「おーい、なんでお前が泣くんだよ? つーか、しょうがないだろ? なっちまったもんはよぉ……俺は大丈夫だからもう泣きやめよ、な?」
アウロは全てを受け入れているようで、動揺もせずに自然な様子が窺える。
その様子を見て、なんて強い心を持っているのだろうかと感心し、俺も見習わなければと考えさせられた。
しかしこの時、ふと気づく。
アウロの右手が微かに震えていることに。
「だって、だって、その足じゃ杖を突いて歩くこともできないんだよ!? 一生車椅子なんだよ!? まだ成人したばっかりなのに、なんで……こんなのってないよ……うぅぅ……」
そう言って再びフラムは泣き出した。
それはそうだろう。
何故なら、アウロの両足は膝より下を失ってしまったのだから……
先程の話では、駆け出しとは思えないほどにアウロは獅子奮迅の活躍をしていたらしく、ただそれにより魔物達から脅威と見做されたため、集中的に狙われてしまったとのこと。
そしてその際に両足を抉れるまで噛まれ、血液が循環しなくなり、壊死の兆候が見られたためにやむを得なく切断に踏み切ったようだ。
「……!! そうだ、ヒールは!? 治癒魔法はやったんですか!? ねぇ! こうなる前になんとかならなかったの!?」
「!? あ、あぁ……実はーー」
ガイの話によると、実は切断前にヒールやハイヒールによる治療行為も行なわれたそうだが、魔物達に噛まれた傷が複雑すぎて治癒効果が殆ど機能せず、結局は壊死化を止められずに両足切断となってしまった模様。
「まぁ、そういうことだから誰が悪いってわけじゃねぇし、取り敢えず落ち着けよ……いててっ、意識したら傷が痛み出しちまった……」
「!? だっ、大丈夫!? そうだ、私が摩ってあげる!」
「い、いや、それはーー」
「いいからいいから! せめてこれくらいはさせてよ!」
遠慮するアウロの言葉を遮り、足を摩るためにフラムが勢い良く毛布を剥ぎ取ると、そこには包帯で覆われた膝下の無い両足が姿を現す。
『ゔっ!?』
その痛々しい姿を目の当たりにした俺達は思わず声を上げてしまうが、すぐにフラムは足を摩り始め、俺はある試みを決意する。
「なんか悪いな……こんなことさせちまって……」
「な、何よ急に、気持ち悪いわね……はぁ、このくらいいつでもやってあげるわよ……そう、この先ずっと、いつでもね……」
「フラム……それって……」
「……」
(は、恥ずかしいぃぃっ! これじゃあ私がプロポーズしたみたいじゃないの!)
そんな2人のやり取りを見て恥ずかしくなりながらも、試したいことがある旨を2人に伝えると、2人は顔を見合わせたあとに声を揃えてこう言った。
『是非! お願いします!』
何かの可能性を俺に見出したのか、2人の表情は真剣そのものであり、その真剣さに俺も感化されてしまい一言。
「あぁ! 任せとけ!」
以前も驕りから同じ言葉を発したが、今の言葉は決して驕りからではなく使命感からだと考えられる。
正直、絶対の自信があるわけではないが、それでもやらないという選択肢は無い。
それは、俺が決意した「人を守る」に繋がることなのだから。
「ふぅ……それじゃあ始めます! クリーン!」
欠損した両足の再生計画が今、開始されたのであった……
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