろう。
今だけはフラムが年頃の女性に思えて微笑ましかった。
「よし、次は……メガヒール!」
次は早速両足の再生にと治癒魔法を唱えた……が欠損部位の再生には至らず、傷口を目立たなくする程度で終わってしまう。
『……はぁ、ダメか……やっぱり無理なんだよ……残念だけど、もう……』
上級治癒魔法であったためにその場にいる全員が期待していたのだが、無理なことが分かった途端に皆ため息と諦めの言葉を吐く。
だがそんな暗い状況のなかでも、アウロとフラムの表情は暗くならずにまだ俺の何かに期待しているようで、再び真剣な表情で俺を見てくる。
その表情はまるで「これからだよな?」そう問い掛けられているように感じられた。
「あぁ、これからが本番だ……頼むぞ、ニカナ!」
今までに治癒魔法の閃きだけは何故か無いために苦しい想いもしたが、今回だけは絶対に閃かなければならず、分が悪い賭けではあるがそれでもニカナによる閃きを信じて、ニカナの入った御守袋を右手で握り締めながら念を込め、そして瞳を閉じる……
「……」
だが、何も閃かず。
それでも瞳は開けない。
「……」
けど、何も閃かず。
されども瞳は開けない。
「……」
まだ、何も閃かず。
だからこそ瞳は開けない。
「……?」
何か、ぼんやりとしたイメージが……?
もう少しなので瞳は開けない。
「……!?」
これは、しっかりとしたイメージが……!?
あとほんの少しなので瞳は開けない。
「……!! 来た!」
その瞬間、カッと目を見開いて即座に魔法を唱えた。
「體を治したまえ! 榮螢!」
虹色に輝く光の粒子がアウロの全身を包み込み、少し待つと光の粒子が移動して欠損前の両足を象り始める。
すると、傷口が開き出すと同時に欠損した部位が傷口のところから徐々に再生していき、見る見るうちに血の通った傷一つ無い両足が出来上がっていく。
それは欠損したのが嘘かのように自然な姿であり、奇跡としか言い表せない光景であった。
「き、奇跡だ……」
間近で見ているガイが驚きのあまりそう呟くと、光の粒子が両足の爪先まで到達しては次第に消えていき、完全に光が消えても優しい暖かさだけは余韻として残っていた。
「ふぅ、これで元通りかな? いやぁ、上手くいってくれて良かったよ……あれ? 身体が……!?」
安堵するなか、急に全身が脱力してしまい、両手と尻を地面に付けて一息吐くことに。
恐らくは魔力の大量消費と緊張が解けたことの2つが脱力の原因と思われるが、そのあとに両目の奥がチクチク痛み出したのが少し気に掛かる。
まぁ、それほど大した痛みではないのだが……
そんなことを考えていると、突然フラムが正面から抱きついてきた。
「うぉっ!? どどどっ、どうしたの!?」
「キュロスさん、ありがとうございます! 私、信じてました! キュロスさんならアイツの足を治してくれるって! それに見てください、アイツのあんなに嬉しそうな姿を!」
年の差はあれど成人女性との接触は緊張してしまうもので、全身が固まった状態でアウロの嬉しそうな姿を目にするのであった……
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